こんな対応はNG!非専門医のためのリウマチ・膠原病診療
こんな対応になっていませんか?リウマチ・膠原病診療のNG事例!
内容紹介
非専門医を対象に、診療時の適切な対応や専門医への紹介のタイミングなどについて、NG事例をもとに必要ポイントを解説した一冊。古い知識や経験則に基づいて行われる不適切な診療の結果として、患者が不利益を被った状態で専門医に紹介されてくるケースが頻繁にあります。こうした現状を打開するための正しい対応例を伝授します!
序文
監修のことば
関節リウマチ・膠原病関連の書籍は少なくはありません。執筆者の多くは、名前の通った所謂大御所の先生方です。
そんな中で、この『こんな対応はNG!非専門医のためのリウマチ・膠原病診療』はひと味違うユニークな本です。
まず、執筆者は単独で、当科の優秀な中堅医師の和田琢です。どちらかと言えば歯に衣着せずに物事を語る専門医で、情報発信能力は高いです。
私達のように専門診療施設にいる専門医は、日常診療において非専門医の先生方と様々な形で診療連携をさせていただいており、とてもお世話になっています。一方、連携の有り無しを問わず専門医から見てNGと感じる場面も稀に経験します。本書の主旨は、和田医師が日常診療を通してNGと感じたことを列挙し、その対策や専門医からの希望を根拠やエビデンスを交えて述べるという、真新しい企画です。非専門医の先生方、研修医や専攻医の先生方、そして診療に携わるメディカルスタッフの方々にとっては、日常診療において参考になるとともにもしかしたら耳の痛い内容もあるかも知れません。しかし、間違いなく皆さんの診療にプラスになる内容ですので、その点ご容赦戴きたいと思います。
単独執筆なので思い通りにワープロが進み過ぎてレッドゾーンに突入しそうな部分もあり、監修者を引き受けてしまった私は赤ペンで注文を付けたこともありますが、ほとんどは執筆者の意向を尊重しました。和田医師は私達専門医の代弁者でもあるからです。
ローカルな話題も出て来ますがこれもご愛嬌で、埼玉県西部地域への小旅行気分でお読み下さい。
この本を手に取って戴いた方にとって、必ずやお役に立つことお約束します。
令和2年3月吉日
埼玉医科大学リウマチ膠原病科
三村俊英
はじめに
この度、縁あって『こんな対応NG!非専門医のためのリウマチ膠原病診療』出版の機会をいただき、大変光栄に思っております。
埼玉県は「日本一の医療過疎県」であり、現在に至るまで長らく、人口当たりの医師数が全国最下位の状態が続いています。同時にリウマチ膠原病内科医も埼玉県は人口を考えれば非常に不足しております。私が普段診療に携わっている埼玉北西部においては、数十万人規模の地域において、広範囲に渡りリウマチ膠原病内科医の常勤医が不在となっているのが実情です。
私はかつて、ゼリーフライ、忍城、さきたま古墳群で有名な行田市でリウマチ膠原病の専門外来を行っていました。行田市も近隣都市を含めて常勤のリウマチ膠原病内科医が不在であり、大学病院も遠方であることから、リウマチ膠原病診療を行うにあたっては厳しい環境でした。そして、リウマチ膠原病内科医が不足している環境から、非専門医の方々の役割が非常に大きいことを実感しました。しかし、リウマチ膠原病という専門性の高さから、対応に戸惑われた非専門医の方々が多かった印象でした。私も専門外の内容についての対応の難しさは理解しておりますし、決して責められることではありません。しかし、やはり患者さんの不利益になることは避けなければならず、そのために非専門医の方々がどうあるべきかを考えるようになりました。
近年、関節リウマチは治療の進歩により、疼痛や変形を来すことなく生活出来るまでに改善することが期待出来るまでに至っています。関節リウマチ以外の膠原病も診断や治療は着実に進歩し、生命予後やQuality of Lifeも改善してきています。しかし、それはあくまで最初から最後まで理想的な診療が行われることが前提であり、専門医が不足している現状から、真の意味での理想的なリウマチ膠原病診療の実現は十分出来ていないことがあります。
「医療は進歩しても普及しなければ意味がない」と私は日頃から感じています。留学から帰国した後は、行田市の隣町で、大都市でありながらリウマチ膠原病専門医不足が深刻な熊谷市と、山に囲まれた都市であり、医療過疎が課題となっている秩父市で外来を行い、非専門医におけるリウマチ膠原病診療のあり方を模索していき、本書が完成いたしました。本書により非専門医の方が適切にリウマチ膠原病患者さんと向き合い、一人でも多くの方を救うことが出来れば心から喜ばしく思います。
また、本書を監修いただきました三村俊英先生を始め、埼玉医科大学リウマチ膠原病科の医局員の方々には正しいリウマチ膠原病診療についてご指導いただき、それに基づいて多くの経験を積むことが出来た結果、本書が実現したものと思っております。
この場を借りまして厚く御礼を申し上げます。
令和2年3月吉日
埼玉医科大学リウマチ膠原病科
和田琢
目次
その1 リウマチ膠原病に対する考え方と初期対応のNG
NG1 関節リウマチは関節破壊を進行させては×!
NG2 関節リウマチは痛みを抑えるだけでは×!
NG3 関節が痛い=関節リウマチによる関節炎と決めては×!
NG4 副腎皮質ステロイドは全ての膠原病の治療薬と考えるのは×!
NG5 リウマチ膠原病を疑ったら「とりあえずステロイド」は×!
NG6 感染症と悪性腫瘍の精査を行う前に強力な免疫抑制療法を施行しては×!
NG7 B型肝炎ウイルス感染を確認せずに免疫抑制療法は×!
NG8 潜在性結核の有無を確認せずに免疫抑制療法は×!
NG9 専門外だからという理由で診療拒否は×!
NG10 免疫抑制薬投与中に悪性腫瘍が見つかった場合は専門医に報告しないのは×!
その2 血液検査、画像検査の解釈のNG
NG11 関節リウマチを血液検査だけで診断しては×!
NG12 レントゲンで異常がなくても関節リウマチを否定しては×!
NG13 炎症反応が正常だから関節炎がないと言っては×!
NG14 膠原病の診断は抗核抗体や自己抗体が全てと考えては×!
NG15 自己抗体の抗体価が高い=必ず活動性が高いと考えるのは×!
その3 関節リウマチ診療のNG
NG16 関節が痛い=炎症が残っていると決めつけては×!
NG17 禁忌事項を確認せずにメトトレキサート投与は×!
NG18 専門医と相談せずに生物学的製剤治療は×!
NG19 関節リウマチに対して副腎皮質ステロイドを漫然と長期間使用するのは×!
NG20 関節リウマチに対してレントゲンのフォローを行わないのは×!
NG21 本人の希望を無視して治療を行うのは×!
NG22 リウマチ性多発筋痛症の診断を安易に行っては×!
NG23 高齢者の関節リウマチは若年者と同様に考えては×!
その4 副腎皮質ステロイド治療のNG
NG24 骨粗鬆症対策を行わないのは×!
NG25 血糖値は「食前」だけで評価しては×!
NG26 低用量を目指して減量しなければ×!
NG27 一律にプレドニゾロン換算5mg/日ずつ減量するのは×!
コラム
リウマチ膠原病診療の夢
「スワンネック変形」という用語は 「死語」に出来るか!?
関節エコーがもっと普及して欲しい
日本一の医療過疎県で理想の医療を展開したい
医療連携の重要性に目を向けて欲しい
専門医からのメッセージ
リウマチ膠原病診療で何よりも大事なのは
「患者さんの病気や治療に対する理解」
関節エコーは診察技術向上にも有用
関節を触らずして関節リウマチ診療はあり得ない
抗核抗体測定はまず「FA法」で
大事なことは「緊急時の対策」を決めておくこと
本当は生物学的製剤に頼らない方法を模索すべき
副腎皮質ステロイド投与にあたり必要なことは「患者さんへの十分な説明と理解」
レントゲンフォローは病気の理解や治療に対する意識向上につながる
高齢RA診療は地域特性を知ることも重要
骨粗鬆症対策は極めて重要です
食後血糖でのスクリーニングが浸透して欲しい
副腎皮質ステロイドの副作用は実感しにくい
日々思うこと
かつての膠原病内科医は偉大です
副腎皮質ステロイドは「とっておきの薬」!?
リウマチ膠原病診療で重要なのは「バランス感覚」
検査漏れを防ぐためには
悪性腫瘍合併例は本当に悩ましい
リウマチ診療はまだまだ発展出来る
膠原病診療に対する世間の認識は
リウマチ膠原病診療が浸透しない背景にある専門医不足
医療経済にどう向き合うべきか
リウマチ性多発筋痛症という病気は存在するか?
膠原病の名医が成せる技
トピックス
■解説動画
著者の和田琢先生が、本書の解説動画を作成くださいました。制作・誕生秘話から本書の各論に至るまで、詳細に解説してくださっています。第0回(?)というべき、「出版までの道のり」を下記にご紹介いたします。和田琢先生ののtwitterアカウントを是非ともフォローいただき、以降の更新情報をご確認ください。
リウマチ膠原病内科医 タックマンさん (@takkman_rheum) / Twitter
https://twitter.com/takkman_rheum
【誕生秘話】こんな対応はNG!非専門医のためのリウマチ膠原病診療出版までの道のり – YouTube