それをしたらダメ! NG事例から学ぶ臨床研究デザイン

    定価 3,520円(本体 3,200円+税10%)
    笹渕裕介
    東京大学リアルワールドエビデンス講座
    石丸美穂
    東京医科歯科大学統合教育機構
    大野幸子
    東京大学大学院医学系研究科
    橋本洋平
    Save Sight Institute The University of Sydney
    A5判・200頁
    ISBN978-4-7653-1963-8
    2023年07月 刊行
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    ミスをおかさないために! いい加減な研究方法から卒業しよう!

    内容紹介

    初学者、あるいは既に研究を進めているベテランであっても、陥ってしまう研究上の罠はたくさんあるものです。場合によっては研究不正と受け取られる可能性すらあります。本書では、臨床研究でよくある統計学的検定のNG事例を列挙して解説し、ミスをしてしまった場合のリカバリー法と、本来ならどのように研究デザインをしておけばよかったのかをわかりやすく説明しています。

    序文

    本書は、研究初心者が陥りがちな落とし穴を避け、無事に研究をやり遂げることができるようになるための基本的な知識を身につけることを目的としています。

    多くの臨床家が臨床研究に取り組んだ経験があると思います。日々の臨床で生じた疑問を解決すること、専門医取得に学会発表が必要であること、上司からの提案(強制でないと信じています)など、臨床研究を行う理由は様々です。しかし、研究をやろうと意気込むまではいいのですが、はたして何から始めればよいのか、あるいは研究途中でわからないことに突き当たってしまうなど、研究が行き詰まってしまうこともあるでしょう。筆者らは縁あって東京大学の公衆衛生大学院へ進学し、臨床疫学・経済学教室に所属することになりました。そこで仲間達と一緒に様々な臨床研究を行ってきました。その経験を買われ、臨床家から研究の相談を受けることも多くなりました。様々な相談を受けるうちに、臨床家がどのような場面で落とし穴に陥るのかの知見が蓄積されてきました。そこで、この知見をまとめたものが本書となります。本書はよくある失敗の例を挙げ、どのようにすればその失敗を回避できるのかという視点で解説を加えました。

    本書は5部構成となっています。第1章は研究を始める前の準備段階、第2章は研究計画の立案、第3章ではデータ収集の際の落とし穴について解説します。データ収集までに落とし穴に陥ってしまっていると、後でリカバリーが難しいことが多く、実際に臨床研究を行う際には細心の注意が必要です。第4章はデータの解析についての落とし穴ですが、臨床家は統計解析に悩むことが多く、よくある疑問を解決できるような章になっていると思います。第5章は結果の公表についての落とし穴です。本書を一通り読むことで、臨床研究を行ううえでよくある落とし穴を避ける方法を学ぶことができるようになっています。まさに臨床研究を行う際の道標として使えるような内容になったと自負しています。

    本書を読むことで、研究初心者の方々がよりスムーズに研究を進め、成果を出すことができるようになれば幸いです。著者の一人が「こんなに嬉しいことはない」とつぶやくことでしょう。

    最後に本書が出来上がるまで、多大なご協力をいただきました金芳堂の浅井健一郎様らにこの場を借りてお礼申し上げます。

    2023年5月
    笹渕裕介
    石丸美穂
    大野幸子
    橋本洋平

    目次

    はじめに
    登場人物紹介

    第1章 研究を始める前に
    No.1 研究の順序 研究計画を綿密に立てておけばよかった
    No.2 研究を行うためのチーム 研究を1人でやろうとした
    No.3 疑問を構造化する リサーチクエスチョンを明確にしていなかった
    ≫ COLUMN 計画倒れ
    No.4 記述研究 研究は比較研究のことだと思っていた
    ≫ COLUMN 知りたいことがありすぎて優先順位を間違った
    No.5 探索的な研究 仮説にこだわりすぎてしまった
    No.6 網羅的な論文検索 大事な論文を見落としていた
    No.7 対照の設定 比較する対照が定まっていなかった
    ≫ COLUMN 差の差分析
    No.8 適切な研究対象者を設定する 効果を見たい集団になっていなかった
    No.9 より洗練されたリサーチクエスチョン 実現できない研究を行おうとした
    ≫ COLUMN “正しくて”、“真の効果”を推定できる解析探しの旅に出る
    No.10 日本人“では”初めての研究 既にわかっていることを研究してしまった
    ≫ COLUMN 英語論文としてアクセプトされやすいCQとは?

    第2章 研究計画立案
    No.11 一般集団と研究対象者の違い 特殊な集団を研究していることを意識していなかった
    ≫ COLUMN 各統計ソフトウェアの比較
    No.12 交絡 結果を歪める大事な要因を見落としていた
    ≫ COLUMN DAG
    No.13 Immortal time bias 死亡するはずがない期間を考える必要があった
    No.14 減少バイアス 途中で脱落した患者を解析から除外してしまった
    No.15 検出バイアス 一方の群だけアウトカムが発見されやすくなっていた
    ≫ COLUMN ChatGPT
    No.16 Look-back period 過去の病歴を考えていなかった
    ≫ COLUMN 世界一周旅行
    No.17 New-user design 薬を開始した時期を考慮していなかった

    第3章 データの収集
    No.18 データ収集項目の決定 大事な要因を集め忘れた
    ≫ COLUMN カルテレビュー研究は効率化できる
    No.19 測定の妥当性と信頼性 人によって計測の精度が異なっていた
    No.20 真のアウトカムと代替アウトカム 臨床的意義のあるアウトカムを設定していなかった
    No.21 質問票の妥当性 計測したい項目をうまく質問できていなかった
    ≫ COLUMN 質問票の作り方
    No.22 サンプルサイズの見積もり 研究に必要な人数を計算していなかった

    第4章 データの解析
    No.23 解析手法選択のポイント 理解していない手法を使用してしまった
    ≫ COLUMN 傾向スコア分析を過信しないほうがいい
    No.24 連続変数のカテゴリー化 連続変数を恣意的にカテゴリーに分割してしまった
    No.25 データの外れ値 外れ値の扱いを理解していなかった
    ≫ COLUMN コードはしっかり確認しましょう
    No.26 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定 検定の使い分けを知らなかった
    No.27 アウトカムの設定 アウトカムをむやみにたくさん設定してしまった
    ≫ COLUMN 因果推論とドラえもん
    No.28 データの相関を考慮する すべてのデータを独立データとして扱ってしまった
    ≫ COLUMN 研究にかかるお金の話
    No.29 交絡因子ではない因子 交絡以外の注意すべき因子を理解していなかった
    ≫ COLUMN 操作変数法
    No.30 打ち切りによるnumber at riskの減少 生存曲線の解釈がわかっていなかった

    第5章 結果の公表
    No.31 共著者が満たすべき条件 貢献のない人を著者にした
    No.32 研究不正 他人の論文をコピペした
    ≫ COLUMN 研究不正ランキング
    No.33 Questionable research practices 都合の良い結果のみを報告してしまった
    ≫ COLUMN Impact factorインフレ

    おわりに
    索引
    著者プロフィール

    執筆者一覧

    ■著
    笹渕裕介 東京大学リアルワールドエビデンス講座
    石丸美穂 東京医科歯科大学統合教育機構
    大野幸子 東京大学大学院医学系研究科
    橋本洋平 Save Sight Institute The University of Sydney

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