内科病棟・ERトラブルシューティング
著 | 高岸勝繁 |
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岡本記念病院 | |
監修 | 上田剛士 |
洛和会丸太町病院 |
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どこに注目し、どのように判断しているか、そしてその根拠はなにか
内容紹介
”病棟や救急外来でのトラブルに頭を悩ませるのは今も昔も変わらない。頭を悩ませるがゆえに、最も研修医を成長させるシチュエーションでもあり、患者さんの役に立っていると実感できる瞬間でもある。
しかし、急変・トラブル対応に自信をもって接することができる研修医がどれほどいるであろうか? 自分自身を含め研修医も皆、不安を抱えながら対応しているのではないだろうか。”監修のことばより
本書は、膨大なエビデンスを収集整理し、救急外来・病棟患者のトラブルに対する対策をクリアに明示した。症候(トラブル)ごとにフローチャート形式で、検査・対応・治療についての診療の流れを把握できるようにしているので、研修医や非専門分野の症状に遭遇した当直医にとって大きな助けになる。
序文
■監修のことば
病棟や救急外来でのトラブルに頭を悩ませるのは今も昔も変わらない。頭を悩ませるがゆえに、最も研修医を成長させるシチュエーションでもあり、患者さんの役に立っていると実感できる瞬間でもある。
しかし、急変・トラブル対応に自信をもって接することができる研修医がどれほどいるであろうか? 自分自身を含め研修医も皆、不安を抱えながら対応しているのではないだろうか。
本書「内科病棟・ERトラブルシューティング」はそのような不安を解決するために生ま
れた。監修を行うにあたって、この一冊で臨床医が知っておくべき基本から研修医指導に使える知識まで全てを、診療の流れを失わないままに表現することを目指したが、それを成し遂げたのは筆者の臨床力の高さ故である。
医学は壮大な学問である。準備なしで診療に挑むのは地図やコンパスを持たずに見知らぬ山に入り込むようなものである。私ならそんな無謀なことはしたくない。本書では研修医が日々進歩する膨大な医学情報に惑わされることなく適切な対応ができるように、各章の冒頭にフローチャートを設けている。この事により、不慣れな山中にあっても遭難することもなく自分の立ち位置を確認しながら適切に行動する助けになるであろう。
もちろん地図だけでは十分とは言えない。研修医が装備すべきものはいくつもあるが、ここでは全身状態の評価を第1に挙げたい。山に入る前には適切な靴を履くかの如く、トラブル対応の最初に全身状態評価を行うことはあまりに基本的な事ではあるが、全身状態によって鑑別疾患は変わり、検査や処置の内容が全く異なる。日常診療で足を掬われることがあるとすれば、それは常に基本を疎かにした場合である。基本の大切さを最も痛感している臨床医ならではの視点に思わず納得させられる。
基本をおさえたら、本文に沿って筆者の思考過程を模倣するのも一興だろう。病歴聴取や身体診察、検査の一つ一つには意義があり、無意味に行うべき検査などは何もないことが体感できるだろう。そしてそれらの思考過程は全てエビデンスに基づいていることに驚愕する。第一線で常に患者と向き合う臨床医と最新のエビデンスの融合の姿こそ、この書籍の醍醐味である。
地図を持ち、靴を履いたら、是非高みを目指してほしい。今迄見えていなかった景色がそこには広がっている。随所に散りばめられたAdvancedレクチャーはその景色の一つであ
るが、本当の絶景は読者の目の前に存在する患者さんの笑顔であることは言うまでもない。
この書籍を読み終えた時、読書の皆さまがトラブル対応の不安から解き放たれ、高揚感と向上心をもって日々の診療に臨むことができるならば、この本を監修した者としては、望外の喜びである。
2017年11月吉日
洛和会丸太町病院 救急総合診療科 上田剛士
■序文
今回執筆のお話をいただいた時、率直に各主訴や病棟での訴え、検査異常への対応をまとめた実用書を書きたいと思いました。このような題材の本は今までにも優れたものが多数あり、私も研修医時分には大変お世話になりました。
それら先達の二番煎じとならないよう、先ずは自らの日頃の診療を省みて、「どこに注目し、どのように判断しているか、そしてその根拠はなにか」をひたすら自問自答し続けました。それをフローチャートを交えてまとめ上げたのが今回の本です。
この振り返り、自らの診療方法を言語化する作業のなかで、改めて気づいたことがあります。それは、自分は「怠け(たい)者である」ということです。
・極力残業はしたくない
・休日は休みたい
・呼び出されたくない
という希望(欲望?)が自分の中には根付いています。
残業をしないために、休日回診を行かなくても良いように、呼び出されないように、早く診断をつける、早く病状を安定させる、そもそも急変させないように努力する。
そのためには一見遠回りに見えるかもしれませんが、病歴や身体所見をしっかりと評価することが重要です。またショックバイタルになる前に循環不全の予兆を拾い上げることが非常に重要です。個人的にこのような医療を省エネ医療とか呼んでいます。
ショックバイタル、多臓器不全になってしまうと、言うまでもなくその後の入院管理は大変です。そうなる前に先手を打って対応できるものにはしっかりと対応し、急変を予防することが重要です(もちろんそれができない症例もありますが)。
自分が特に重要と思うのは第1章で書いた初期アセスメントです。これは救急、病棟、外来診療全てで意識しているところで、ここで異常を拾い上げてその後急変を防げた患者は多数経験しました。一方でこれを疎かにして、結果急変を招いてしまった症例も多く垣間見てきました。
各症状や症候への対応でも、まず循環不全徴候を早期に拾い上げ、その上で診断プランを考える、またフォロー中も循環不全徴候を逐一チェックすることは、私の省エネ医療の根幹となっています。この本でそれが少しでも伝われば幸いと思います。
最後に、お忙しいなかこの本の監修を快く引き受けてくださり、隅々までチェックし、アドバイスしていただいた上田剛士先生、執筆の機会をくださりました金芳堂の方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。
2017年11月
高岸勝繁
目次
1章 | 初期アセスメント | ||||
2章 | 呼吸/心停止 | ||||
3章 | 起動不安定 | ||||
4章 | 呼吸器、NIV | ||||
5章 | 循環不安定、敗血症 | ||||
6章 | 徐脈、頻脈 | ||||
7章 | 発熱 | ||||
8章 | 好中球減少性発熱 | ||||
9章 | 呼吸困難 | ||||
10章 | 意識障害 | ||||
11章 | 一過性意識障害 | ||||
12章 | 痙攣 | ||||
13章 | せん妄 | ||||
14章 | 不眠 | ||||
15章 | アルコール離脱 | ||||
16章 | 胸痛 | ||||
17章 | 頭痛 | ||||
18章 | 腹痛 | ||||
19章 | 吐血、黒色吐物、タール便 | ||||
20章 | 下血 | ||||
21章 | 色々な消化管症状:嘔気・嘔吐、下痢、吃逆、便秘への対応めまい | ||||
22章 | めまい・ふらつき | ||||
23章 | 四肢の疼痛、しびれ | ||||
24章 | 浮腫 | ||||
25章 | 頭部外傷 | ||||
26章 | アナフィラキシーへの対応 | ||||
27章 | 高血糖緊急症への対応 | ||||
28章 | 入院患者の血糖コントロール | ||||
29章 | 低Na血症の対応 | ||||
30章 | K濃度異常 | ||||
31章 | その他の電解質補正(Mg | Ca | P) | ||
32章 | 動脈血ガス分析の評価 | ||||
33章 | 貧血のアセスメント | ||||
34章 | 輸血閾値 | ||||
35章 | 血小板減少 | ||||
36章 | 肝酵素上昇(AST、ALT)のアセスメント | ||||
37章 | CPK上昇時のアセスメント | ||||
38章 | 急性腎障害(急性のCr値の上昇)、乏尿・無尿 | ||||
39章 | 胸水検査のTIPS | ||||
40章 | 腹水検査のTIPS | ||||
41章 | ICU患者の管理 | ||||
42章 | ICUで使う薬剤 | ||||
43章 | 深部静脈血栓症予防 | ||||
44章 | 輸液 | ||||
45章 | 経腸栄養 | ||||
46章 | 薬剤変更時の換算表 |