臨床に役立つ消化器病理 ギュッと1冊!まるごとBOOK -Web動画付-
日常臨床に本当に必要な「消化器病理の知識と知恵」のすべてが1冊に!検体処理、採取方法など、テンポよく編集されたカンタン視聴のweb動画付
内容紹介
本書は消化器病理の基礎の基礎から臨床までを、写真や図をふんだんに使って解説し、病理検体の扱いで分かりにくいポイントなどを、web動画で補強した「超」入門書になります。
第1章「病理のことばをつかむ」、第2章「病理診断の流れをつかむ」、第3章「臓器の正常をつかむ」、第4章「疾患のポイントをつかむ」など病理診断に関する基礎知識部分では、しっかりとポイントを押さえられ、第5章「診療力のアップをねらう!」で、臨床像と病理像の詳細対比の仕方について、著者らの施設での経験や蓄積から解説し、実際の症例で、その一端を疑似体験してもらえるような工夫がされています。
より実践的で、臨床に役立つエッセンスを、30本の動画とともに、まるごとギュッとまとめました。病理や検体処理を敬遠していた人たちにこそ、手に取っていただき、明日からの臨床に役立てていただきたい1冊です。
序文
日常臨床に本当に必要な「消化器病理の知識と知恵」のすべてが1冊に
本書を手に取っていただいた皆さんの中には、すでに何冊かの関連する分野の病理学書をお持ちの方もいるでしょう。もしくは、これから消化器の専門家になっていくために、また後輩の指導に使える本はないかと適当な病理学書を探していた人もいると思います。あるいは、カンファレンスや研究会で病理のことがよく分からなかったり、検体処理のことを知りたくて、必要に迫られて手に取った人もいらっしゃるかも知れません。
そうした全ての方に、本書は大きな力になると信じています。
なぜなら、本書に書かれた「臨床に役立つ消化器病理」の内容は、単なる消化器病理学書ではなく、単なるアトラスでもなく、単なる検体処理マニュアルでもありません。本書は、これまでに出会ってきた、多くの前向きな臨床家たちとの対話が基になっており、彼ら/彼女らの顔を思い浮かべながら、より実践的で、臨床に役立つよう、それらのエッセンスをまるごと1冊にギュッとまとめたものだからです。
第1章「病理のことばをつかむ!」、第2章「病理診断の流れをつかむ!」、第3章「臓器の正常をつかむ!」、第4章「疾患のポイントをつかむ!」などでは、いわゆる病理診断に関する基礎知識の部分として、しっかりポイントを押さえて書きました。そして、第5章の「臨床力のアップをねらう!」では、臨床像と病理像の詳細対比の仕方について、私たちの施設での経験や蓄積から解説し、実際の症例(胃粘膜病変と膵結節性病変)で、その一端を疑似体験してもらえる様にしました。
さらに、本書のもう一つの大きな特徴でもありますが、これらの本の内容をしっかりイメージして頭に入れてもらうために、写真や図をふんだんに使いました。特に病理検体の扱いのポイントなどは、写真や図でもわかりにくいところがあるため、短くテンポの良いweb動画で補強しました。このような病理の本は私たちが知る限りまだ見たことがありません。ぜひ、これまで病理を敬遠していた人たちにも、使っていただけたらと心から思います。
私が、自分の中で「臨床に活かす/役立つ病理プロジェクト」と称して活動を始めて、早いもので15年ほどになりました。この間、数冊の書籍も世に送り出してきましたが、うれしいことに、これらを見た消化器科の先生方が学内外から病理診断の研修に来て下さるようにもなりました。今では、そういう「病理も分かる」先生方が、その後、臨床現場で活躍しているのを聞くのが何よりの楽しみにもなっています。そしてそういう人たちの助言などがベースとなり、これまでの書籍を補足、補強する意味でも、さらに“臨床病理連携”をパワーアップさせるものとして本書に取り組もうと思った大きな要因となりました。表紙もそんな思いを表しています。
さて、ここで、本書のもう一人の著者である池田恵理子を紹介しておきます。彼女は、もともと消化器内科医ですが、臨床をやっていく中で病理の重要性に気づき、病理診断部の門を叩いてくれた一人です。1年間の病理診断研修の後、大学院にも入り、現在は、週の1日半はEUS-FNAも含め内視鏡検査などに携わり、残りの時間で病理診断や病理学的研究を行っています。臨床と病理の間を元気に行き来しながら、一方で両者の思考の違いや“壁”などを最もよく知る医師の一人だともいえます。そういうこともあり、今回、企画、執筆の最初から携わってもらいました。現在、病理診断部にやや重心を置く中で「同僚に伝えたい思い」、「病理医に伝えたい思い」が溜まっていたようでもあり、次々にアイデアを出してくれました。動画を入れたのも池田のアイデアであり、撮影、編集までこなして、最終的には30本の動画を投入することになっていました。共著者ながらあっぱれの仕事ぶりだったと思います。
また、池田の熱意に巻き込まれて(笑)、様々に協力いただいた方々(下記)には、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。また今後もよろしくお願いします。
臨床内容の助言(当院消化器内科三浦義正氏、牛尾純氏)、動画および写真撮影協力(同消化器内科竹澤敬人氏、牛尾純氏、同病理診断部坂口美織氏、安藤梢氏、栁田美樹氏、他池田真理子氏)、他、すべてのお名前を書けませんが、当院消化器内科、消化器外科、内視鏡部、星総合病院 消化器内科そして病理診断部などの多くの医師・技師の方々にお世話になりました。
最後に、私の前著を読んでお手紙を下さり、今回の企画を形にして下さった(株)金芳堂編集部の藤森祐介氏、我々の思いを汲んで丁寧に編集し完成させて下さった河原生典氏をはじめ編集部の皆様にお礼を申し上げます。お世話になりました。
さあ、それでは、今すぐにでも、この本を読み進め、動画を見て、明日からの臨床に役立てて行って下さることを願っております!
2020年11月
著者を代表して 福嶋敬宜
目次
第1章 病理のことばをつかむ! コミュニケーションの基本はことばから
01 病理・細胞診検体に関するKey Words
02 病理・細胞診標本作製に関するKey words
03 術中迅速診断に関するKey words
04 病理診断に関するKey words①
05 病理診断に関するKey words②
06 病理診断に関するKey words③
07 病変の肉眼所見に関するKey words
08 病変の肉眼所見に関するKey words-消化管
09 病変の肉眼所見に関するKey words-充実臓器
10 病変の組織所見に関するKey words
11 病変の組織所見に関するKey words-炎症
12 病変の組織所見に関するKey words-腫瘍①
13 病変の組織所見に関するKey words-腫瘍②
14 細胞診に関するKey words①
15 細胞診に関するKey words②
第2章 病理診断の流れをつかむ! 顕微鏡標本になるまでの流れと各病理検体の“あれこれ”
総論 提出された病理検体が顕微鏡標本になるまで
01 病理組織標本作製までの流れ
02 術中迅速診断用の凍結組織標本作製における流れ
03 細胞診検体作製における流れ
各論 各病理検体で学ぶ手順・流れと“あれこれ”
01 内視鏡生検
02 超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)
03 肝生検
04 内視鏡的腫瘍切除
05 外科切除(共通事項)
06 外科切除 (胃)
07 外科切除 (大腸)
08 外科切除 (肝臓)
09 外科切除 (膵臓)~膵頭十二指腸切除~
10 外科切除 (膵臓)~膵体尾部切除~
第3章 臓器の正常をつかむ! 異常を理解するための正常組織像の復習
01 食道
02 胃および食道胃接合部
03 十二指腸(乳頭部を除く)・小腸
04 大腸(盲腸,虫垂,結腸,直腸,肛門)
05 肝臓
06 胆道・Vater乳頭部
07 膵臓
第4章 疾患のポイントをつかむ! 消化器病理を理解する最重要病変35
01 ウイルス性食道炎と真菌性食道炎
02 食道重層扁平上皮異形成と上皮内癌
03 バレット食道と食道胃接合部癌
04 萎縮性慢性胃炎
05 胃腺腫
06 胃腺癌
07 胃MALTリンパ腫
08 胃粘膜下腫瘍
09 小腸濾胞性リンパ腫
10 潰瘍性大腸炎
11 クローン病
12 虚血性腸炎
13 顕微鏡的大腸炎
14 大腸ポリープ
15 大腸鋸歯状病変
16 大腸神経内分泌腫瘍
17 原発性胆汁性胆管炎
18 自己免疫性肝炎
19 アルコール性肝障害
20 非アルコール性脂肪性肝疾患
21 ウイルス肝炎
22 肝細胞癌
23 肝内胆管癌
24 硬化性胆管炎
25 肝外胆管癌
26 ファーター乳頭部腺腫/腺癌
27 浸潤性膵管癌
28 浸潤性膵管癌の亜型
29 膵神経内分泌腫瘍
30 膵腺房細胞癌
31 膵漿液性嚢胞腫瘍
32 充実性偽乳頭状腫瘍
33 膵管内腫瘍
34 膵粘液性嚢胞腫瘍
35 自己免疫性膵炎
第5章 臨床力のアップをねらう! 実践! 臨床像と病理像の詳細対比
01 実践! 画像所見と病理所見の対比のプロセス
02 実践! 臨床病理カンファレンス 胃ESD症例
03 実践! 臨床病理カンファレンス 膵臓の結節性病変