消化器外科手術の流儀 トップナイフのロジック&テクニック

    定価 8,910円(本体 8,100円+税10%)
    手術手技研究会
    編集山崎慎太郎
    国立病院機構・災害医療センター外科/日本大学消化器外科・診療教授
    髙山忠利
    日本大学医学部医学部長・消化器外科教授
    土岐祐一郎
    大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授
    B5判・304頁
    ISBN978-4-7653-1968-3
    2023年11月 刊行
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    消化器外科手術のさらなる高みを目指す、すべての術者に贈る 手術手技研究会に所属するトップナイフが結集した渾身の1冊

    内容紹介

    本書では、上下消化管に肝胆膵を含めた、すべての消化器領域をカバーして、各領域のスペシャリストによる手術手技(テクニック)と、それを裏付ける思考過程(ロジック)について詳しくまとめています。

    また、各領域ごとに取り上げた内容は、開腹・内視鏡・ロボットなどの術式にかかわらず、いずれも経験豊富な優れた術者である執筆陣が選りすぐった学びの多い(コツやピットフォールに焦点を当てた)ケースばかりを集めています。

    果たして消化器外科手術の巧者たちは、術前・術中いかに考えを深めながら戦略を立て、ここぞという時にどのようなアプローチを行い、ときに難航する状況をいかに乗り越えながら手術を成功まで導くのか。

    本書には、単なる知識や技術だけではない、それらを日々の経験や修練によって高いレベルにまで向上させた、トップナイフと呼ばれる巧者だけが持ちうる流儀に溢れています。

    さらなる高みへ踏み出すための具体的なヒントや道筋の発見にお役立てください。

    序文

    手術は科学(Science)と技術(Art)の両面で構成されています。現在、Scienceとしての手術の知識はシミュレーションやナビゲーションの登場で大きく変化し、Artとしての技術の蓄積はエネルギーデバイスやロボット手術により新たな発展があります。本書は、トップナイフのLogic&Techniqueという副題を付け新たな知識や技術を存分に網羅しました。私の30年近くとなった外科医のキャリアから見ても、巧者の手術には手技に術者の信念が宿りその結果、ScienceとArtの融合が、すべての手術を成功へと導くLogicへと結実しているように感じます。

    手技(Technique)は、先輩医師の模倣からはじまり、段階的に会得するものでした。よって、高精度の反復を経て会得の状態になるまでに時間を要しました。現在、手技という側面だけで見れば、紙の手術書から動画へと教材が移ることで技術の習得時間は格段に短くなっています。一方、更なる高みへ一歩を踏み出すためには自身の手技の体系化が必要で、ここにはLogicが必要となります。良く練られた手術戦略や無駄の無い手技に感動したことは数多く、これらを自在に駆使できる外科医には必ずLogicがあります。手術巧者とは華麗な技術よりも、豊富な知識で正しい戦略を立てることができる人を指し、私も外科医の目標としています。

    本書は、『肝胆膵高度技能専門医』や『内視鏡外科技術認定医』を目指す医師や取得した医師を対象としています。手術手技では、コツやピットフォールという言葉をよく耳にします。技術と知識の融合を会得した外科医の要点をコツと言い、誰もが経験する痛い体験で、一定の法則下で高頻度に起こる事象をピットフォールと言います。専門職への登竜門に立った先生方に自身の手術戦略やアプローチを考え、知識と技術をさらに高めるために手術巧者よりコツやピットフォールを提供してもらうことで、より短時間のうちにスキル向上に貢献できると信じています。さらに、「開腹手術」、「内視鏡手術」、「ロボット手術」と消化器外科全般に関わる様々な視点の考え方をバランスよく盛り込んでいます。

    近年、ビデオ動画を用いた発表も多くなり、アプローチや術式の断片を見た時に、手技の共通点や施設毎の独特な手技を見られるようになりました。一方、専門性が高まる程、他領域への感心が薄くなることは事実です。本書の原稿を通読すると、ハッとする手術のコンセプトや戦略に多く遭遇します。専門分野以外のコツやピットフォールは他領域手術と共通なことも多く、新たな発見が隠れていることもあります。本書では、そのようなヒントを各所に見つけることができるでしょう。

    外科医は、手術により患者さんの命を預かる責任があり、絶えず知識と技術の向上と責任が求められます。本書は、技術だけでなく知識と戦略を磨がきたい医師になるための情報を多く含んでいます。次世代の外科医にとって思いもよらぬ発見の書として存在することを切に願います。最後に、本書は手術手技研究会の監修で刊行されました。共同監修者の、高山忠利先生、土岐祐一郎先生に御礼を申し上げます。さらに、臓器別各章を構成いただきました主筆の先生方、各章を執筆されたトップナイフの先生方に深謝申し上げます。

    令和5年9月
    国立病院機構・災害医療センター外科/日本大学消化器外科・診療教授
    山崎慎太郎

    目次

    Part1:食道
    1.根治的化学放射線療法後サルベージ手術の極意
    2.縦隔鏡下食道切除術を汎用性高く安全確実に行うために
    3.胃切除後・胃癌合併食道癌切除後再建法
    4.気道損傷・大動脈出血・再建胃管壊死の対応

    Part2:胃
    1.食道胃接合部癌に対する鏡視下での経裂孔的下縦隔郭清
    2.腹腔鏡下噴門側胃切除における食道残胃吻合
    3.腹腔鏡下/ロボット支援脾門郭清手技のコツ
    4.ロボット支援下大動脈周囲郭清の手術手技

    Part3:肝臓
    1.尾状葉肝癌切除の極意
    2.肝がんに対する肝切除-残肝容量不足の克服-
    3.ICG蛍光法を併用したGlisson鞘アプローチによる低侵襲解剖学的肝切除
    4.腹腔鏡下肝切除における出血のコントロールと術中トラブルの対応

    Part4:胆道
    1.遠位胆管癌に対する膵頭十二指腸切除−膵癌とは何が違うか
    2.肝左三区域・尾状葉切除のコツとピットフォール
    3.胆管を肝門板の高さで切除する“肝門板切除”の適用と手技の実際
    4.右側肝切除における胆管切除限界

    Part5:膵臓
    1.Mesenteric Approac
    2.腹腔動脈合併尾側膵切除術における工夫
    3.腹腔鏡下膵切除術(膵頭十二指腸切除術)
    4.ロボット支援下膵頭十二指腸切除

    Part6:結腸
    1.腹腔鏡下結腸右半切除術 -安全なCME/CVLのポイント
    2.横行結腸癌切除の極意-大網癒合を熟知する
    3.体腔内吻合のコツとピットフォール

    Part7:直腸
    1.ロボット手術の極意
    2.側方リンパ節郭清の治療成績と、質の高い郭清を行うコツ
    3.TaTMEのピットフォール
    4.他臓器合併切除の適応と手技

    執筆者一覧

    ■著
    手術手技研究会

    ■編集
    山崎慎太郎   国立病院機構・災害医療センター外科/日本大学消化器外科・診療教授
    髙山忠利    日本大学医学部医学部長・消化器外科教授
    土岐祐一郎   大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授

    ■主筆
    【Part1:食道】
    瀬戸泰之    東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・乳腺内分泌外科学教授

    【Part2:胃】】
    土岐祐一郎   大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授

    【Part3:肝臓】
    髙山忠利    日本大学医学部医学部長・消化器外科教授

    【Part4:胆道】
    江畑智希    名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科学講座教授

    【Part5:膵臓】
    中村雅史    九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科教授

    【Part6:結腸】
    竹政伊知朗   札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科教授

    【Part7:直腸】
    伊藤雅昭    国立がん研究センター東病院大腸外科長

    ■執筆者一覧(執筆順)
    渡邊雅之    がん研有明病院副院長消化器外科部長/食道外科部長
    大幸宏幸    国立がん研究センター中央・東病院食道外科長
    小熊潤也    国立がん研究センター中央・東病院食道外科
    石山廣志朗   国立がん研究センター中央・東病院食道外科
    八木浩一    東京大学大学院医学系研究科消化管外科学講師
    安田卓司    近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門主任教授
    黒川幸典    大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学准教授
    小寺澤康文   がん研有明病院消化器センター胃外科
    布部創也    がん研有明病院消化器センター胃外科部長
    木下敬弘    国立がん研究センター東病院胃外科長
    瀧口修司    名古屋市立大学病院消化器・一般外科診療科部長/主任教授
    佐川弘之    名古屋市立大学病院消化器・一般外科
    山崎慎太郎   国立病院機構・災害医療センター外科,日本大学消化器外科・診療教授
    髙山忠利    日本大学医学部医学部長・消化器外科教授
    阪本良弘    杏林大学医学部付属病院肝胆膵外科診療科長
    若林剛     上尾中央総合病院外科/肝胆膵疾患先進治療センターセンター長
    若林大雅    上尾中央総合病院外科/肝胆膵疾患先進治療センター
    谷合信彦    日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科教授
    大宮康次郎   がん研有明病院消化器センター肝胆膵外科
    髙橋祐     がん研有明病院消化器センター肝胆膵外科部長
    水野隆史    名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科学講座准教授
    江畑智希    名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科学講座教授
    野路武寛    北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室Ⅱ診療講師
    平野聡     北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室Ⅱ教授
    松山隆生    横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学講座准教授
    藪下泰宏    横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学講座
    遠藤格     横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学講座
    岡田健一    和歌山県立医科大学第2外科講師
    山上裕機    和歌山県立医科大学探索的がん免疫学講座教授
    大塚隆生    鹿児島大学病院消化器外科・乳腺甲状腺外科教授
    三塚裕介    日本大学医学部附属板橋病院消化器外科
    永川裕一    東京医科大学消化器・小児外科学分野教授
    大塚幸喜    藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学教授
    宇山一朗    藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学講座教授
    大木悠輔    愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻消化器腫瘍外科
    惠木浩之    北里大学医学部下部消化管外科学准教授/北里大学メディカルセンター外科副部長
    渡邉純     横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター准教授
    絹笠祐介    東京医科歯科大学消化管外科学分野教授
    髙岡亜弓    東京医科歯科大学消化管外科学分野
    向井俊貴    がん研有明病院大腸外科医長
    秋吉高志    がん研有明病院大腸外科副部長
    塚田祐一郎   国立がん研究センター東病院大腸外科医長
    伊藤雅昭    国立がん研究センター東病院大腸外科長
    木村慶     兵庫医科大学病院下部消化管外科
    池田正孝    兵庫医科大学病院下部消化管外科診療科部長/主任教授

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