こんな時どうすれば!?内分泌・脂質・尿酸コンサルタント
監修 | 深川雅史 |
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東海大学教授 | |
編集 | 鈴木敦詞 |
藤田保健衛生大学教授 |
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内容紹介
「症状がさまざまで、よくわからないから『内分泌学的に』診断お願いします」というよくある紹介状・・・内分泌疾患は、わかりにくい?
内分泌疾患のイメージをつかむ
内分泌疾患を見逃してはいけない最大の理由は?
◎代謝性疾患の診療の要諦は「バランス」である。
内分泌疾患は、よく見られる疾患と比較的稀な疾患の両方が存在するが、疑いもされず長期に放置されたり、疾患を疑ってもどうして良いのかわからない、そうしているうちに状態が悪くなってしまうことがありがちで、非専門家にはとっつきにくい分野である。
本書では、内分泌疾患のエッセンスを抽出し、患者さんに細かく質問されると意外と回答に窮する脂質異常症・尿酸代謝異常について、わかりやすく見せる工夫をした。
Part1「診断と治療の手引き」では疾患全体を総覧し、 Part2「よくあるコンサルト」では、臨床の現場でのクリニカルクエスチョンを持ち寄り、診断のプロセス、治療方針の立て方について解説した。
本書が、臨床の現場で活用され、多くの医療者の診療に役立つことを切に願う。
序文
はじめに
内分泌・代謝学とは,毎日われわれが無意識におこなっている身体の制御システムを解き明かす,神秘的な学問である.無意識でおこなっているからこそ,疾患により制御システムが破綻した時には,“無意識下に”偽の情報がとびかい,身体はパニック状態に陥っていく.すなわち内分泌・代謝疾患の診療とは,正しい情報と偽の情報を見分けて整理する謎解きゲームに近いところがある.エラー情報を正常化させ,本来の恒常性に身体を復帰させることが,内分泌・代謝内科医の腕の見せ所である.
慢性代謝性疾患では,年余にわたり質的・量的に不適切な代謝産物に身体が曝露され,蓄積する.このことが器官・組織の変性につながり,ある時点をこえると逆戻りができなくなる.一般にはイベント発生につながるほどの変性状態を高リスク状態と呼ぶが,病理学的な視点からは,後戻りできる時点(低から中リスク状態)で介入した方が良いということになる.しかしながら,あまりにも低リスクな状態で介入することは,費用対効果面で無駄が多い.また特に薬物治療による介入を考えた場合には,副作用や長期使用による有害事象の増加が懸念され,リスク-ベネフィットのバランスを考えることが必要となる.さらに,代謝性疾患の患者は,複数の慢性疾患に罹患していることも多く,疾患同士あるいは治療薬同士の相互作用についても考えなくてはならない.すなわち,代謝性疾患の診療の要諦は「バランス」である.
本書は,一般に,わかりにくいというイメージをもたれがちな内分泌疾患のエッセンスを抽出し,またコモンディジーズでありながら患者さんに細かく質問されると意外と回答に窮する脂質異常症・尿酸代謝異常について,臨床の現場で役立つようにまとめた.Part1「診断と治療の手引き」では疾患全体を総覧し,またできる限り最新の情報を記載した.Part2「よくあるコンサルト」では,臨床の現場でのクリニカルクエスチョンを持ち寄り,具体的な診断のプロセス,治療方針の立て方について解説した.本書が,臨床の現場で活用され,多くの医療者の診療に役立つことを切に願う.
2018年春
藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
鈴木敦詞
監修のことば
このコンサルタントシリーズは,新たにその分野を専攻し始めた若い医師,そして症例のコンサルトをしたいが近くに専門家がいない医師のために,金芳堂が立ち上げた企画であり,これまでに本書を含め5分野を出版,改訂した.幸い,当初に想定した対象に加えて,意欲のある初期研修医やHospitalistを志す若い医師にも読者が広がって来ている.
経験の少ない非専門医や未専門医にとっては,どんな患者で,どんなときにその疾患を疑うのか,疑った場合,まずどのような検査をすれば良いのか,どのような情報を持って専門家にコンサルトすれば良いのか,はたしてどのくらい急ぐべきなのかを判断するのは容易ではない.
一方,コンサルトされる専門医とっても,どこまでの情報を揃えて,どの時点でコンサルトして欲しいのか,コンサルトの答えをどのように伝え,実行してもらうか,フォローアップはどのくらいの間隔で,いつまでするべきなのか,その後どうなったらもう一度コンサルトして欲しいのかなど,改めて認識すべき点も多く,このシリーズはそのような専門医のためにも役立つと思われる.
今回は,藤田保健衛生大学の鈴木敦詞教授に,内分泌疾患ならびに脂質代謝異常,尿酸代謝異常に関して企画をお願いした.内分泌疾患は,よく見られる疾患と比較的稀な疾患の両方が存在するが,疑いもされず長期に放置されていたり,疾患を疑ってもどうして良いのかわからない,そうしているうちに状態が悪くなってしまうことがありがちな分野である.いわば,非専門医にはとっつきにくい分野を,鈴木先生は,いろいろな角度から,わかりやすく見せてくださったと思う.読者の日常診療に,そして何よりも患者さんのために役に立つことを期待したい.
2018年 花から若葉にかわる季節に
東海大学医学部 腎内分泌代謝内科
深川雅史
目次
◎ 内分泌疾患を疑うとき
Part1 診断と治療の手引き
A 下垂体疾患(診断と治療の手引き)
B 甲状腺疾患(診断と治療の手引き)
C 副甲状腺疾患・カルシウム代謝異常(診断と治療の手引き)
D 副腎疾患(診断と治療の手引き)
E 性腺その他の内分泌疾患(診断と治療の手引き)
F 脂質異常症(診断と治療の手引き)
G 痛風・高尿酸血症(診断と治療の手引き)
Part2 よくあるコンサルト
A.下垂体疾患
1 下垂体偶発腫を見つけたらどのように対処しますか?
2 先端巨大症はどのような場合に疑い、どのように治療しますか?
3 成長期の低身長は病気ですか?体質ですか?
4 成人でも成長ホルモンの補充が必要なのでしょうか?
5 高プロラクチン血症を認めた場合の対処はどのように行いますか?
6 クッシング病はどのような時に疑い診断しますか?
7 心と体の発達のずれを認めたらどうしますか?
8 汎下垂体機能低下症患者の発熱時、生活指導で注意する点はありますか?~シックデイが生命の危機に~
9 ライフステージを考えた中枢性性腺機能低下症の治療はどのように進めますか?
10 多飲多尿を呈する患者で尿崩症をどのように診断しますか?
11 低ナトリウム血症をみたらどのように診断し治療しますか?
B.甲状腺疾患
12 健診で甲状腺腫をみつけたらどのように対処しますか?
13 甲状腺ホルモン値の異常をどのように解釈するのでしょうか?
14 バセドウ病の治療(目標・薬剤選択・フォローアップ)について教えてください.
15 甲状腺クリーゼを疑ったらどうしますか?
16 慢性甲状腺炎の診断と治療をどのように行いますか?(粘液水腫性昏睡も含む)
17 挙児希望や妊娠中の甲状腺機能管理はどのように行ったらよいですか?
18 痛みを伴う甲状腺炎はどのように診断し治療しますか?
19 甲状腺眼症への対応と、ステロイドパルス療法、外照射療法の適応について教えてください.
20 甲状腺未分化癌の診断と化学療法の進歩について教えてください.
C.副甲状腺疾患・カルシウム代謝異常
21 高カルシウム血症の患者が受診しました.どのように検査を進めますか?
22 高カルシウム血症クリーゼの治療はどのように行いますか?
23 低カルシウム血症の対処と鑑別診断はどのように行うのでしょうか?
24 低リン血症の精査と治療はどのように行いますか?
25 グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理方法は、どうするのが適切でしょうか?
26 続発性骨粗鬆症のスクリーニングと治療はどのように行いますか?
D.副腎疾患
27 副腎偶発腫瘍を見つけたらどのような追加検査を行い、どのように管理していくのが適切でしょうか?
28 二次性高血圧はどのような症例で疑えばよいですか?
29 原発性アルドステロン症はどのように診断しますか?
30 クッシング症候群を呈する巨大後腹膜腫瘍を認めたらどのように診断治療を進めますか?
31 褐色細胞腫の診断と治療はどのように行いますか?
32 サブクリニカルクッシング症候群の診断と管理を教えてください.
33 副腎不全症のシックデイルールはどのように指導しますか?
34 周期性四肢麻痺とギテルマン症候群はどのように診断・治療しますか?
35 先天性副腎過形成の患者の成人期にはどのように管理しますか?
E.性腺その他の内分泌疾患
36 無月経に関わる内分泌疾患にはどのようなものがありますか?
37 性腺機能異常が疑われる小児をどのように診療・管理しますか?
38 男性性腺機能低下症の長期管理はどのように行いますか?
39 インスリノーマの診断と他の低血糖症との鑑別はどのように行うのですか?
40 機能性神経内分泌腫瘍とカルチノイド症候群はどのように診断・治療しますか?
41 多発性内分泌腫瘍症を疑った場合はどうアプローチしますか?
42 自己免疫性多内分泌腺症候群はどのように疑い、診断しますか?
43 IgG4関連内分泌疾患とは何ですか?
F.脂質異常症
44 脂質異常症の診断と治療はどのように行いますか?
45 高トリグリセリド血症をどのように治療しますか?
46 家族性高コレステロール血症の診断と治療はどのように行いますか?
47 内分泌疾患によって引き起こされる二次性脂質異常症にはどのようなものがありますか?
G.痛風・高尿酸血症
48 健診で指摘された高尿酸血症にどのように対処しますか?
49 痛風腎の管理はどのように行いますか?
50 低尿酸血症のスクリーニングはどのように行いますか?
51 痛風発作の対処と管理の具体的な方法を教えてください.
執筆者一覧
執筆者
■監修
深川雅史 東海大学医学部 腎内分泌代謝内科
■編集
鈴木敦詞 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
■執筆者(掲載順)
鈴木敦詞 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
磯崎 収 甲状腺のクリニック若松河田 学術顧問
井上大輔 帝京大学ちば総合医療センター 内分泌代謝内科
沖 隆 浜松医科大学 地域家庭医療学
林 俊行 昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門
平野 勉 昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門
市田公美 東京薬科大学 病態生理学
須崎法幸 国立病院機構 名古屋医療センター 脳神経外科
加藤大也 JA愛知厚生連 豊田厚生病院 内分泌・代謝内科
水野晴夫 国際医療福祉大学医学部 小児科学
高木潤子 愛知医科大学医学部内科学講座 内分泌・代謝内科
髙柳武志 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
四馬田恵 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
牧 和歌子 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
村瀬孝司 リブラささしまメディカルクリニック 糖尿病・内分泌内科
椙村益久 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
早川伸樹 名城大学薬学部 臨床薬物治療学
澤井喜邦 JA愛知厚生連 豊田厚生病院 内分泌・代謝内科
平塚いづみ 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
山守越子 JA愛知厚生連海南病院 糖尿病・内分泌内科
山守育雄 豊橋市民病院 糖尿病・内分泌内科
北口善之 大阪大学大学院医学研究科 眼科学
柿崎裕彦 愛知医科大学病院 眼形成・眼窩・涙道外科
日比八束 藤田保健衛生大学医学部 一般外科学 内分泌外科
吉野寧維 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
安藤瑞穂 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
道上敏美 大阪母子医療センター研究所環境影響部門
木下祐加 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
垣田彩子 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
植田佐保子 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
今枝憲郎 名古屋市立西部医療センター 内分泌・糖尿病内科
田中智洋 名古屋市立大学大学院 消化器・代謝内科学
牧野真樹 藤田保健衛生大学医学部 内分泌・代謝内科学
釜谷直人 藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院 内分泌・代謝内科
山下美保 浜松医科大学 内分泌・代謝内科
吉田昌則 名古屋掖済会病院 糖尿病・内分泌内科
柳瀬敏彦 福岡大学医学部 内分泌糖尿病内科
明比祐子 福岡大学医学部 内分泌糖尿病内科
野見山崇 福岡大学医学部 内分泌糖尿病内科
西尾永司 藤田保健衛生大学医学部 産婦人科
中島信一 浜松医科大学 小児科学
緒方 勤 浜松医科大学 小児科学
小川純人 東京大学大学院医学系研究科 加齢医学
尾﨑信暁 名古屋第一赤十字病院 内分泌内科
髙野幸路 北里大学医学部 内分泌代謝内科学
林 登志雄 名古屋大学大学院医学系研究科 保健学科
中川浩実 金沢大学大学院 内分泌・代謝内科
篁 俊成 金沢大学大学院 内分泌・代謝内科
大野岩男 東京慈恵会医科大学 総合診療内科
長谷川みどり 藤田保健衛生大学医学部 腎内科学
古谷武文 東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター