実習にも役立つ人体の構造と体表解剖
著 | 三木明徳 |
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神戸大学名誉教授/医療法人社団慈恵会神戸総合医療専門学校学校長 |
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内容紹介
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実習にも役立つ人体の構造と体表解剖(第2版) – 株式会社 金芳堂
著者自ら作成した図版を使用し、わかりやすく解説した。「1章 身体の概要」では身体の区分や基準線、解剖学的表現など、臨床的にも必要な事項を記載。「2章 体表解剖」では、体表から見えない内臓の位置や大きさは骨性指標を手掛かりにして知ることができる。骨性指標の触察は患者さんの身体に触れる多くの医療職種者にとって必要不可欠な技能である。骨格筋については起始、停止、走行、神経支配、作用のほかに触察法や筋力検査法を記載。「3章 肉眼解剖」は人体解剖学の実習マニュアルである。見学実習において、目の前の臓器がどのようなプロセスで剖出されたかを知ることによって、その臓器と他の臓器との位置関係をより深く理解できる。「4章 中枢神経」では脊髄や脳の構造を理解する基本的事項である。「5章 骨格筋の発生」は骨格筋と末梢神経の関係を簡潔に記載してある。
序文
昭和の時代、医師、歯科医師、薬剤師を除くコメディカル医療職者は、主として専門学校や3年制の短期大学で養成されていた。しかし、平成の時代に入ると、コメディカル教育が4年制の大学でも行われるようになり、大学院教育も始まった。これは、日進月歩する医療を支えるためには、チーム医療の中で、コメディカル医療職者にも幅広い知識と高度な技能が求められるようになってきたことを物語っている。私が神戸大学医学部保健学科で解剖学教育を担当するようになったのは、阪神淡路大震災の直後で、コメディカル教育の高等化が本格的に始まった頃である。
医学部保健学科に着任した私は、解剖学教育に協力してくれる理学療法学、作業療法学、検査技術科学、看護学の若い教員たちとともに、それぞれのコメディカル教育にはどのような解剖学が必要かを話し合った。そして、講義では全身臓器を対象に、人体の構造を生理学や病理学、臨床医学と関連づけて学び、実習ではそれぞれの専門領域に必要な事項を、より詳しく理解することを目指すことになった。その頃、私達が西村書店から出版した「からだの構造と機能」は、このような観点から書かれたドイツの教科書を翻訳したものである。それ以降、同じような観点に立って書かれた解剖・生理学の教科書が次々と刊行されるようになった。しかし、コメディカルの教育課程では解剖学教育に使用できるコマ数が少ないため、教科書に記載できる内容も限られてくる。本書はこれを補うために、神戸大学医学部保健学科における解剖学実習用の資料として作成されたテキストである。
本書は5つの章から構成されている。第1章の「身体の概要」では、身体の区分や基準線、解剖学的表現など、解剖学実習だけでなく臨床的にも必要な基本事項を記載している。また骨格系、脈管系、末梢神経系をここにまとめたのは、これらは局所解剖ではなく、全身的に理解する必要があると考えたからである。第2章の「体表解剖」では、骨や筋、内臓の体表解剖を記載している。体表からは見えない内臓の位置や大きさは、骨性指標を手掛かりにして知ることができることから、骨性指標の触察は、臨床の現場で患者の身体に直接触れる多くの医療職種者にとって必要不可欠な技能である。また骨格筋については、起始・停止、走行、支配神経、作用の他に、触察法や筋力検査法を記載している。これらは特に理学療法や作業療法を学ぶ学生には必須の事項である。第3章の「肉眼解剖」は人体解剖学実習のマニュアルである。多くの医療系大学や専門学校では、医学部や歯学部の学生によって剖出された臓器を観察する見学実習が行われているが、目の前にある臓器がどのようなプロセスで剖出されたかを知ることによって、その臓器と他臓器との位置関係をより深く理解できるはずである。第4章の「中枢神経」では脊髄や脳の構造を理解する上で必要な基本事項を記載している。今日ではCTやMRIによって、脳内部の詳細が画像として手に取るように見えるようになってきたが、これらはあくまでも平面的であり、脳の内部構造や立体構造を理解して、初めて読影が可能になる。第5章の「骨格筋の発生」は付録的資料として作成したものである。実は、骨格筋と末梢神経の関係には「法則」のようなものがあり、これは筋の由来や、ヒトの進化に伴って起こったであろう、筋の変遷を理解する手掛かりを提供してくれる。また、末梢神経の分布パターンがなぜこのようになったのかを解き明かすヒントが隠されている。
この手作り実習書は十数年の歳月をかけ、毎年加筆と修正を重ねてここまでになった。しかしまだまだ完成品ではなく、これまで協力してくれた仲間達の力を借りて大改訂を行うべく、現在計画が進められている。
学生の経済的負担を少しでも軽くするために、この実習書は出版せず、印刷業者に印刷と製本を依頼し、学生には実費で配布していた。しかし口コミで使用希望者が次第に増え、個人レベルで提供するのが困難になってきた。そこで本年、私が神戸大学を定年退職したのを期に、株式会社金芳堂に出版をお願いすることにした。金芳堂のスタッフの方々には、この趣旨をご理解いただき、最大限の低価格化にご尽力を賜った。心より感謝申し上げます。
本書が、コメディカル医療職を目指して、解剖学を学んでいる学生の皆さんに、少しでもお役に立てば、望外の喜びです。
平成28年12月吉日
さぬき明徳塾にて
三木明徳
目次
1章 人体の概要
1 身体の区分と解剖学的表現
1.1 人体の特徴
1.2 身体の区分
1.3 解剖学的表現
2 全身の骨格
2.1 頭蓋骨
2.2 脊柱
2.3 胸郭
2.4 上肢の骨
2.5 下肢の骨
3 全身の動脈と静脈
3.1 動脈系
3.2 静脈系
3.3 胎生期の循環系
3.4 リンパ系
4 末梢神経系
4.1 脳神経
4.2 脊髄神経
4.3 自律神経系
2章 体表解剖学実習
5 頭頚部の体表解剖
5.1 頭頚部の表面観察
5.2 頭頚部の骨性指標
5.3 頭部筋の触察
5.4 頚部筋の触察
6 体幹の体表解剖
6.1 体幹前面の観察
6.2 体幹前面筋の触察
6.3 体幹後面の観察
6.4 体幹後面筋の触察
6.5 内臓の体表投影
7 上肢の体表解剖
7.1 上肢の概要
7.2 上肢の骨性指標
7.3 上肢筋の触察
7.4 手の機能
8 下肢の体表解剖
8.1 下肢の概要
8.2 下肢の骨性指標
8.3 下肢筋の触察
3章 人体解剖学実習
9 体幹前面の解剖
9.1 体幹前面の観察
9.2 胸部筋の解剖
9.3 腹部筋の解剖
10 頭頚部の解剖
10.1 頚部の体表解剖
10.2 頚部の解剖
10.3 頭部の体表解剖
10.4 顔面の解剖
10.5 頭蓋内の解剖
11 腹腔および腹部内臓器の解剖
11.1 腹膜腔の開検
11.2 消化管の摘出と観察
11.3 摘出した腹部臓器の観察
12 体幹後面の解剖
12.1 体幹後面の体表解剖
12.2 体幹後面筋の解剖
12.3 頭頚部後面の解剖
12.4 環椎後頭関節と頭部離断
12.5 頭頚部内臓の解剖
13 胸腔および胸部臓器の解剖
13.1 胸腔の開検
13.2 肺の摘出と観察
13.3 縦隔の解剖
13.4 摘出した心臓の解剖
14 上肢の解剖
14.1 上肢の体表解剖
14.2 上肢前面の解剖
14.3 上肢後面の解剖
15 下肢前面の解剖
15.1 下肢前面の体表解剖
15.2 前大腿部の解剖
15.3 前下腿部の解剖
15.4 足背部の解剖
15.5 骨盤壁の解剖
16 後腹壁と骨盤内臓器の解剖
16.1 後腹壁臓器の解剖
16.2 会陰の解剖
16.3 骨盤腔の解剖
16.4 摘出した骨盤内臓器の観察
16.5 男性生殖器の解剖
16.6 女性の泌尿生殖器の解剖
17 下肢後面の解剖
17.1 下肢後面の体表解剖
17.2 殿部の解剖
17.3 後大腿部の解剖
17.4 後下腿部の解剖
17.5 足底部の解剖
18 頭頚部内臓の解剖
18.1 咽頭の観察と解剖
18.2 口部の解剖
18.3 口蓋の解剖
18.4 鼻部の解剖
18.5 喉頭の観察と解剖
19 関節と靱帯の解剖
19.1 体幹の関節
19.2 上肢の関節
19.3 下肢の関節
20 感覚器の解剖
20.1 視覚器の解剖
20.2 聴覚・平衡器の解剖
4章 中枢神経系
21 中枢神経系
21.1 中枢神経系の概要
21.2 脊髄
21.3 脳幹と小脳
21.4 間脳
21.5 終脳
21.6 脳の被膜と脳室系
21.7 中枢神経系の血管
22 神経伝導路
22.1 反射弓
22.2 求心性伝導路
22.3 遠心性伝導路
5章 骨格筋の発生と神経支配
23 骨格筋の発生と神経支配
23.1 骨格筋発生の概要
23.2 頭頚部筋の発生
23.3 体幹筋の発生
23.4 体肢筋発生の概要
参考文献
索引