こういうときはこうする! 感染症クリスタルエビデンス 診断編
診断するときはこうする! 『感染症クリスタルエビデンス』シリーズ第3弾は診断編。病歴・症候・臨床検査・画像・微生物検査すべて揃って大充実の773頁
内容紹介
本書は感染症診療における診断に特化した内容となっており、病歴、症候、検査、画像検査、微生物検査など、一筋縄ではいかないケースを意識し、日常診察においてプロブレムリストに挙がる項目をもとに構成し、鑑別診断の一助となる書籍を目指しました。
まずは病歴として国内を含めた渡航歴、それぞれの免疫不全における病態の違い、動物接触歴、既往歴など、身体所見としてバイタルサインの異常を含め、それぞれの症候を軸としたアプローチを挙げました。検査所見、画像所見は今までの感染症関連の書籍で個別に取り上げられることはあまりなかったかもしれません。しかし編著者自身の経験上、これらの結果をもとに診断がついたケースもあり、あくまでも病歴、身体所見に基づく診断推論あってこその解釈ですが、項目として取り上げています。最後にやはり感染症診療の軸として微生物そのものにフォーカスしたアプローチを挙げました。
好評姉妹本
こういうときはこうする!感染症クリスタルエビデンス 治療編 – 株式会社 金芳堂
序文
序文
クリスタルエビデンスシリーズも第3弾となり、治療編、感染対策・予防編に続いて、診断編を上梓することになりました。この編集のお話を岡先生からいただき、各項のテーマを考えるにあたり、自身の診療を振り返りました。
私が感染症診療に興味を持ち、青木眞先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版」を貪るように読み、内科全般の研鑽を積んでいた頃からすでに15年以上の歳月が流れました。現在、書店に足を運ぶと感染症コーナーには良書が所狭しと並んでいます。感染症診療を学ぶ上で、肺炎、腎盂腎炎、髄膜炎などの病態ごと、微生物ごとの特徴を示したもので体系的な知識を得ることは非常にリーズナブル、かつ重要です。私自身もそうですが、この20年はこれらの総論的な書籍、諸先輩方の教えのおかげで、全体的な感染症診療のレベルは底上げされたように思います。
翻って、感染症のコンサルテーションを行っている自身の相談事例を振り返ってみると、直感的に診断できるものは少なく、情報を取捨選択してプロブレムリストを作成し、その繋がりを解釈して診断に結び付くことが多かったと感じています。折角このような編集の機会をいただいたので、一筋縄でいかないケースを担当する方を意識し、実際に感染症診療でプロブレムリストに挙がる項目をもとにした章立ての書籍作成に臨みました。
まずは病歴として国内を含めた渡航歴、それぞれの免疫不全における病態の違い、動物接触歴、既往歴など、身体所見としてバイタルサインの異常を含め、それぞれの症候を軸としたアプローチを挙げました。検査所見、画像所見は今までの感染症関連の書籍で個別に取り上げられることはあまりなかったように感じています。しかし、自身の経験からはこれらの結果をもとに診断がついたケースもあり、あくまでも病歴、身体所見に基づく診断推論あってこその解釈ですが、項目として取り上げました。最後にやはり感染症診療の軸として微生物そのものにフォーカスしたアプローチを挙げました。
著者に関しては、私と直接面識があって臨床医として尊敬し、私自身が原稿を読みたいと思った方々を選びました。また、監修の岡先生からご推薦をいただいた埼玉医科大学総合診療センターのやる気溢れる若手医師にも執筆を担当していただきました。この編集依頼からほどなくして新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われ、コロナ禍で大変忙しい先生方に対して無茶なご依頼となりましたが、それにも関わらず非常に読み応えのある文章で応えていただき、大変感謝しております。複数著者による書籍では統一性に欠ける可能性があり、なるべく編集として読みやすい形を心掛けましたが、ある程度の表現の違いや内容の重複に関しては、各著者の「味」として楽しんでいただけたらと思います。
本書が感染症診療に真摯に取り組む人のお役に少しでも立てれば幸いです。
2023年9月
渋江寧
監修のことば
感染症クリスタルエビデンスの診断編ということで、真っ先に責任編集者に渋江寧先生が脳裏に浮かんだ。
渋江先生はかつて私とともに関東労災病院、東京高輪病院で感染症診療を行った同僚であり、同志である。
そしてその苦楽をともにする中で、感染症診療における大きなエラーは、単なる抗菌薬の選択やそのエビデンスの活用以前に、診断に関わるエラーが多いことを深く共有する仲間である。
渋江先生はかつての私と同じく、医学書フリークであり、小遣いの多くを医学書の購入に当て、医学書を読み漁ることが、もう一つの趣味である音楽と並ぶ日課であったことを知っている。そして良くも悪くも職人のように頑固一徹である。
そんな渋江先生が時間をかけて編集した感染症クリスタルエビデンスの診断編であり、これは治療編や予防編を超える力作となっていることは原稿に目を通している段階で、確信している。
本書が広く活用され、的確な診断のもと、適切な感染症治療の提供にお役立ていただくことを願っている。
2023年9月
埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
教授
岡秀昭
目次
第1部 病歴と感染症
第1章 渡航歴(東南アジア)
第2章 渡航歴(アフリカ)
第3章 渡航歴(中南米)
第4章 渡航歴(国内)
第5章 動物接触歴
第6章 淡水・海水曝露歴
第7章 摂食歴
第8章 性行為歴
第9章 免疫不全(好中球減少)
第10章 免疫不全(HIVによる細胞性免疫不全)
第11章 免疫不全(HIV以外の細胞性免疫不全)
第12章 免疫不全(液性免疫不全)
第13章 免疫不全(バリア障害)
第14章 手術歴
第15章 既往歴
第16章 薬剤歴
第2部 症状、身体所見と感染症
第1章 バイタルサイン
第2章 咽頭痛
第3章 口腔病変
第4章 咳嗽
第5章 鼻汁・鼻閉
第6章 頭痛
第7章 胸痛
第8章 腹痛
第9章 腰痛
第10章 関節痛/関節炎
第11章 四肢痛
第12章 下痢
第13章 排尿障害
第14章 倦怠感・体重減少・寝汗
第15章 表在リンパ節腫脹
第16章 眼の充血
第17章 皮疹
第18章 爪
第3部 検査所見と感染症
第1章 好酸球
第2章 血球(異形リンパ球)
第3章 血球(血球増加、減少)
第4章 CRP、赤血球沈降速度(ESR)
第5章 AST、ALT、ALP、γ-GTP
第6章 LD(LDH)、CK
第7章 尿
第8章 髄液
第9章 胸水・心嚢液
第10章 腹水
第11章 関節液
第4部 画像検査と感染症
第1章 頭頸部
第2章 肺
第3章 心臓・大血管
第4章 消化管
第5章 肝臓・胆道・膵臓
第6章 脾臓
第7章 泌尿器
第8章 リンパ節
第9章 脳
第10章 骨・関節
第5部 微生物検査と感染症
第1章 グラム染色(グラム陽性菌)
第2章 グラム染色(グラム陰性菌)
第3章 培養で同定されにくい微生物(質量分析・遺伝子検査)
第4章 培養で同定されにくい微生物(抗原・抗体検査)
第5章 抗酸菌検査(迅速発育性抗酸菌について)
第6章 真菌検査
第7章 寄生虫検査
第8章 多剤耐性菌検査
第9章 Clostridioides difficile関連検査
第10章 迅速抗原検査
執筆者一覧
■編著
渋江寧 横浜市立みなと赤十字病院感染症科・感染管理室・医療安全推進室
■監修
岡秀昭 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
■執筆者一覧(五十音順)
荒川悠 高知大学医学部附属病院呼吸器・アレルギー内科
上田晃弘 日本赤十字社医療センター感染症科
大場雄一郎 大阪急性期・総合医療センター総合内科・感染症科
落合佑典 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
小野大輔 埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科 / Case Western Reserve University / Cleveland VA Medical Center
金澤晶雄 順天堂大学医学部総合診療科学講座
鎌田啓佑 結核予防会結核研究所抗酸菌部 / 北海道大学大学院医学研究院呼吸器内科学教室
川村隆之 埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科
川村繭子 埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科
久保健児 日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科・救急科集中治療部
古宮伸洋 日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科
小山泰司 神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科
佐々木雅一 東邦大学医療センター大森病院臨床検査部
佐藤央基 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
白井絢子 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
中久保祥 北海道大学病院呼吸器内科・感染制御部
中村(内山)ふくみ 東京都立墨東病院感染症科
西田裕介 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
西村翔 はりま姫路総合医療センター感染症内科
根本隆章 りらホームクリニック
馳亮太 日本赤十字社成田赤十字病院感染症科
林俊誠 前橋赤十字病院感染症内科
藤谷好弘 札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座
松尾裕央 大阪大学医学部附属病院感染制御部/感染症内科
三村一行 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
村中清春 諏訪中央病院リウマチ膠原病内科・感染症内科
森伸晃 愛知医科大学医学部臨床感染症学講座
山本慧 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科
山下裕敬 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科