めまいを診る

    定価 4,620円(本体 4,200円+税10%)
    北原糺
    奈良県立医科大学教授
    B5判・144頁
    ISBN978-4-7653-1714-6
    2017年04月 刊行
    【 冊子在庫 】
    在庫有り

    電子書籍書店で購入

    購入数

    めまい診療は奥深いからこそ面白い

    内容紹介

    プライマリケアの重要な症状の一つであるめまいは医師にとっても患者にとっても悩ましい症状である。本書は各種めまい疾患を明らかにするための検査や問診のコツから、回復するためのリハビリテーションに至るまでの戦略の立て方を、奈良県立医科大学でめまいセンターを率い、めまいの原因を100%特定してきた著者がわかりやすく説明した。

    序文

    推薦の言葉

    めまいは、誰にでもおこりうる身近な病である。ちょっと疲れたとき、緊張が緩んだときなど、軽いめまいを覚えることは誰しもあることだろう。そのうちの多くは放っておけばいずれ治まり、気にも留めないものである。しかしその一方で、深刻な内耳疾患、脳疾患、全身疾患のサインとなって現れるものもある。また、めまいには複数科での横断的治療が必要なものが多いにもかかわらず、一元的な診断にとどまり、「めまいは治らない」「めまい診療は煩雑だ」と思ってしまう場合もあるだろう。このようなめまい疾患に対し、どのように対処していくべきか。本書は、この問いに簡潔に答えてくれるものである。

    奈良県立医科大学では、多岐にわたるめまい疾患対応の要請に応えるべく、平成28年5月にめまいセンターを設立した。著者の北原糺教授は、このめまいセンターのセンター長を務めるめまいのエキスパートであり、その卓越した能力でまとめあげたテキストが本書である。本書は、どこでも必要な箇所から読み始めることができる構成になっており、めまいに自信のある医師・ない医師、耳鼻科・他科を問わず多くの医師の指針となるところに特徴がある。また、誤診しそうな症例、自分で診てよいのか、紹介すべきかなどについて踏み込んで記述されているところが他書と一線を画している。

    超高齢社会を迎えた今、医療者はその知識を単に患者さん一人一人に使うのではなく、広く社会の発展に生かすべきだと思っている。本学では、MBT(Medicine-Based Town、医学を基礎とするまちづくり)構想を提唱し、その実現に向けて取り組んでいる。目的は、産業創生、地方創生、少子高齢社会のまちづくりである。このまちの安心・安全のためには、めまい、転倒、骨折、寝たきり、痴呆という負のスパイラルを断ち切る必要があり、めまい診療の重要性は高い。

    本書がより多くの人に読まれ、より多くの人の助けになってほしいと願っている。

    奈良県立医科大学理事長・学長
    細井裕司


    めまいは本来、診療科横断的性格の強い症候であるが、典型的なめまいを中心として多くは前庭迷路を含む平衡保持機構の疾患に由来するため、めまい患者は耳鼻咽喉科を受診する機会が多い。最近、基幹病院の一部では耳鼻咽喉科でもsubspecialty に分化する傾向が見られ、めまい患者は神経耳科を専門とする医師を中心とするグループが担当することもある。一方、めまいの診療は問診から検査へと一定の手順に従って進める点では他の症候と同様であるが、いずれの診療科にあってもめまいが診療科横断的傾向の強い症候であることを軽くみて、要救急例は別としても、あらゆるめまい症例を自分一人で解決しようとすると、そこには不確実さと曖昧さが残ってしまう。良くないことではあるが、仮にそのような診療に慣れたとしても、残った「曖昧さ」が蓄積してめまい患者の対応は「不得手だ」あるいは「おっくうだ」と思う医師も少なくない。

    本書ではまず、めまいの診療に積極的意欲を持つ方々ばかりでなく、それを不得意だと思われる方々にも基本的知識を要領よく身に付けていただくことで、大方のめまい患者を十分診療できることに納得していただき、その上で単なるマニュアル診療に満足することなく、「めまいを診る」ことに自信と充実感を得ていただくことを目標とした。

    そこで本書の第Ⅰ編では、問診から検査を経て診断へと円滑に進むための知識と技術を、診療科横断的疾患の最初の関門である「めまいの中枢性(脳)、末梢性(内耳)疾患の鑑別」を含め、「診断に気を遣う部分」に注意を払い、記述した。次いで、めまい疾患への理解を深めるため第Ⅱ編では、各めまい疾患を幅広く取り上げ、とくに主要疾患については「概念、症状、診断、固有の治療」とともに、いくつかの「誤診しやすい疾患」も別に取り上げて解説した。第Ⅰ編に未知または不明の疾患あるいは不明の症候群があれば、第Ⅱ編でその概要を読み取ってから第Ⅰ編に入ることも可能である。第Ⅲ編では、多数のめまい疾患に共通する部分が多い「安全かつ納得できる有効な治療、リハビリテーション」を、さらに診断、治療をより充実させるため「診療科相互の連携または神経耳科診療に多くの経験を持つ医師または施設との連携」を、具体的に述べることとした。

    2017年3月
    北原 糺

    目次

    推薦のことば

    Ⅰ.自信を持ってめまい患者を診るために
    1 めまい疾患の頻度とトリアージ

    2 問診の実際と結果から疾患を推定する
    1) めまい問診のポイント
    2) めまいの症状、誘因、経過
    3) 随伴症状
    4) 病歴、服薬歴、飲酒、喫煙
    5) 問診の実際

    3 検査の実際と結果から疾患を推定する
    1) 検査の基礎―身体の平衡保持機構
    2) 全身検索
    3) 静的・動的体平衡検査(付)重心動揺検査
    4) 眼振検査
    5) 圧刺激検査(瘻孔症状検査)
    6) 聴力検査
    7) 温度刺激検査(付)visual suppression test
    8) 画像検査
    9) 前庭誘発筋電位検査VEMP
    10) メニエール病推定検査
    11) その他の神経耳科学的検査
    12) めまい入院検査

    Ⅱ.めまい疾患の理解を深めるために
    1 内耳(末梢性)疾患
    1) 良性発作性頭位めまい症
    2) メニエール病(付) レルモワイエ症候群、遅発性内リンパ水腫、蝸牛型/前庭型メニエール病
    3) 前庭神経炎
    4) めまいを伴う突発性難聴(めまい突難)
    5) 外リンパ瘻
    6) 上半規管裂隙症候群
    7) 前庭水管拡大症
    8) 聴神経腫瘍
    9) 神経血管圧迫症候群
    10) Hunt 症候群
    11) Cogan 症候群

    2 脳(中枢性)疾患
    1) 脳血管障害
    2) 脳腫瘍
    3) 神経変性疾患など

    3 眼疾患
    1) 眼球内浮遊物
    2) 屈折異常
    3) 融像障害
    4) 先天性眼振
    5) 健常人も羅患する視器由来のめまい・平衡失調

    4 頸部疾患
    1) 頸部脊椎症
    2) 椎骨動脈循環不全

    5 心因性疾患
    1) 不安神経症
    2) 心気症
    3) ヒステリー
    4) うつ

    6 全身疾患
    1) 自律神経失調症
    2) 循環器・血液疾患
    3) 内分泌・代謝疾患

    7 誤診しやすい疾患
    1) メニエール病と良性発作性頭位めまい症
    2) メニエール病と耳硬化症
    3) 聴神経腫瘍とメニエール病
    4) 良性発作性頭位めまい症 と小脳病変
    5) 前庭神経炎後およびめまいを伴う突発性難聴後のめまい

    Ⅲ.めまい治療戦略の立て方
    1 一般的めまいの薬物治療
    1) 急性期の治療
    2) 間歇記の治療
    3) 慢性期の治療

    2 前庭代償とめまいリハビリテーション
    1) 静的・動的前庭代償
    2) 感覚強化リハビリテーション
    3) 感覚代行リハビリテーション

    3 原因不明または難治性めまい患者対策
    1) 診療科横断的めまい患者対策
    2) 治療困難なめまい患者対策

    おわりに
    文献・日本語索引・外国語索引

    執筆者一覧

    北原糺
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座 教授
    奈良県立医科大学附属病院めまいセンター センター長兼任
    1966年生まれ。四條畷高校を経て1992年大阪大学医学部卒業。引き続き同大学大学院卒。
    2001 年大阪大学耳鼻咽喉科学教室助手、2008-10 年講師、2012-14 年准教授。この間ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科留学(2002-04)、大阪労災病院耳鼻咽喉科部長(2010-12)。2014 年より奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座教授。2016 年新設された同大学附属病院めまいセンター長兼任。国内では日本耳鼻咽喉科学会はじめ多数の医学会の代議員/評議員。国外ではSociety for Neuroscience、American Neuro-otology、Barany Society、CORLAS 正会員。
    なおBarany 学会より「前庭神経節の分子生物学研究」に対してスカラーシップを、Politzer 学会より難治性メニエール病に対する外科的新規治療に対しPolitzer 賞(臨床部門)を受けている。

    トピックス

    ■テレビ出演
    2019年12月15日、12月22日放送の「名医の極み」(テレビ朝日)に『めまいを診る』の著者である北原糺先生が出演なさいます。
    「めまい治療のエキスパート」として出演なさる北原先生は、5割程度だっためまいの完治率を約8割にまで上げた「独自の手術法」を紹介。さらに、その熱き思いにも迫ります。

    名医の極み|テレビ朝日
    https://www.tv-asahi.co.jp/meiinokiwami/#/?category=news


    ■テレビ出演
    2019年10月23日放送の「ガッテン!」(NHK)に『めまいを診る』の著者である北原糺先生が出演しました。
    長引くめまいに悩み、病院で検査を受けても原因がわからないめまいに悩む人の場合、頭を上げて寝ることでおよそ8割になんらかの効果が見込めるとして、「頭上げ対策」をご紹介なさいました。

    睡眠・めまい・肺炎 ようやく呼べた!!レジェンド研究者SP – NHK ガッテン!
    http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20191023/index.html#item2019102306


    ■テレビ出演
    2018年4月3日放送「名医とつながる!たけしの家庭の医学」(朝日放送)に『めまいを診る』の著者である北原糺先生が出演しました。
    つまずきの原因を「平衡感覚の衰え」として、つまずきやすさを予防・改善できる「耳石器30秒トレーニング」をご紹介なさいました。

    名医とつながる!たけしの家庭の医学|過去の放送内容|朝日放送テレビ
    https://www.asahi.co.jp/hospital/onair/180403.html

    株式会社 金芳堂 / Twitter
    https://twitter.com/kinpodo_pub/status/981734839752671232