ガイドラインに基づく 胎児心エコーテキスト 精査・臨床編
-診断・病態把握・治療指針決定のために-
ガイドラインに基づいた胎児心エコーの撮り方が必ずわかる。豊富な写真とエコー動画で視覚的に理解できる! 待望の精査(レベルⅡ)編が完成!
内容紹介
先天性心疾患を出生前に診断することで、出生後スムーズに新生児の管理・治療に移行し、児の予後の改善が可能となる。そのため、出生前診断の意義は非常に高い。胎児心エコー検査はその出生前診断の一つで、2006年に「胎児心エコー検査ガイドライン」が日本胎児心臓病研究会から公示、2010年には保険収載され、2021年にはガイドラインの第2版が出版され、その重要性に対する認識が年々高まってきている。
本書は、2016年7月に出版した『ガイドラインに基づく 胎児心エコーテキスト スクリーニング編』の続編にあたり、胎児心精査(レベルⅡ)を取り扱っている。ガイドラインに即したスタンダードな内容で、学会が推奨する検査方法を読者が確実に理解・マスターできるよう、写真を豊富に掲載し、わかりやすく解説している。また、ガイドラインでは見られない、エコー動画を特設サイトで閲覧することができ、より理解を深めることができるよう工夫した。さらに、アメリカ心臓病学会より発行された診断治療指針を参考に、先天性心疾患の診断・治療における胎児心エコーの実際までを盛り込んでいる。
好評姉妹本
序文
この度、『ガイドラインに基づく 胎児心エコーテキスト 精査・臨床編』を出版させていただけることになりました。書名に「ガイドラインに基づく」と記載しておりますが、このガイドラインは2006年に作成された日本胎児心臓病学会の「胎児心エコー検査ガイドライン」を指します。本書はガイドラインをよりわかりやすく解説し、日常診療に役立つようにまとめました。胎児心エコー検査ガイドラインの特徴は胎児心エコー検査をスクリーニング(レベルI)と精査(レベルII)に分類し、各レベルで行うべき検査範囲を明示したことです。本書は2016年7月に出版した『ガイドラインに基づく 胎児心エコーテキスト スクリーニング編』の続編にあたります。従って、本書も早くから続編である精査編の出版が望まれておりました。しかし、日本胎児心臓病学会の「胎児心エコー検査ガイドライン」が2021年に第2版が出版されました。このため、精査編もガイドライン改訂版に基づくように多少の修正を要しました。
本書はガイドラインに基づく解説を基本としております。このため、基本断面(四腔断面、Three-vessel view,Three-vessel trachea view)で各心疾患がどのように観察できるのか、診断のポイントがどこになるのかを解説しています。また、追加することで理解が深まるポイントをワンポイントアドバイスとして追記し、理解を深めるよう工夫しました。
本書のコンセプトはガイドラインをよりわかりやすく解説することです。このため、第一に“見えるガイドライン”を目的にしました。私が大阪府立母子医療センターから使用している心臓イラストをふんだんに使用しております。解剖学的な解説よりまずは心臓のイラストを見ていただき、先天性心疾患に慣れ親しんでいただきたいと考えます。次に、本書は“動くガイドライン”を目的としています。このためたくさんの動画を編集いたしました。わかりやすいように基本断面に沿った鮮明な動画を注釈入りで編集しました。このイラストと動画を見ていただければガイドラインがより親しみやすくなると思います。
各セクションは胎児心エコーのエキスパートの先生に執筆していただきました。各エキスパートにはポイントを箇条書きにしていただいておりますので、長文を読み解く必要が無く、要点がすぐに吸収できるように構成してあります。このため、超音波検査技師の方から産科医、小児科医の方まで広く愛用できる内容に仕上がっております。
最後になりますが、本書の趣旨に沿って執筆いただきましたエキスパートの先生方と、本書を推薦いただきました日本胎児心臓病学会の皆様に御礼申し上げます。
令和5年2月
近畿大学医学部小児科学教室
日本胎児心臓病学会 理事
稲村昇
目次
Ⅰ レベルⅡ胎児心エコーの基礎知識
1 胎児心エコーにおける基本断面
2 基本断面における異常所見
3 ドプラ
4 その他の高度な機能
5 胎児心機能評価
Ⅱ 胎児期に進行する疾患
6 左心低形成症候群
7 完全大血管転位
8 総肺静脈還流異常症
9 Ebstein病
10 大動脈弁狭窄
11 Fallot 四徴兼肺動脈弁欠損
Ⅲ 新生児期に発症する疾患
12 単心室 無脾・多脾症候群
13 三尖弁閉鎖
14 総動脈幹遺残
15 肺動脈閉鎖・心室中隔欠損
16 純型肺動脈閉鎖
17 大動脈肺動脈窓
18 大動脈弓離断
Ⅳ 乳児期に発症する心疾患
19 心内膜床欠損
20 Fallot四徴
21 大動脈縮窄
22 修正大血管転位
23 心室中隔欠損
Ⅴ その他の心疾患
24 血管輪
25 胎児動脈管早期閉鎖
26 静脈管欠損
27 心筋症
28 心臓腫瘍
Ⅵ 胎児不整脈
29 胎児不整脈の診断方法
30 完全房室ブロック
31 先天性QT延長症候群
32 頻拍性不整脈
Ⅶ 胎児心疾患と出生後の対応
執筆者一覧
■監修
稲村昇 近畿大学医学部小児科学教室
■執筆(五十音順)
石井徹子 千葉県こども病院循環器内科
石井陽一郎 大阪母子医療センター小児循環器科
石田秀和 大阪大学大学院医学系研究科小児科学
稲村昇 近畿大学医学部小児科学教室
加地剛 徳島大学病院産科婦人科
金川武司 国立循環器病研究センター産婦人科
川瀧元良 神奈川県立こども医療センター新生児科
河津由紀子 福山市民病院小児科
塩野展子 市立札幌病院新生児内科
瀧聞浄宏 長野県立こども病院循環器小児科
武井黄太 長野県立こども病院循環器小児科
竹田津未生 北海道療育園
田中智彦 たなかキッズクリニック
田中靖彦 静岡県立こども病院循環器科
堀米仁志 筑波大学医学医療系小児科
前野泰樹 聖マリア病院新生児科
満下紀恵 静岡県立こども病院循環器科
三好剛一 国立成育医療研究センター臨床研究センター