作業療法士のための 超実践!シングルケースデザイン 導入から統計手法まで すぐに使えるExcel・Rのサンプルデータ付き
著 | 丁子雄希 |
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富山リハビリテーション医療福祉大学校 専任教員 |
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作業療法士よ!単一事例研究(シングルケースデザイン)でエビデンスを構築しよう!
内容紹介
近年、作業療法士・理学療法士ともに、エビデンスに基づく実践が求められている。しかし、そのエビデンスの構築のために、エビデンスレベルの高いRCTなどの大規模な研究を始めることは、一臨床家にとっては、ほぼ不可能に近い。そのようななか、一事例からでも研究を行える「シングルケースデザイン(単一事例研究)」が注目を集めている。
本書は、そのシングルケースデザインの臨床への導入から、効果判定に用いる統計的手法までの情報を、すぐに実践できるよう現場目線でまとめた。統計的手法については、Excel・Rの演習を設けすぐに活用できるようサンプルデータを用意している。実践例として、シングルケースデザインを用いた著者の研究も掲載した。本書を読んで、シングルケースデザインをやってみよう!
■サンプルデータ■
本書で解説しているExcelのデータやRのコードは、下記リンクよりダウンロードいただけます。
https://www.kinpodo-pub.co.jp/1842-6_sample_data/
序文
■はじめに■
あなたは、シングルケースデザインという研究手法をご存知だろうか?
シングルケースデザインは、一事例のような少ないサンプル数で比較対照群を設定せずに作業療法の介入効果を立証できる特徴をもつため、作業療法のエビデンス構築の一助になると期待されている。しかし、実際はシングルケースデザインを使った研究はほとんど進歩していない。
私はこれまで事例報告や事例研究に関する講演や論文執筆を行ってきたが、シングルケースデザインを導入するうえで実践的な内容が記載されている教材が少ないことを感じてきた。また、シングルケースデザインで使用する統計的手法は臨床家にとって馴染みがなく、特定の統計ソフト(統計ソフトRなど)を使用しないと解析できないことが多い。
そのため、臨床現場では統計学や研究法の勉強をしつつ、多くの書籍や論文を寄せ集め、必要な情報を取捨選択して用いる必要があった。
本書は、臨床家がシングルケースデザインを導入しやすいように、実践的な内容を厳選してまとめたものである。可能なかぎり理論的な内容や文章が多くならないように配慮して構成した。
シングルケースデザインって結局どうやってやるの?
直感的にわかりやすい、臨床ですぐ使える本はないの??
そんなあなたにとって本書が参考になれば幸いである。
2020年7月
丁子雄希
■あとがき■
ベテラン
「今年も学会に発表する人がいなくて、誰かいない?新人に発表させてよ」
「病院では中堅クラスのセラピストがいなくて十分な新人教育ができないよ」
「最近、質が低下した新人が増えててね。とても発表どころじゃないよ」
「経営陣からは、単位の取得だけを求められてるからね……」
「事例発表ならできるけど、研究になるとちょっとね……」
新人
「365日リハで忙しいのに……休日にまで学会抄録をつくりたくないよ」
「大勢の前で発表するのは苦手だな」
「以前施設の中で発表したときに、先輩に怒られて嫌だったな。もう発表したくないな……」
皆さんはこんな声を聞いたことがないだろうか?
上記はあくまで一例だが、このようなさまざまな要因が絡み合って、臨床家が作業療法のエビデンスの構築に貢献しづらい環境になっているのではないだろうか。
著者が某学会を運営したときには、論理構成が首尾一貫しておらず主観のみでまとめた報告や施設紹介に留まった報告が散見され、学会レベルにまったく達していない発表を数多くみた。
私たちは「作業療法」の専門家であるため、作業の効能を熟知している。そのため、クライエントに作業の効能を提供するだけでなく、「自身」にも働きかけられる強みをもっている。
「日々淡々と作業療法を提供していないだろうか?」
「問題は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」(踊る大捜査線風)
「遅すぎることはありません。さあ、今こそ臨床家と研究者が一丸となって作業療法をさらに発展させようじゃありませんか」
「よーし、シングルケースデザインを始めてみよう」
本書が臨床家の皆さんの気持ちを奮い立たせ、シングルケースデザインの導入の足掛かりになれば幸いである。
丁子雄希
目次
第1章 シングルケースデザイン概論
1 シングルケースデザイン
2 シングルケースデザインの種類
3 ベースライン期
4 シングルケースデザインのエビデンス
5 作業療法分野におけるシングルケースデザインの紹介
6 シングルケースデザインの倫理審査
第2章 効果判定
1 目視法による効果判定
目視法
水準と勾配の算出方法
標準偏差帯法
2 統計的手法を用いた効果判定
尺度
パラメトリック検定
≫ 系列依存性(自己相関)
≫ 自己相関の算出方法
≫ 正規性
≫ t検定
≫ 分散分析、多重比較
ノンパラメトリック検定
≫ Mann-Whitney検定、Brunner-Munzel検定
≫ 並び替え検定(Randomization検定、Permutation検定)
≫ Friedman検定、Kruskal-Wallis検定
効果量
≫ 比率に基づく効果量(PND)、平均値差に基づく効果量(SMD)
≫ PNDと類似する効果量(PZD、PEM)
≫ 効果量の基準
第3章 実際の流れをイメージしてみよう
1 全体の流れ
2 おわりに
付録
統計ソフトの紹介
Rの基本的な使い方