この局面にこの一手! Dr.長澤直伝! <番外編>臨床で役立つ! 腎生検・腎病理の定跡

  • 未刊
定価 6,930円(本体 6,300円+税10%)
監修佐藤博
東北大学名誉教授
長澤将
東北大学病院腎・高血圧・内分泌科
B5判・332頁
ISBN978-4-7653-2023-8
2025年01月 刊行
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★2025年1月中旬 発売予定!★

これぞ新しい腎病理アトラス!

内容紹介

腎病理の本は、どれも「内容が難しく」かつ「堅苦しい」ものが多くてわかりづらい……と思っていたそこのあなた! 本書は、そういう欠点を一掃した画期的なテキストです。これまでのシリーズで登場していた研修医の古賀先生が、ハカセ先生を迎え、軽妙なトークをしながらもしっかりと腎病理について勉強します。的確な病理組織診断を治療の有用な情報として捉えられるように、診断の意義を十分に理解し その情報を診療に反映できるようにしましょう。

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序文

監修のことば

学生時代は「薬理学」や「生理学」に興味を持つ一方で、「病理学」が大の苦手であり、顕微鏡実習がその最たるものだった。とりわけ腎病理においては「膜性腎症」や「膜性増殖性糸球体腎炎」などの専門用語をまったく理解できず、「暗中模索」の状況を強いられた。そういう私が後に腎生検病理に深く関わることになったのだから、世の中は分からない。

当然のことながら腎臓内科入局後も腎病理には苦労させられた。しかし、当時の研究室内には「ずぶの素人」でも何とか拾い上げてくれる「マンツーマン・システム」が構築されており、私の場合も、上司にあたる古山隆先生や斉藤喬雄先生から「組織読みのノウハウ」を手取り足取り教えていただいた。さらに、当時「腎生検診断の神様」的存在であった坂口弘先生(慶応大学病理学教授)から直接ご指導をいただく幸運にも恵まれた。

このような経験を振り返ってみると、腎病理を効率よく理解するためには、テキストを読んだり講義を受けたりするだけの受動的学習のみならず、実際に顕微鏡を挟んで上級医と「ディスカッション」しながら経験を深める能動的学習が必要に思える。

今回、長澤将先生が書きあげた『この局面にこの一手! Dr.長澤直伝! <番外編> 臨床で役立つ! 腎生検・腎病理の定跡』は、この能動的学習を誌上で可能にした画期的な指南本である。これまでの「Dr.長澤直伝!」シリーズと同様、主人公として新人医師の古賀先生が登場し、ハカセ先生との対話を通じて、一つ一つ小さな階段を登るかの如く、着実に「腎病理」の真髄に踏み込んでいく内容になっている。読者の方々も、何気なく読み進めるうちに、いつのまにか腎病理の面白さに引き込まれていくのではないだろうか。本書は「腎生検組織読み」の入門書として最適のガイドブックになること請け合いである。

2024年12月
東北大学名誉教授
佐藤博


はじめに

腎臓内科の長澤将です。

この度は『この局面にこの一手! Dr.長澤直伝! <番外編> 臨床で役立つ! 腎生検・腎病理の定跡』を上梓できたことを嬉しく思います。

これまでの3冊に出てきた古賀先生が腎病理を習いに行くという形でスピンオフとして書き上げました。編集部から、ぜひ腎病理の本を、というお声がけをいたただいていたのですが、しばらくどうしようか悩んでおりました。むしろ、腎病理の本を書くつもりは全くありませんでした。なぜかといえば腎臓学会に行けば分かると思いますが、腎病理になると煩型というか一言居士がたくさんいて、その人たちと対峙するとなると非常に気が重かったからです(腎病理というのはあまり市場が大きくないために、売り上げ的にも心配な面もありましたし)。

若手の腎臓内科と話す機会が増え、「腎病理がよくわからない」という声を耳にする機会が増えました。話を聞いていくと、どうしても形態学的なパターン認識にとらわれすぎており、病気の成り立ちに対する理解が十分でないなと気付きました。

私の腎病理の師匠である佐藤博先生が退官の際に、ご自身の講義資料をUSBメモリに入れて渡してくれました(私だけでなく関係者みんなにです)。私は2003年卒ですので4年生の腎臓内科の講義(当時は第二内科というくくりでしたが)の資料(およびそれ以前の講義の資料から最後の講義まで)が入っていました。しばらく机の中に眠っておりましたが、アーカイブをしていた際に、「そうだ! 佐藤博先生から習ったことを後世に残そう!」と急に思い立ったのが、本書を書き始めたキッカケです。

東北大学腎臓・高血圧内科にある30000件弱ある腎生検の検体(一部は2011年の東日本大震災で散逸していましたが)から教育的なものや貴重なものをピックアップし、数千に及ぶ電顕写真は一度電子化して(4か月以上かかりました)、そこから選りすぐりの画を本書の中に入れました。どうしても珍しい病理像に目が行きがちですが、病理学的な所見、それに至る病態について、できる限り分かりやすく解説しました。たくさんの名著がある腎病理の分野ですが、本書を読んでいただけると、名著をより理解しやすくなると思います。

長い間当科で腎病理に関わる仕事をしてくれた金須清美様、最近腎病理をつくってくださっている加羽澤慧様、奥底からプレパラートを出してくださった高橋智子様、また、本書のお声がけいただいた金芳堂編集部の黒澤健様、4冊連続で担当してくださった「恥ずかしがり屋の熊さん」(名前の由来はオレンジ本をご覧ください)、私をはじめ古賀先生、里見先生の絵、今回はハカセ先生を生み出して、本書の素敵なデザインを描いてくださったnaji designさんにこの場を借りて感謝を申し上げます。

いつもは「7回読んでいただき……」ということが多いですが、本書に関しては長く手元に置いていただき、ことあるごとに読み返していただければと思います。なかなか腎病理の本が重版されないことを考えると、読む用に1冊、保存用に1冊の最低2冊は買っていただければと思います。

2024年秋
長澤将

目次

監修のことば
はじめに

プロローグ

第1局 腎病理診断に進む前の知識
その壱 ハカセ先生と対面
その弐 染色の話
その参 免疫染色01
その四 免疫染色02
その五 免疫染色03
その六 IgG
その七 補体、特にC3
その八 C3の話
その九 IgAやIgMの話
その十 免疫染色C1qとFib

第2局 腎病理はループス腎炎より始めよ!
その壱 最初に何から見るか?
その弐 前提の話(糸球体の数)
その参 慢性病変
その四 急性病変
その五 ループス腎炎の病型01
その六 ループス腎炎の病型02
その七 MPGN、TMAの話
その八 ループス腎炎まとめ、電顕

第3局 IgA腎症
その壱 IgA腎症の総論
その弐 IgA腎症の典型的な組織像
その参 IgA腎症の分類
その四 IgA腎症病理(個別の病変、糸球体)
その五 IgA腎症の個別の間質病変
その六 IgA腎症電顕、そして素朴な疑問
その七 IgA腎症とIgA血管炎の違い
その八 IgA血管炎の分類について

第4局 ANCA関連血管炎
その壱 ANCA関連血管炎の総論
その弐 ANCA関連血管炎の病理01
その参 ANCA関連血管炎の病理02
その四 ANCA関連血管炎のグレーディング
その五 抗GBM抗体型糸球体腎炎

第5局 膜性腎症
その壱 膜性腎症の総論
その弐 膜性腎症のグレーディング
その参 膜性腎症の予後
その四 PLA2Rについて
その五 膜性腎症の治療

第6局 IgG4関連腎臓病
その壱 IgG4関連腎臓病
その弐 IgG4関連腎臓病の特徴
その参 真のIgG4関連腎臓病
その四 IgG4関連腎臓病の浸潤細胞(および通常の間質性腎炎の話)
その五 空胞化と泡沫化

第7局 腎硬化症
その壱 腎硬化症の総論
その弐 悪性腎硬化症と良性腎硬化症
その参 腎硬化症の所見01
その四 腎硬化症の所見02

第8局 糖尿病関連腎臓病
その壱 糖尿病関連腎臓病
その弐 糖尿病関連腎臓病の病理
その参 びまん性変化と結節性変化
その四 滲出性病変、係蹄の二重化
その五 Polar vasculosisとその周辺
その六 糖尿病っぽい変化
その七 Remission and regression of DMN(diabetic nephropathy、糖尿病関連腎臓病)
その八 結節性病変があれば糖尿病関連腎臓病でよいか?

第9局 MGRS(monoclonal gammopathy of renal significance)関連
その壱 MIDDとその周辺
その弐 細線維構造
その参 クリオグロブリン
その四 LCDD、HCDD
その五 結節をきたす疾患
その六 MPGNという病気は存在しない

第10局 巣状分節性糸球体硬化症
その壱 巣状分節性糸球体硬化症
その弐 Diffuse podocytopathies
その参 一次性FSGSについて
その四 FSGSの病理
その五 IgG dusting
その六 電顕によるpodocyte effacementについて

第11局 電顕が診断のキーとなる疾患
その壱 電顕で診断できる腎疾患
その弐 Alport症候群、TBMDの電顕
その参 Alport症候群の遺伝子など

むすびに

索引
監修者・著者プロフィール

執筆者一覧

■監修
佐藤博 東北大学名誉教授

■著
長澤将 東北大学病院腎臓・高血圧内科

トピックス