頭痛外来専門医が教える!頭痛の診かた
著 | 竹島多賀夫 |
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社会医療法人寿会 富永病院副院長/神経内科部長/頭痛センター長 |
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頭痛診療が得意になる!
内容紹介
頭痛はありふれた疾患ではありますが、一般外来でも患者数は多く、致死性でなくても難治性のものや日常生活への支障を考えると、社会に与える経済的損失は小さくありません。この本では、頭痛外来のエキスパートが国際頭痛分類第3版β版に則り、一次性頭痛の基本から慢性頭痛の症例、問診のコツなど頭痛診療で必ず役立つポイントをコンパクトにまとめました。じっくり読めば頭痛診療に自信が持てるようになる一冊です。
序文
2010年、大阪で富永病院に頭痛センターを立ち上げて7年あまりが経過した。日々、多くの頭痛患者さんを診療させていただいている。地域のかかりつけ医の先生方から、また、基幹病院からも多くの頭痛患者さんを紹介いただいており、診断や治療が難しい頭痛症例などは関西全域から御紹介いただいている。さらに、患者さんご自身がネットなどで調べて、当院の頭痛外来を受診いただくことも多い。当院の頭痛センターでは、日本頭痛学会が認定する頭痛専門医6名(常勤3名、非常勤3名)が頭痛外来を担当している。
日本頭痛学会は1973年に頭痛懇談会として発足し、頭痛研究会を経て、1997年に日本頭痛学会となった。わが国における頭痛研究、頭痛診療のリーダーが集い、協力し、また研鑽する場となっている。頭痛学会の会員数は年々増加し、2017年10月現在、2768名となった。頭痛学会には専門医制度があり、902名の会員が専門医の資格をもっており、各地で頭痛診療を行っているが、まだまだ不足している。
当院の頭痛外来では、頭痛患者の診療、頭痛の臨床研究とともに、頭痛外来の見学などを通し、頭痛医学の知識普及や教育にも努めている。医学部学生、研修医、若手医師ばかりでなく、すでに神経内科や脳神経外科、総合内科などの各医学領域の専門医が頭痛診療を始めることを思い立って頭痛外来の見学に来られることもある。
私なりの頭痛診療のコツや注意点を診察の合間にお話ししているが、そのような内容を盛り込んだ書籍を作れればと思っていたところ、金芳堂より、かかりつけ医、研修医むけの本の執筆の打診をいただいた。頭痛外来を見学にこられた方に診察中、あるいは診察終了後の懇談中にお話しするような内容を詰め込んだ本にしようと思い企画した。
第1部は「症例から学ぶ」とした。頭痛入門書の定番症例というより、実際の症例で何らかの点で教訓的だったケースをまとめた。必ずしも典型例ではないが実症例をベースに症例を提示し、解説を加えるスタイルとした。編集者との相談で当初予定していた症例リストの内容から、半数は逸脱して追加したり、差し替えたりという形になった。それぞれ、私の思いがあり、お伝えしたい情報を盛り込めたと思う。第2部「頭痛の基礎知識」として一次性頭痛、二次性頭痛の概説と最近の動向を整理して述べた。第3部は「専門医からのアドバイス」として最近興味をもっているテーマを中心に解説した。
本書のタイトルは、金芳堂の編集者との相談の中で、いろいろな案が浮上したが「頭痛外来専門医が教える!頭痛の診かた」とさせていただいた。「頭痛外来専門医」はあまり使われていない表現であるが、頭痛専門医と頭痛外来担当医を合成した表記として理解いただければ幸いである。
頭痛診療は科学的なエビデンスに基づいて合理的に行わなければならない。大規模な臨床研究や科学的な方法で検証されたエビデンスを重視し、ガイドラインの推奨に沿って診断や治療を進めるのが原則である。しかしながら、現時点ではエビデンスが不足している問題や課題、ガイドラインに記載されていない問題に対しても、その時点でベストな判断をする必要がある。これには、幅広い頭痛関連の知識と経験が重要である。新たに公開されたエビデンスや最新の研究成果により、ガイドラインは書き換えられることが常であり、私自身も考え方や実際の対応を変化させてきた課題も少なくない。また、わが国の医療制度や環境による制約や限界もあるが、その都度、現実的に最善の選択をすることが重要である。現時点での「最新」をなるべく多く詰め込んで執筆したつもりである。国際頭痛学会が Global patient advocacy campaign(GPAC)を展開しており、日本頭痛学会、日本頭痛協会もこれに歩調をあわせた活動を行っている。
頭痛医学自体の進展も重要であるが、頭痛医療をとりまく社会環境を改善し、頭痛医療や頭痛研究に対する支援や理解を拡大することも重要である。
2017年11月に大阪で第45回日本頭痛学会総会を開催させていただく。この開催に合わせての出版を目標に執筆してきた。日々の診療業務や、学会関連の仕事に追われ、なかなか執筆が進まなかったが、なんとか、開催前に出版まで漕ぎ付けることができた。
本書の執筆にあたって、症例のデータを整理、提供してくれた当院神経内科、頭痛センターのスタッフ、遅々として進まない執筆を辛抱強くサポートしてくれた金芳堂の編集者、澤田智子さんに心より感謝する、そしてまた、不規則な私の生活を見守り、原稿について率直な意見を述べ、時には深夜まで議論につきあってくれた家族にも感謝の意を表したい。
本書の出版にあたり、日本頭痛学会代表理事である鈴木則宏教授より過分な推薦のお言葉を頂戴しましたことを、感謝申し上げます。鈴木則宏教授には公私にわたりご指導、ご鞭撻を賜り、私が頭痛診療に邁進するためのエネルギーをいつも頂いているが、今後、さらに頭痛医療のために努力し、精進する決意を新たにすることができた。
本書が読者の頭痛診療に多少でもお役にたつことができれば望外の幸甚である。
竹島多賀夫
2017年10月吉日、大阪
目次
第I部 症例から学ぶ
最近始まった頭痛
Case1 飲酒時に急に始まった頭痛
Case2 頭痛と複視を訴える16歳、女性
Case3 起立時の頭痛
Case4 首が痛くて回らない76歳、女性
Case5 頭頂部が円形状に痛む
Case6 片目の視力障害と頭痛の小児例
毎日おこる激しい頭痛
Case7 眼充血、流涙を伴う激しい頭痛の2症例
Case8 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
Case9 入浴、怒責によって発生する雷鳴頭痛
長期間にわたって続く頭痛
Case10 長期間続く激痛発作
Case11 光やにおいで頭痛がおこる
Case12 連日頭痛薬をのんでいる43歳、女性
第II部 頭痛の基礎知識
(1)総論
1 頭痛の解剖学ミニマム
2 国際頭痛分類
3 慢性頭痛の診療ガイドライン
4 頭痛ダイアリー
(2)診断と治療の基本
1 片頭痛
2 緊張型頭痛
3 三叉神経・自立神経性頭痛
1) 群発頭痛
2) 群発頭痛以外のTACs
4 その他の一次性頭痛
5 頭部外傷・傷害による頭痛
6 薬物乱用頭痛
7 ホメオスターシス障害による頭痛
8 精神疾患による頭痛
第III部 専門医からのアドバイス
・問診のコツ
・食事指導、生活指導のコツ
・病診連携、地域ネットワークの構築
・困った頭痛患者の対処法
・頭痛の保険診療
コラム
漢方と頭痛
子供の頭痛
片頭痛とスティグマ
気圧と片頭痛
不登校と頭痛