Dr.長尾プロデュース 呼吸器腹落ちカンファレンス
著 | 長尾大志 |
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滋賀医科大学呼吸器内科講師/教育医長 |
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長尾先生の研修を受けているがごとく呼吸器について学べる!臨床診断のプロセス、カンファレンスをサバイバルするために知っておくべきポイント、そして、効率よく呼吸器内科を回るためのコツをやさしイイく解説。
内容紹介
「呼吸器が苦手」「呼吸器が嫌い」「呼吸器がよくわからない」……。学生さん、研修医の皆さん、はたまた開業医の先生方や非専門医の先生方からも、本当によく言われるセリフです。
そのような方々に向けて、滋賀医科大学呼吸器内科カンファレンスから教育的症例を取り上げ、臨床診断の過程での論理展開を追体験して頂きながら、どのようなことが重要で、カンファレンスで尋ねられがちなのか、やさしイイく解説することで、滋賀医大で研修を受けているがごとくに呼吸器について学べるよう、工夫しました。
呼吸器内科ローテートや臨床実習の現場で、指導医・上級医にカンファレンスで突っ込まれるポイントは何か? いわば、呼吸器内科カンファレンスをサバイバルするために知っておくべきポイント、より自信を持って効率よく呼吸器内科を回るためのコツを丁寧に紹介しています。
序文
「呼吸器が苦手」「呼吸器が嫌い」「呼吸器がよくわからない」……。
学生さん,研修医の皆さん,はたまた開業医の先生方や非専門医の先生方からも,本当によく言われるセリフです.
呼吸器の独自性として,数値化・定量化できない画像の取り扱いがほぼ必須である,また,ちょっと複雑な呼吸生理を理解しないと血ガスや呼吸機能の解釈が難しい,あるいは,取り扱うべき疾患が感染症・アレルギーのようなコモンな機序のものから,吸入物質によるもの,変性疾患,それに換気障害や循環異常,腫瘍,などなど大変幅広い,というところがあるでしょう.
でも,本当は呼吸器領域って,病歴,身体診察,画像その他の検査を有機的に組み合わせて臨床推論を進めるうえで,大変理論がしっかりしていて,かつ答え合わせがしやすい,何より興味深く面白い,そんな症例の宝庫なのです.そのような素敵な経験をするには,ベッドサイドやカンファレンスなどでしっかり上級医の指導を受けて,その素晴らしさを追体験して頂くことが近道です.
で,これから呼吸器を臨床実習で回る,ローテートで回るんだけれども,今から呼吸器を勉強しようか,となったときに,途方に暮れる,カンファレンスで何を尋ねられるのか不安,何を知っておくべきか,範囲が膨大すぎてわからない,そういう声もよく聞くのですね.特にカンファレンスでの発表って,ある程度の知識があって,筋道がわかっていないと難しいですから.
それに,全国的に呼吸器内科専門医,指導医が不足している現状で,ひょっとすると,大学病院や研修病院であっても,呼吸器スタッフがいない,とか,すごく忙しそうでゆっくりと指導をしてもらえない,ということもあるかもしれません.
逆に,指導医の先生方にとって,毎度毎度回ってくる医学生さんや研修医の皆さんの指導は悩みの種でしょう.ベッドサイドやカンファレンスでの指導は彼らにとって効率のいい学びの場であることは間違いありませんが,実習・ローテート期間は短く,知っておくべきことを教えるには時間が足りなかったりする.
症例について理解しておくべき「重要なポイント」を効率よくムラなく指導,といっても,症例だってムラがあるし,いつもいつも都合よく教育的症例がやってくるとも限らない…….折角の教育チャンスに,これではモッタイナイ.
そこで,滋賀医科大学呼吸器内科カンファレンスから,教育的症例を取り上げて臨床診断の過程での論理展開を追体験して頂きながら,どのようなことが重要で,カンファレンスで尋ねられがちなのか,やさしイイく解説することで,滋賀医大で研修を受けているがごとくに呼吸器について学べるよう工夫しました.
教育的,ということで,主に呼吸器診断ならではの,臨床診断の流れ,呼吸器の面白さがわかるような症例を取り上げ,肺癌のTNM病期分類,とか,遺伝子変異別の治療戦略,とか,どこにでも書いてあるような事項は,この本の目指すところとは異なりますので,あえて取り上げておりません.
一般的に大学病院のメリットとして挙げられるのは,一般病院と比較して上級医・指導医スタッフが多く,質問がすぐにできて,患者さん1人1人にかけられる時間が長い,という点でありましょう.
医学生さんの実習でもそうですし,研修医の先生方でもそうなのですが,一例一例上級医といっしょに丁寧に患者さんを診る,ベッドサイドの教育が何より深い学びにつながります.滋賀医科大学呼吸器内科では,できるだけ質の高い研修を提供し,丁寧に物事を考えられる医師を育成できるよう努力しています.
呼吸器内科ローテートや臨床実習の現場で,上級医・指導医にカンファレンスで突っ込まれるポイントは何か.いわば,呼吸器内科カンファレンスをサバイバルするために,知っておくべきポイント.より自信を持って,効率よく呼吸器内科を回るためのコツを丁寧にご紹介します!
他に「呼吸器内科を改めて勉強したい,でもこれから研修,というのも立場的に難しい」という先生方にも,ベッドサイド・カンファレンスで学ぶような効率のよい学習を追体験して頂くことができると思います.
この書籍の使い方として,
①前から,通常の「目次」に従って,診断を考えながら読んでいく
以外に,
②カンファレンスサバイバル用として後ろにある,索引&診断名一覧を使って,「この疾患を担当することになったらこの項目を読む」という使い方もできます.十分ご活用頂き,少しでも呼吸器疾患の学習,教育のお役に立つことを念願しています.滋賀医科大学呼吸器内科の教育システムに興味を持たれた方は,是非見学・研修にいらしてください.大歓迎です.
最後に,常日頃,質の高い教育を実践頂いている滋賀医科大学呼吸器内科スタッフの先生方,いつも支えになってくれる家族に感謝します.
2018年4月
長尾 大志
目次
Ⅰ コモン編
Case 1 70歳代男性 5 日前からの発熱、悪寒戦慄、咳、鼻汁、嘔吐
Case 2 60歳代男性 1 ~ 2 週間の経過の、発熱、緑色喀痰、咳嗽、食欲低下
Case 3 40歳代男性 3 週間前からの痰
Case 4 70歳代男性 2 週間前からの労作時呼吸困難
Case 5 60歳代男性 1 ヵ月前からの右季肋部痛
Case 6 50歳代男性 1 ヵ月前からの全身倦怠感、1 週間前からの左胸部痛、そして急性の呼吸困難
Case 7 70歳代女性 3 年間続く咳嗽
Case 8 60歳代男性 健診発見、肺内結節影
Case 9 80歳代女性 喘息あり、術前に気をつけるべきことは……
Case 10 70 歳代男性 数日前からの咳、痰、ふらつき[外来編]
Case 11 40 歳代女性 1 ヵ月前からの咳嗽[外来編]
Case 12 20 歳代女性 1 週間前からの左胸痛、呼吸困難[外来編]
Case 13 70 歳代男性 3 日前からの発熱、前日から咳嗽、呼吸困難感[外来編]
Ⅱ 専モン編
Case 14 70 歳代男性 昨日からの発熱、軟便
Case 15 20 歳代男性 虫咬後、全身の発疹と発熱
Case 16 60 歳代女性 クモ膜下出血時の発熱
Case 17 50 歳代男性 1 ヵ月続く咳嗽
Case 18 50 歳代女性 1 週間以上続く咳嗽と喀痰
Case 19 70 歳代男性 健診発見異常影+ 労作時呼吸困難
Case 20 60 歳代男性 数ヵ月前からの労作時呼吸困難
Case 21 80 歳代男性 急性発症の呼吸困難
Case 22 60 歳代女性 前日から咳嗽と発熱
Case 23 40 歳代女性 2 ヵ月前からの発熱、下肢の腫脹
Ⅲ マニアモン題編
Case 24 70 歳代女性 乳癌再発、化学療法中の発熱咳嗽
Case 25 50 歳代男性 健診発見異常影+ 急性の発熱、咳・痰、呼吸困難
Case 26 70 歳代女性 慢性呼吸不全症例の呼吸困難悪化
カンファレンスではとりあえず何か言って!
1 「無言」は最悪
2 「わかりません」は何も生まない
3 上級医は何か言いたくて(間違いを直したくて)うずうずしている
4 とりあえずの「右か左か両側か」
5 空気次第では「ボケ」もあり? 責任は持てません.うちに来てやってね
6 高等テク!上級医の「得意」を知ると……