こういうときはこうする!感染症クリスタルエビデンス 感染対策・予防編
ICDは病院の医療を安全と経営からサポートする!
内容紹介
『こういうときはこうする!感染症クリスタルエビデンス』シリーズの続編は感染対策・予防編!
抗菌薬適正使用支援の意義から職員の感染管理、施設の管理にいたるまで、感染症コントロール業務にかかわる日常の疑問について、エビデンスを整理し、感染対策分野のエキスパートが実際の治療をどうしたらいいかエキスパートオピニオンを提案します。
好評姉妹本
こういうときはこうする!感染症クリスタルエビデンス 治療編 – 株式会社 金芳堂
序文
巻頭言
感染症クリスタルエビデンスの治療編は幸いにも好評をいただき、続編が出されることが決定した。
続編は感染制御や予防について加藤英明先生を推薦し、責任編集をお願いした。
加藤英明先生は、かつて私が所属した横浜市立大学リウマチ血液感染症内科(旧第一内科)の同門である。感染症グループではHIV診療を中心に行っていたが、当時、大学院生でもあった私は病院内の感染症コンサルテーションを始めていたところであった。その頃にリウマチグループの後期研修医として私にコンサルテーションをしてくれていたのが加藤英明先生であった。彼と診断したレプトスピラ症や腸チフスなどの症例は今でも心に残っており、そして、その後に感染症の専門家として私の後の横浜市大を背負ってくれていることは嬉しい限りである。
加藤英明先生は現在、横浜市大の感染制御部の責任者として、感染制御を主な仕事とされている。感染制御の分野では新進気鋭の1人となっている。
本書はこのような加藤英明先生の推薦による厳選された意欲ある執筆者により執筆され、加藤英明先生による細かなレビューを受けている。最後に監修をしていて私自身がとてもためになった。感染制御や感染症診療に関わる多くの方にぜひ読んでいただきたい書籍の一つである。
2019年12月
監修 岡秀昭
序
今回、クリスタルエビデンス第2弾の編集のお話をいただき、すぐに「感染対策」をテーマに考えました。感染対策は、感染症治療以上にエビデンスを確立しにくい分野です。アウトブレイクや術創感染症など、「起きない方がよい」ことが多く、発生率が少ない事例をさらにゼロに近づけるような努力、研究が多くなります。また、感染対策では病院の設備や空調、採用されている抗菌薬・消毒薬、手術器材など関与する因子が多く、また事務や清掃、滅菌など多くのスタッフが関与します。どれか一つを改善したら全体がよくなるということはほとんどありません。そのためか感染対策の現場にいると、根拠が明確でないプラクティスがたくさんあります。これまでこれでやってきたから、他院ではこうしている等の情報に基づいたやり方でよいのでしょうか。医学としてバックグラウンドが大切だと思うのです。だからこそ、クリスタルエビデンスでは、現状で分かっていること、どうしてもデータがないことを示した上で、自分ならこうする!を扱いたいと思いました。
そんな無理難題なクリニカル・クエスチョンに、多くの分担著者の方々に取り組んで頂きました。近年診療報酬にも入った抗菌薬適正使用支援チーム(AST)活動の数値的なメリット、インフルエンザやC.difficileなど検査陰性者の対応、肺以外の結核菌感染者の隔離、病気になった職員の休職期間、職員の抗体価検査と追加ワクチン接種、白衣の洗濯タイミング、術前のHIV検査など、日ごろ気になっていること、現場から聞かれる質問にお答えいただきました。これから悩まされることが増えるであろう多剤耐性菌検出者の感染対策についても、個室が足りない病院や、また介護やリハビリの現場でどう対応したらよいか章を割きました。データが不十分なので強いことは言えないという章もありました。医療施設の規模や役割によっては人や設備が足りないという現実もあります。ですが、現場からどうしますか?と聞かれたときに何か方針を答えなければなりません。筆者、編者ならこうする!というコメントを必ず入れています。本書が感染対策を専門とする医療職だけでなく、安全管理や病院運営、介護や在宅現場のスタッフのお役に少しでも立てれば幸いです。
2019年12月
加藤英明
目次
第1章 抗菌薬適正使用支援
感染症専門医、ASTがいると患者の予後はよくなるのか?
抗菌薬適正使用支援活動は病院経営に貢献するか?
抗菌薬適正使用支援チーム活動は多剤耐性菌を減らすか?
抗菌薬使用量はどのように評価するべきか? ―DOTとAUD、どちらを用いるべきか
周術期抗菌薬の投与期間は?投与の適応は?
MRSA保菌患者の手術部位感染症予防にバンコマイシン投与は必要か?
血液培養の採取数、および2セット採取率に目標はあるのか?
尿路感染症をくり返す人に抗菌薬の予防投与は有効か?
第2章 結核・インフルエンザ
インフルエンザ罹患職員の診断と、職務停止期間はどのように設定するか?
マスク着用はインフルエンザ対策に有効か?
インフルエンザ予防投薬の適応は?
皮膚結核、リンパ節結核、脊椎カリエスの術後の空気感染対策は?
どのような患者に肺結核を疑い、どのように検査、隔離を行うか?
職員はインフルエンザワクチン接種を行うべきか?
肺結核疑い症例の気管支鏡後、もしくは消化管内視鏡検査を受けた後の換気時間は?
第3章 救急・手術関連の感染対策
SARS、MERS、新型インフルエンザ、エボラウイルス病等にどのような準備をしておくか?
災害地で多い感染症は何か?
救急外来、救急処置では常にグローブ着用(ユニバーサルグロービング)をすべきか?
手術中は滅菌手袋を二重に装着するべきか?
クロルヘキシジン浴(清拭)は手術部位感染症を減らすのか?
手術室での手洗いには水道水を用いても良いか?
手術時手洗いはスクラビング法か? ラビング法か?
整形外科手術では手術用ヘルメット(バイオメット)を用いるべきか?
手術部位のイソジン水消毒は有効か?
消毒薬の二回塗りは手術部位感染症を減らすか?
第4章 手指衛生と消毒薬
消毒薬の開封後の有効期限は? 開封後いつまで使用してよいのか?
アルコール手指消毒が使用できない場合、非アルコール手指衛生剤で代用できるか?
アルコールスプレー噴霧は環境消毒に有効か?
抗菌薬入り石鹸は、普通の石鹸より効果があるか?
手指衛生消毒薬の使用量はどれくらいが適切か?
中心静脈カテーテル挿入時の消毒薬、ドレッシング材は何を用いるべきか?
中心静脈カテーテルのライン、ドレッシング材の交換のタイミングは?
中心静脈ライン、末梢・動脈ラインのロックにはヘパリンと生理食塩水、どちらを用い
るべきか?
第5章 職員/患者の感染管理
針刺し体液曝露後は全例で6ヶ月間のフォローが必要か? HBV-DNAやHCV-RNA検査はすべきか?
針刺し時のHIV予防内服はどういうときに行うべきか?
針刺し血液曝露でHTLV-1、梅毒検査は行うべきか?
術前にHIV検査を行うべきか?
職員の麻疹、風疹、水痘、ムンプスの抗体価検査とワクチン接種の適応は?
麻疹、風疹、水痘、ムンプス患者に曝露した職員/患者の対応は?
職員採用時のIGRA(T-SPOT/QFT)は必要か?また定期的にIGRA検査を行うべきか?
麻疹、水痘が疑われる患者の診察時の対策は?
下痢や腸管出血性大腸菌検出のある職員は何日間休ませるべきか?
HIV、HBV、HCV感染者は医療職として勤務可能か?
HBs抗体が低下した職員の扱いや、HBV抗体がつかない職員のB型肝炎ワクチン追加接
種は行うべきか?
免疫抑制患者/免疫抑制職員への生ワクチン接種は可能か?
溶連菌感染後、髄膜炎菌患者診察後の職員の予防投薬は?
第6章 多剤耐性菌対策
多剤耐性菌制御に紫外線、蒸気化過酸化水素などの環境除菌は有効か?
多剤耐性菌検出例は個室隔離すべきか? 個室隔離のメリットとデメリットは?
MRSA保菌患者の術前除菌は手術部位感染症を減少させるか?
C.difficile感染症では個室隔離が必要か?
C.difficile GDH抗原陽性、C.difficileトキシン陰性の時の対応は?
ノロウイルス、C.difficile感染症患者の嘔吐・トイレ使用後の清掃はどうすべきか?
MRSA、VRE、CRE、ESBL産生菌感染/保菌例では個室隔離が必要か?
第7章 病院の環境整備
疥癬の対応はどう行うのか?
トコジラミの対応はどう行うのか?
人工呼吸器関連肺炎の予防―ACE阻害薬、口腔ケア、頭部挙上、早期リハビリは予防に有用か?
歯科治療による飛沫、歯ブラシの誤使用や咬傷で肝炎等が感染することはあるか?
口腔ケアは誤嚥性肺炎、VAP、術後肺炎を減少させるか?
膀胱洗浄、定期的な膀胱留置カテーテルの交換は尿路感染症を減少させるか?
病棟では小児の面会を制限すべきか?
院内に生花の持ち込みは可能か? 浮遊病原体対策で粉塵曝露対策、もしくは隔離が必要な状況は?
養型施設、リハビリテーション施設入所者で人工デバイスが挿入されている場合の対策は必要か?
医療職の白衣は汚れているか? 白衣の交換、洗濯頻度は?
NICU等での母乳は何日間保存できるか? また、粉ミルクの調整はどのように行うべきか?
多剤耐性菌の保菌患者の養型施設、在宅、リハビリテーション施設での感染対策は?
執筆者一覧
■監修
岡秀昭 埼玉医科大学総合医療センター
■編集
加藤英明 横浜市立大学附属病院感染制御部/医学部血液・免疫・感染症内科
■執筆者(五十音順)
飯田昌樹 横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学
井口光孝 名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部
加藤大三 岡崎市民病院整形外科統括部長
加藤英明 横浜市立大学医学部附属病院感染症・血液内科講師
金井信一郎 信州大学医学部附属病院感染制御室副室長
金井威 富岡地域医療企業団公立富岡総合病院薬剤部病棟グループ室長
酒井純 埼玉医科大学病院感染症科・感染制御科助教
渋江寧 横浜市立みなと赤十字病院感染症科部長/感染管理室室長
清水博之 藤沢市民病院臨床検査科部
永井徹 横浜市立脳卒中・神経脊椎センター薬剤部
根井貴仁 日本医科大学付属病院医療安全管理部感染制御室
根本隆章 石心会川崎幸病院感染制御科
原弘士 横浜市立脳卒中・神経脊椎センター薬剤部
森伸晃 独立行政法人国立病院機構東京医療センター総合内科・感染症センター
森岡悠 名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部
森島雅世 日本医科大学付属病院医療安全管理部感染制御室
吉田明弘 福井厚生病院薬剤課薬剤課長
吉長正紘 近畿大学病院薬剤部
吉村幸浩 横浜市立市民病院感染症内科医長