意思決定をする人・その支援をするすべての人に向けた参考書 人生を自分らしく生き抜くための意思決定
-ACP・QOL・QOD・人生デザインシミュレーション-
自分自身で描くQOL(生活の質)とは? QOD(死の質)とは?
内容紹介
自分自身が納得し、最期の時まで自分らしく後悔の少ない人生を生き抜くためにはどうすればよいのか? 遺していく大切な家族のために何ができるのか?
本書では、ACPとはどういうものか、さまざまな場における「看取り・看取られ」の現状などの解説はもちろん、実際に看取りの経験を持つ医師や看護師などの医療従事者、病院はもちろん施設や地域に勤務する人、看取り経験のある遺族、葬儀関係者、僧侶、ファイナンシャルプランナーなど、幅広い分野の専門家のインタビューを行い、生の声も掲載。また、人生を生き抜くために必要なプラス思考を身に付けるための人生デザインシミュレーション、遺していく家族や大切な人にできることなどについても解説した。
人生の最終段階を迎える患者やその家族と、どのように向き合い、関わっていけばよいのかを学べる1冊。
序文
今この本を手にとって下さっている皆さんには、深く感謝申し上げます。終活、人生の後始末、人生会議、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉が、近頃メディアでも取り上げられ、世間を飛び交っています。しかし、これらの情報を目や耳にしながらも、「さぁ、計画を立てよう!!」と、すぐに着手しようとしても、実際スムーズにできる方は多くはないと思います。実は看護師である私もその一人です。
それはなぜかというと、私たちが調査したところ、「イメージがつきにくい」、「どこから手を付けて良いのかわからない」、「何となく家族に言いづらい」、「その時になったら考えるわ」という声が多くありました。
私たちは、生きるという日々の生活において、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)に対する選択や計画を立てることは、今日何を着ようとかどこに行こうというような小さな選択から人生に関わるような大きなお買い物(家や土地など)、仕事上の選択など大きな選択まで繰り返しているのですが、死の質(クオリティ・オブ・デス)に対する自己選択をすることは少ないです。
果たしてこれは、自分自身の人生を、「充実した人生だった」と言い切れることに影響はないのでしょうか。どんな介護を受けたいか。どんな場所で誰に看取られて逝きたいか。自分の死後の後始末について……。
これらも、自分自身である程度は決め、準備する必要はないのでしょうか。2020年コロナウィルスの蔓延により、明日のことはどうなるかわからないと感じた方は、私だけではないと思います。著しく健康状態が悪いということでもなく、人生において明日はどうなるか、いつどうなるかわからないのです。
そこで、自分自身が納得し、自分らしく過ごし、後悔の少ない人生を生き抜くため、また遺されたご家族のご負担にならないためには、人生の延長線上にある「死」についても、自己で選択するもしくは自己の思いが尊重される、自己で決定できない時は他者に思いを託すことが必要ではないかと考えました。
本書では、様々な看取りの経験を持つ医療現場や施設、地域で働く医師や看護師等の医療従事者、病院勤務する者、施設勤務する者。地域で勤務する者。また、実際に看取りを経験しようとしている家族や看取りの経験のある遺族、葬儀関係者、僧侶、ファイナンシャルプランナー等々の幅広い分野の専門家による臨死期の状態や最期の時の様子、看取りの実際、遺族としての後始末等を、実際の経験者からの生の声をインタビューし、自分の人生を最期の瞬間まで、自ら考え、自ら納得し充実した人生を生き抜くことの一助になることを期待しています。
自分自身で描くQOL(生活の質)とQOD(死の質)とは……。
それは、どのように暮らし、どのように生き抜き、具体的にはどのような準備が必要で、どんな人やどこに相談すると良いのか、解決策を得られるのか、家族や周囲の人と納得する話し合いができ、考えるための参考書となるように本書の執筆を企画しました。
最後になりましたが、本書の出版にあたりご協力をいただいたすべての皆様に感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました。
2021年2月
森岡広美
目次
第1章 ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは
1.ACPとは
2.ACPの推進の現状
3.日々の生活の中に自然にACPがあることが理想的
第2章 ACPの現状
1.がん告知からのACP
2.認知症を患った父親が望むACPと母親の決断したACP
3.自己での決定が困難な精神障害をもつ人のACP(1)
4.自己での決定が困難な精神障害をもつ人のACP(2)
第3章 看取り・看取られの現状
1.救急・集中治療の場での看取りの実際
2.病院における看取りの実際
3.ホームホスピス®における看取りの実際
4.在宅における看取りの実際
第4章 「人生の最期」に携わる専門家の人々
1.僧侶の声
2.納棺師の声
3.弁護士の声
4.ファイナンシャルプランナーの声
5.社会福祉士の声
第5章 自分自身の人生のシミュレーション
1.人生をプラス思考でデザインする
2.シミュレーション教育の手法でプラス思考を強化
3.ファシリテータと共に~仁成貴子さんの人生デザインシミュレーション~
4.まとめ
第6章 人生の後始末(死後の後始末)
1.遺体の始末
2.居住の始末
3.社会的な始末
付録 人生を自分らしく生き生きと生きるための手引き
1.青年期から考えるACPとQODとは
2.動いて食べれば元気でいられる!
3.タクティールタッチ®を通した看取り期にある高齢者との交流
4.豊かに人生を締めくくる
5.人生デザインシミュレーションワークブック
執筆者一覧
■監修者
森岡広美 関西医療大学保健看護学部保健看護学科准教授
阿部幸恵 東京医科大学医学部看護学科教授
片山知美 京都医療センター臨床研究センター研究員
古谷昭雄 前中京学院大学看護学部看護学科教授
■執筆者一覧(五十音順)
阿部幸恵 東京医科大学医学部看護学科教授
石田亜季 宝塚大学看護学部看護学科助教
片山知美 京都医療センター臨床研究センター研究員
片山美穂 公立小松大学保健医療学部看護学科講師
川口めぐみ 福井大学医学部看護学科講師
川村みどり 石川県立看護大学看護学部講師
鷺野貴子 姫路大学看護学部看護学科助教
菅洋子 関東学院大学栄養学部管理栄養学科准教授
長尾匡子 京都橘大学看護学部看護学科講師
中川ひろみ 宝塚大学看護学部看護学科教授
中本明世 甲南女子大学看護リハビリテーション学部看護学科講師
古谷昭雄 前中京学院大学看護学部看護学科教授
前原なおみ 京都看護大学看護学部看護学科講師
宮脇弘樹 宝塚市立病院緩和ケア内科
森岡広美 関西医療大学保健看護学部保健看護学科准教授
山本裕子 宝塚大学看護学部看護学科教授