よくある副作用症例に学ぶ 降圧薬の使い方
-高血圧治療ガイドライン2019対応- 第5版

    定価 3,630円(本体 3,300円+税10%)
    後藤敏和
    やまがた健康推進機構理事・山形検診センター所長
    鈴木恵綾
    山形県立中央病院糖尿病・内分泌内科医長・副科長
    A5判・272頁
    ISBN978-4-7653-1817-4
    2020年03月 刊行
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    よくある降圧薬の副作用症例をもとに解説。経験豊富な著者による本書は、降圧薬処方については比類なき1冊

    内容紹介

    降圧薬治療では、つい使い慣れた薬を処方しがちである。本書はさまざまな副作用症例を提示して丁寧な解説を加えたわかりやすさで定評のある指南書。著者が副作用の少ない降圧薬の処方を追及していく過程は、さながら専門医の診療を間近に診る臨場感に溢れており、何年にも及ぶ患者の診療は物語でもある。

    5年ぶりの改訂となる第5版では、「高血圧治療ガイドライン2019」に沿って内容を刷新。最新の情報へのupdateはもちろん、一見複雑になったガイドラインを一般臨床家がどう読み解き、どうエッセンスを吸収すればよいのかを、わかりやすく解説。また新たに「降圧薬における保険診療上の注意点」を追加。

    序文

    本書は2002年4月に初版を発行して以来、改訂を重ね2015年に第4版を発行しました。今回、日本高血圧学会から5年ぶりに改訂された「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」に合わせ、第5版を発行することになりました。18年間に5回の改訂版を発行できるということは、読者の皆様の御指示のおかげと感謝いたします。

    JSH2019では、血圧の基準や治療目標値が厳しくなり、さらに病態にあわせより細かな対応が求められるようになりました。そのため第5版においては、第3章で一見複雑になったガイドラインを一般臨床家がどう読み解き、エッセンスを吸収すればよいのか解説しました。一方、降圧薬については、ここ4年間に新たな作用機序の降圧薬の発売はなく、既存薬の種々の組み合わせの合剤が数多く発売されました。よって、副作用症例を含め症例の入れ替え・追加は多くありません。ただしガイドラインに合わせ解説を新しくしました。また今回新しく、降圧薬処方にあたり注意するべき保険診療上の注意点を付録として記載しました。

    本書が多くの臨床医、研修医、薬剤師、医療関係者の皆様のお役に立ち、ひいては患者さんがより適切な降圧薬療法を受けられますことを願っております。

    最後に、19年前一臨床家に過ぎなかった私の企画にいち早く賛同し、初版から第4版までの発行を担当していただき、昨年金芳堂を定年退職された村上裕子さん、後任として第5版を担当していただいた金芳堂編集部、一堂芳恵さんに深く感謝申し上げます。

    2020年1月
    銀白に輝く、月山、朝日連峰を仰ぎつつ
    著者を代表して 後藤敏和

    目次

    第1章 降圧薬の使い方のヒント

    第2章 高血圧患者の診察・検査
    1.目的
    2.診察の実態

    第3章 高血圧治療ガイドライン2019年版をどう読み解くか
    1.高血圧治療ガイドライン2019年版(JSH2019)のポイント
    2.血圧測定と臨床評価
    3.高血圧の管理および治療の基本方針
    4.生活習慣の修正
    5.降圧治療
    6.日常診療上重要な病態における診療指針
    7.降圧薬の併用療法および治療抵抗性高血圧に対するアプローチ

    第4章 症例から考える降圧薬の使い方
    1.血圧とは?
    2.降圧薬の作用機序

    1.Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)
    薬理作用、薬剤の特徴〔A.ジヒドロピリジン系:位置付け/副作用/Caチャンネルと薬剤/グレープフルーツジュースの影響〕〔B.ジルチアゼム:位置付け/副作用〕、Ca拮抗薬と妊娠
    [症例1a、b、c]ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬1剤のみで、長期にわたり良好な血圧調節が得られた3症例
    [症例2]長時間作用型Ca拮抗薬により下腿浮腫が出現した症例
    [症例3]ジルチアゼム(ヘルベッサー®)によりⅡ度房室ブロックを来した症例
    [症例4]血管拡張薬(硝酸薬・ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)が、経過に悪影響を与えてきたと考えられる肥大型閉塞型心筋症(HOCM)例
    [症例5]ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬により歯肉肥厚を生じた症例
    [症例6]イトラコナゾール(イトリゾール®)内服により、アゼルニジピンの血中濃度が上昇し血圧低下を来した症例

    2.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
    薬理作用、位置付け、各ARBの特徴、副作用、ARBの使い分け、投与上の注意
    1 ロサルタン(ニューロタン®)
    [症例7]オルメサルタン(オルメテック®)からロサルタン(ニューロタン®)に変更し、尿酸は低下したものの血圧が上昇してきた症例
    2 カンデサルタン(ブロプレス®)
    [症例8]ARB単剤で良好に降圧した症例
    [症例9]多剤併用にARBを追加し、著明な降圧を認めた悪性高血圧症例
    [症例10]ARB投与により、蛋白尿が著明に減少した糖尿病性腎症例
    [症例11]ARB・Ca拮抗薬の併用にサイアザイド系利尿薬を加えて良好な血圧調節が得られた症例
    3 バルサルタン(ディオバン®)
    [症例12]ARB単剤で長期にわたり良好な降圧が得られた症例
    [症例13]Ca拮抗薬とARBの併用で良好な血圧調節が得られた症例
    [症例14]ARBとCa拮抗薬の併用が著効を呈した症例
    4 テルミサルタン(ミカルディス®)
    [症例15]ARB(テルミサルタン)が血圧調節に著効を呈した透析症例
    5 オルメサルタン(オルメテック®)
    [症例16]バルサルタン(ディオバン®)からオルメサルタン(オルメテック®)に変更し著明な降圧を認めた症例
    [症例17]ARBが投与後早期から著効を呈した若年性高血圧症例
    [症例18]ARB(オルメサルタン)投与により過度の降圧を認めた悪性高血圧症例
    [症例19]ARB投与による過度の降圧により意識喪失を来したと考えられる症例
    [症例20]Ca拮抗薬とARBとの併用で良好な血圧調節が得られた症例
    6 アジルサルタン(アジルバ®)
    [症例21]早朝高血圧にアジルサルタン就寝前投与が有用であった症例

    3.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
    薬理作用、利点、欠点、副作用
    [症例22]ACE阻害薬による咳嗽をはじめ、副作用が多く発現した症例
    [症例23]ACE阻害薬により喉頭浮腫を来した症例
    [症例24]ACE阻害薬が著効を呈したレニン産生腫瘍(傍糸球体細胞腫)
    [症例25]ACE阻害薬を投与しショックとなった症例
    [症例26]消炎鎮痛薬投与によるACE阻害薬の降圧効果の減弱

    4.降圧利尿薬
    サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬、MR(ミネラルコルチコイドレセプター)拮抗薬、利尿薬とカルシウム代謝
    [症例27]サイアザイド系利尿薬による痛風の発症例
    [症例28]グリチルリチン製剤と利尿薬併用による偽性アルドステロン症例
    [症例29]利尿薬を強力なものに変更し、血圧調節が良好となった、難治性高血圧症例

    5.β遮断薬(βブロッカー)
    薬理作用、副作用と投与時の注意、心不全に対する少量漸増療法、位置付け
    [症例30]β遮断薬により心不全を来した症例
    [症例31a、b]β遮断薬により冠血管攣縮を誘発したと考えられる症例
    [症例32]β遮断薬により悪夢を生じた症例
    [症例33]β遮断薬とジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の併用で良好な血圧調節が得られた若年男性の本態性高血圧症例
    [症例34]ISAを有するβ遮断薬により、筋攣縮を来した症例
    [症例35]β遮断薬により気管支炎による呼吸困難を悪化させた症例
    [症例36]妊婦に安全とされる薬剤を組み合わせて妊娠・出産に導いた高血圧症例

    6.α1遮断薬(α1ブロッカー)
    副作用、位置付け、注意点
    [症例37]α1遮断薬によるファーストドーズ・フェノミナンと思われた症例

    7.MR(ミネラルコルチコイドレセプター)拮抗薬
    薬理作用、スピロノラクトンとエプレレノンの違い、治療抵抗性高血圧に対する有用性、新しいMR拮抗薬エサキセレノンについて
    [症例38]スピロノラクトンが著効を呈した特発性アルドステロン症例
    [症例39]エプレレノンが著効を呈した原発性アルドステロン症例
    [症例40]スピロノラクトンが著効を呈し、エプレレノンに変更したところ血圧の上昇を認めた原発性アルドステロン症例
    [症例41]エプレレノン追加投与が降圧に著効を呈した症例
    [症例42]エプレレノン追加投与が著効を呈し、サイアザイド系利尿薬が中止できた症例
    [症例43]MR拮抗薬・ARB・β遮断薬の併用で高カリウム血症を来し、洞停止に至った症例

    8.中枢性交感神経抑制薬
    薬理作用、副作用、投与時の注意、利点
    [症例44]エサキセレノン(ミネブロ®)により過度の降圧を来した機能的単腎、経皮的腎動脈形成術(PTRA)後の難治性高血圧症例
    [症例4]高血圧・低カリウム血症・腎機能障害・水腎症を合併し、エサキセレノン(ミネブロ®)を用いて術前コントロールを行った原発性アルドステロン症(PA)の一例
    [症例46]αメチルドパによる肝障害例
    [症例47]αメチルドパによる発熱

    9.直接的レニン阻害薬
    [症例48]DRIを含む降圧薬多剤併用で、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の強力な抑制を行い、良好な経過をたどった可逆性白質脳症(PRES)の症例

    10.ラウオルフィア製剤

    11.ARB/サイアザイド合剤、ARB/Ca拮抗薬配合剤
    ARB/サイアザイド合剤、ARB/Ca拮抗薬配合剤、ARB/Ca拮抗薬/サイアザイド合剤
    [症例49]Ca拮抗薬とARBの併用で降圧不十分で、ARBをARB/サイアザイド合剤に変更し良好な血圧調節が得られた症例
    [症例50]ARBとCa拮抗薬併用で降圧不良の症例に、ARBをロサルタン・ヒドロクロロチアジド合剤(プレミネント®)に変更したところ日中の過度の降圧を認めた症例
    [症例51]少量のサイアザイド系利尿薬追加により尿酸値が上昇し、プレミネント®に変更後低下した症例

    12.多剤併用
    [症例52]多剤併用による降圧により臓器障害が軽快し、予後が改善された悪性高血圧症例

    第5章 早朝高血圧の治療
    1.早朝高血圧の病態

    2.早朝高血圧の治療についてのこれまでの報告
    1.α1遮断薬
    2.中枢性交感神経抑制薬
    3.長時間作用型Ca拮抗薬
    4.RA系阻害薬

    3.早朝高血圧の治療法-著者の考え-
    [症例53]早朝高血圧にアムロジピン就寝前追加投与が著効を呈した症例
    [症例54]早朝高血圧にアムロジピンの就寝前分割投与が著効を示した症例
    [症例55]早朝高血圧に就寝前のニフェジピン徐放錠(アダラートCR®)追加投与が著効を呈した症例
    [症例56]早朝高血圧に対し、ARBを3種変更するも無効で、アゼルニジピンの就寝前投与が著効を呈した症例
    [症例57]早朝高血圧にドキサゾシン就寝前追加投与が著効を呈した症例
    [症例58]モーニング・サージにドキサゾシン(カルデナリン®)の就寝前投与が著効を呈した症例
    [症例59]ドキサゾシンの就寝前投与が無効であった早朝高血圧にグアンファシン(エスタリック®)の就寝前投与が著効を呈した症例
    [症例60]早朝高血圧にテルミサルタン就寝前分割投与が有効であった症例

    第6章 高血圧治療における漢方薬の役割
    [症例61]抑肝散と八味地黄丸(はちみじおうがん)の内服により安定した血圧コントロールとなった症例
    [症例62]葛根湯投与により、著明な頭痛が改善し、血圧コントロール良好となった高血圧切迫症の例
    [症例63]柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)投与により、不安感と血圧上昇発作が改善した症例

    付録1 主な降圧薬(2020年1月現在)
    付録2 著者(後藤)の頻用薬
    付録3 降圧薬における保険診療上の注意点
    参考図書
    索引

    執筆者一覧

    ■著者
    後藤敏和 やまがた健康推進機構理事・山形検診センター所長
    鈴木恵綾 山形県立中央病院糖尿病・内分泌内科医長・副科長

    トピックス