すべての研修医・医療従事者が知っておきたい 検査データの読み方とピットフォール
★2025年2月中旬 発売予定!★
ルーチンの検体検査データを適切に解釈するために!若手医療従事者全員が知っておきたい検査値データの読み方とピットフォール!
内容紹介
本書は、臨床検査データ、特に検体検査データの適切な読み方を身に着けるための書籍です。
全3章で構成され、第1章では病態生理の基本的な考え方と臨床検査の基礎知識を分かりやすく解説しています。第2章では実際に経験したピットフォール症例を、第3章ではReversed Clinico-Pathological Conference(RCPC)形式で検査データの解釈から病態を考える過程を示しています。
主に若手研修医や看護師を対象としていますが、臨床検査専門医志望者や経験豊富な医師にとっても有益な内容となっています。
序文
臨床検査データ、なかでもルーチンの検体検査データを適切に解釈できることは、すべての医療従事者はもちろんのこと、医学生や看護学生にも必要不可欠な能力です。Reversed Clinico-Pathological Conference(RCPC)はその非常に良い勉強方法であることが知られています。RCPCについては、すでに少なくない数の良書が出版されており、屋上屋を架す必要はないと思っていました。しかし、私が所属していた兵庫医科大学で「似通った検査の異常を示したが病態が全く異なった2症例」を経験し、これを自分達のためだけにとどめておくのは勿体ないと考えたことが本書を企画したきっかけです。この2症例は第3章にお示ししています。
元々はCOVID-19パンデミック前に最初の企画を立てたのですが、パンデミックのために中断を余儀なくされました。そのため、RCPCだけでなく私達が経験した検査のピットフォール症例を読者と共有することにより、より皆さんの日々の臨床に役立つものになるように編集方針を変更しました。ピットフォール症例は第2章にお示ししています。
本書では、検査データ異常を契機に患者の病態生理を読み解く方法をお伝えします。「病態生理」と聞くと分厚い内科学書を思い浮かべたり「なにやら難しそうだな」と思ったりして、それだけで敬遠してしまうかもしれません。しかし、具体的な症例の解説を読むと、推理小説を読むように楽しみながら理解が深まり、読後には「なんだ、意外に簡単じゃないか」と思っていただけることを期待して本書を執筆しました。
第1章は、まず病態生理の考え方を具体的にわかりやすく解説しています。その後に、臨床検査で知っておいていただきたい基本的な事項を説明しています。
第2章は具体的なピットフォール症例です。実際に経験した異常と、それに対する対処を解説しています。
第3章はRCPCです。検査データの解釈からいかにして病態に迫るのかを皆さんと一緒に考えていきます。
本書はユニークな切り口で、ルーチンの臨床検査データを解釈する方法をお伝えしています。そのため、読者として一義的には若手の研修医や看護師の方々を想定していますが、他の医療従事者、さらには臨床検査専門医を目指す専攻医や各診療科の経験豊富な医師にとっても有益であろうと自負しています。
まず第1章では、病態生理の考え方を具体例を用いて、類書には例をみないアプローチでわかりやすく解説していますので、是非目を通していただきたいと思います。それ以降の臨床検査の基本的事項に関しては、すでによくご存知の方は省略していただいても構いません。
第2章は、どの症例からお読みいただいても結構です。原因がハッキリしない症例については、逆に読者から助言をいただければ幸いです。第3章は、言ってみれば力試しです。まずは解説を見ずにご自身で検査データから病態を考えてみることをお勧めします。そうすることで、解説されている内容をしっかりと自分のものにできます。
著者一同、本書が読者の皆さんの明日からの臨床に役立つことを祈念しています。
上に記しましたように、本書はパンデミックの時期を挟んだこともあり、一時は断念を余儀なくされるかという状況でした。その間、我慢強くお付き合いいただき、時には叱咤激励して下さった金芳堂編集部の西堀智子さんなしでは本書は上梓できませんでした。ここに深謝いたします。
2024年12月
著者を代表して
小柴賢洋
目次
第1章 病態生理を踏まえた検査値の読み方
1 検体検査異常値を病態生理から理解する
2 感度と特異度について
3 的中率、オッズ、尤度比について
4 基準範囲と病態識別値(カットオフ値)について
5 検査データの生理的変動と測定誤差
6 臨床検査データの測定誤差の考え方
7 高齢者の基準値
第2章 検査データのピットフォールケースファイル
症例1 汎血球減少
≫ +α こういうケースも注意!「血球の寿命の違いから血小板数に影響がみられやすい」
症例2 小球性低色素性貧血
≫ +α こういうケースも注意!「サラセミアに鉄欠乏性貧血が合併している場合もある」
症例3 グリコヘモグロビン(HbA1c)とグリコアルブミン(GA)の乖離
≫ +α こういうケースも注意!「糖化のしやすさが変化している異常(変異)ヘモグロビンもある」
症例4 ALT値の経時的変化
≫ +α こういうケースも注意!「ビタミンB6欠乏にご用心」
症例5 アルカリホスファターゼ(ALP)単独高値
≫ +α こういうケースも注意!「他の原因によるALP単独異常」
症例6 CKアイソザイムの逆転現象
≫ +α こういうケースも注意!「CK欠損症」
症例7 尿酸測定不能
≫ +α こういうケースも注意!「日常臨床における尿酸」
症例8 電解質異常 -NaとK-
≫ +α こういうケースも注意!「医原性の高Ca血症」
第3章 RCPCケースファイル
1 RCPCにおけるデータの解釈
2 RCPC症例
3 RCPC力試し
COLUMN
なぜ確率でなくオッズを使用するか
LDLコレステロール(LDL-C)測定とnon-HDL-Cについて