自己免疫性脳炎・関連疾患ハンドブック

    定価 7,920円(本体 7,200円+税10%)
    編著下畑享良
    岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
    B5判・368頁
    ISBN978-4-7653-1956-0
    2023年05月 刊行
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    睡眠病、認知症、精神症状の原因も自己免疫性脳炎だった? 治療可能な見過ごされている疾患、自己免疫性脳炎の本邦初のハンドブック

    内容紹介

    Netflixの人気ファンタジードラマ『サンドマン』をご存知でしょうか? その冒頭、主人公が封印されることで、世界中で何百万人もの人々が原因不明の睡眠病にかかったというナレーションがあります。実はこれはスペイン風邪のときに実際に起きた流行病「無気力性脳炎」をモチーフにしていて、公開された当初コロナパンデミックとそのインフォデミックとも重なり、感染後にごくまれに生じる自己免疫性脳炎の症状として睡眠病や認知症、精神症状などがあるということが一般市民にも広く知られるようになりました。

    自己免疫性脳炎とは、感染後の免疫応答の過剰反応以外にも、傍腫瘍性神経症状、免疫チェックポイント阻害薬のirAEなどを原因としてつくられた自己抗体が病原、あるいは診断マーカーとして考えられる脳炎のことですが、抗体科学の発展により、今後も新たに原因となる自己抗体、あるいは診断マーカーになる自己抗体が発見されるとされています。

    こうした疾患群は不治の病ではなく、自己免疫性脳炎と疑うことができれば、ステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量静注療法をはじめ、リツキシマブなどのような分子標的薬――そしてそれは近年承認されたものがふえている――によって早期治療を始めることができるならば、予後も良好だとされています。

    本書はハンドブックの名にふさわしく、自己免疫性脳炎の歴史から抗体の種類、各種疾患群の病理・検査・治療法、各種抗体の特徴を本邦の専門家が執筆・網羅しています。ぜひお読みください。

    序文

    近年、自己免疫性脳炎に関連する新たな自己抗体がつぎつぎに同定されている。これに伴い、新たな疾患概念が確立されている。さらにこれらの疾患はさまざまな臨床像を呈しうることも判明し、これまで認知症、精神病、てんかん、小脳性運動失調症、運動異常症、睡眠異常症、自律神経障害と診断されてきた症例のなかに含まれている可能性がある。自己免疫性脳炎では、免疫療法が有効であることが少なからず存在することから、これらの疾患を正しく早期に診断することは、私達、臨床医にとって極めて重要な課題と言える。

    以上を踏まえ、自己免疫性脳炎に焦点を絞ったユニークな書籍を企画した。これまでに明らかになった知見を解説し、臨床現場での対応をサポートすることを目的としている。具体的な項目としては、①自己免疫性脳炎と自己抗体・傍腫瘍抗体に関する総論、②代表的な自己免疫性脳炎・脳症とその主な臨床病型、③神経・精神疾患と自己免疫、④これまでに明らかになった自己抗体一覧を取り上げる。各項目に関しては、まず読者が全体像を理解しやすいよう、冒頭に「エッセンス」として要点を示し、また文末には今後の臨床・基礎研究につながる「疾患克服に向けての課題・提言」をご記載いただいいた。またとくに注目されている点は「トピックス」として取り上げ議論いただいた。脳神経内科医や内科、小児科、総合診療医のみならず、救急医、精神科医になどの医師全般に役立つ内容になったと確信している。

    本書の趣旨に賛同し、熱のこもったご原稿をご執筆くださった著者の先生方、そしてより良い書籍にするためにご尽力くださった金芳堂、浅井健一郎氏に感謝申し上げたい。

    岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野教授
    下畑享良

    目次

    I 総論
    1 定義・歴史・展望
    2 自己免疫性脳炎の疫学と特徴
    3 自己免疫性脳炎の診断・検査の進め方
    4 自己免疫性脳炎・脳症の治療
    5 抗神経抗体の分類と病態(細胞内抗原抗体vs細胞表面抗原抗体)
    6 傍腫瘍性神経症候群関連自己抗体の分類と病態

    Ⅱ 自己免疫性脳炎·脳症の主な臨床病型
    1 抗NMDAR脳炎
    2 自己免疫性辺縁系脳炎
    3 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)
    4 MOG抗体関連疾患(MOGAD)
    5 抗LGI1脳炎・抗Caspr2脳炎
    6 Bickerstaff脳幹脳炎
    7 橋本脳症
    8 自己免疫性GFAPアストロサイトパチー
    9 IgLON5抗体関連疾患
    10 DPPX抗体関連脳炎
    11 抑制性シナプスに対する自己免疫疾患
    12 Sez6l2抗体関連脳炎
    13 KLHL11抗体関連脳炎

    Ⅲ 神経・精神疾患と自己免疫
    1 自己免疫性認知症
    2 自己免疫性精神病
    3 自己免疫性てんかん
    4 自己免疫性小脳失調症(傍腫瘍性小脳変性症)
    5 自己免疫性小脳失調症(抗神経抗体を伴う非傍腫瘍性小脳性運動失調症)
    6 自己免疫性運動異常症
    7 自己免疫性睡眠異常症
    8 自己免疫性自律神経節障害
    9 免疫チェックポイント阻害薬と自己免疫性脳炎
    10 小児の自己免疫性脳炎

    Ⅳ 自己抗体一覧
    1 細胞表面抗原抗
    2 細胞内抗原抗体

    執筆者一覧

    ■編著
    下畑享良  岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経内科学分野

    ■執筆者一覧(執筆順)
    大石真莉子 山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
    神田隆   山口大学大学院医学系研究科臨床神経学
    中嶋秀人  日本大学医学部内科学系神経内科学分野
    河内泉   新潟大学大学院医歯学総合研究科医学教育センター/新潟大学医歯学総合病院脳神経内科
    木村暁夫  岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
    田中惠子  新潟大学脳研究所モデル動物開発分野/福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座
    飯塚高浩  北里大学医学部・脳神経内科学
    横山和正  東静脳神経センター/順天堂大学医学部脳神経内科
    中島一郎  東北医科薬科大学医学部脳神経内科学
    三須建郎  東北大学病院脳神経内科
    渡邉修   鹿児島市立病院脳神経内科
    古賀道明  山口大学大学院医学系研究科臨床神経学(脳神経内科)
    米田誠   福井県立大学大学院健康生活科学研究科
    原誠    日本大学医学部 内科学系神経内科学分野
    松井尚子  徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学
    矢口裕章  北海道大学神経内科
    石川英洋  三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学講座
    新堂晃大  三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学講座
    竹内英之  横浜市立大学 医学部 神経内科学・脳卒中医学
    髙木学   岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学
    神一敬   東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野
    吉倉延亮  岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
    大野陽哉  岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
    筒井幸   特定医療法人祐愛会 加藤病院精神科/秋田大学医学部 神経運動器学講座精神科分野
    神林崇   筑波大学 国際統合睡眠科学機構/茨城県立こころの医療センター
    中根俊成  日本医科大学脳神経内科
    鈴木重明  慶應義塾大学医学部神経内科
    福山哲広  信州大学医学部小児医学教室
    竹腰顕   岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野

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