皮膚科医のための病理学講義“目からウロコ”の病理学総論
-「生命」からみた病気の成り立ち-

    定価 8,800円(本体 8,000円+税10%)
    真鍋俊明
    B5判・270頁
    ISBN978-4-7653-1755-9
    2018年06月 刊行
    【 冊子在庫 】
    在庫有り

    電子書籍書店で購入

    購入数

    皮膚科医がみる組織像や臨床像をより深く理解できる。

    内容紹介

    病理学の基礎知識を理解し、病理組織像をみて背景となる現象がどのようにおこっているかを知り、組織像や臨床像をより深く理解できる

    序文

    今まで幾度かに渡って,病理検査技師の方々が病理学総論をより面白く理解し,病理組織像を解釈していくことができるようにと,「おもしろ病理学総論」と題する講義をシリーズで行ってきたことがあります。その後これに肉付けをして,皮膚科医の先生方が病理学総論を学び,彼らのみる組織像や臨床像をより深く理解していって頂ければとの思いで講義を企画したこともありました。そこでは,生命,生命体,人とは何か,この多種類の生命体が生息する地球という環境の中で生き残るためにはどういった機構や機能が必要か,そしてそれが異常になった時には何が起こるかといった視点から捉えるようにしてみました。その講義内容を文章の形で書き起こしたのが本書です。ただ,「皮膚科医のための病理学講義」と題していますが,決して皮膚病理にのみ限った話では全くありません。どなたにも読んで頂けるものと思っていますし,皮膚病理を学ぶ人もこれくらいの一般病理の知識を持って皮膚病理組織をみていき理解して頂きたい,病理組織をみている時になにか基本的な疑問を感じた時には参考にして欲しいとの思いから話し,そして書いたものです。皮膚病理については,また個別的にまとめていくことにしています。

    本書の狙いは,病理組織を見る前にまず通り一遍の病理学の基礎知識を理解しておくこと,その上で病理組織像をみて背景となる現象がどんな風に起こっているのかがある程度理解出来るようにすることです。今まで多くの人に接し,病理学,皮膚病理学について話をしてきました。診断を付けることに固執し,即戦力的な知識や判断を得たいと考える傾向が多々見受けられました。特に,一つの所見があると診断できる特異的所見を求め,その他の多くの所見が何を意味しているかを探ろうとはされませんでした。それで面白いのかなと疑問に思うこともありました。いつか,病理学総論を理解した上で俯瞰的に病理組織像を読み,理解していくことを示したい,その上で臨床像と合わせ病態を理解していって欲しいと思っていました。

    これから,13章に分けてお話していきます。それぞれ書かれていることは私がいろいろの文献を読み,考え,実際の症例を通してこうであろうと考え確かめた説や事実に基づいたものです。まず,生命とは何か,生命体とは何か,ヒトの身体がどうなっているのかについて考えていきます。そして,ヒトの身体の中で病的状態が起こった時にどのようなことになり,どのような変化が組織学的に起こるのかをまず理解して頂きます。その後,代謝障害,循環障害,炎症,腫瘍という大きな疾患群についてお話します。最初は組織で見える一般的事項を紹介し,その後もう一度やや詳しく免疫学や分子腫瘍学的に見直し,そこで説明したことを振り返えることにします。最終章では,病理学の基礎知識を病理診断に応用する際の方法や注意点についてもまとめてみました。各章は比較的独立して話されたものをまとめたものです。かなり割愛しましたが,どうしても繰り返し記載する必要を感じるところもありましたので,重複を恐れず書いた部分もあります。

    本書は,私が今まで経験し考えてきたこと,こう考えると一貫して生命現象を捉えることができると思ったことをまとめたものです。本文内では詳しい文献は紹介していません。また,理解の及ばなかったことや誤解していること,新しい知見に遭遇していないことなどもあると思います。もしあるとすればお許し頂きたいと思いますし,巻末の参考図書その他を参照し,読者自身で考え,その真偽を確かめて欲しいと思っています。そして,生命現象やその異常状態としての病理現象にどのようなものがあり,それがどうしてヒトの身体の中で起こるのか,そして実際の病理組織標本をみる時にどのようにそこに現れた生命現象を読み解いていけばよいのか,を理解しようと思い立つ切っ掛けにして頂ければ幸いです。この病理学総論がその理解に少しでも役立ってくれることを願っています。

    本書の企画は1991年末に立てられ,その時は恩師の故林卓司先生との共著による病理学総論でした。数ヵ月後恩師の急逝により,目的は達成されることなくそのままとな
    っていましたが,昨年再度要請いただき実現に至ったものです。

    最後になりましたが,ご高閲,ご意見を賜った京都大学名誉教授宮地良樹先生,滋賀県立総合病院研究所木下和生先生,兵庫がんセンター高井利浩先生,そして校正までお付き合い頂いた近藤響子先生に深謝いたします。また,26年も待ちつづけ,今回快く本書を取り上げて下さった株式会社金芳堂,編集の労をお取り頂きました市井輝和氏に感謝申し上げます。

    2018年5月
    真鍋俊明

    目次

    第1章 生命の神秘
    第2章 細胞や組織の維持機構を貫く原則
    第3章 病気と病的状態にみられる変化
    第4章 代謝障害
    第5章 循環障害1
    第6章 循環障害2
    第7章 炎症1
    第8章 炎症2感染症
    第9章 炎症3免疫機構
    第10章 炎症4免疫機構とその異常
    第11章 腫瘍(新生物)1
    第12章 腫瘍(新生物)2腫瘍の発生と病因
    第13章 病理組織診断学

    執筆者一覧

    トピックス