1週間で学ぶ新生児学
第4版
新生児の特徴や診察の仕方などの基礎知識を「1週間」という限られた時間のなかで学べる1冊
内容紹介
本書は、「短い研修期間でも、NICUを回ってきてくれる研修医の皆さんに新生児の魅力を知ってもらいたい」「新生児・小児科以外の診療科を選択した皆さんにも新生児の特徴を知ってもらいたい」という思いから始まりました。
第4版でもコンセプトは変わりません。この10年の間の新生児医療の進歩、取り巻く環境の変化などを盛り込み、「初めて、医療者として赤ちゃんに接するすべての方々に知っておいて欲しいこと」を1冊にまとめました。
新生児の診療には、産科医・新生児科医・看護師・助産師のみならず、小児外科医・心臓血管外科医・脳神経外科医・眼科医・耳鼻科医・歯科/口腔外科医・整形外科医・脳神経外科医・理学療法士・薬剤師など、多数の職種の医療従事者が関わっています。皆さんがどの分野に進まれるにしても、赤ちゃんに対する正しい知識と理解を持っていただければ、心強い限りです。
序文
第4版の出版にあたって
本書の第1版を出版したのが2005年、第3版の出版が2010年でしたので、第3版から10年と長い年月を経ての改訂版の出版となりました。本書を最初に書いた目的は、1週間という短い期間でも、NICUを回ってきてくれる研修医の皆さんに新生児の魅力を知ってもらいたい… 新生児科・小児科以外の診療科を選択した先生たちにも新生児の特徴を知ってもらいたい… そんな思いからでした。
長い年月を経て、今回、第4版を出版させていただくにあたり、気をつけたことは、この間の新生児医療の進歩、新生児医療を取り巻く環境の変化を本書に盛り込むこと、そして、「初めて、医療者として赤ちゃんに接するすべての方々に、知っておいて欲しいこと」を書き込むことでした。
赤ちゃんは神秘に満ちています。ついさっきまで、お母さんの子宮の中で、ほとんどすべての機能を母親に依存していた胎児が、突然外界に放り出され、その瞬間から母とのつながりを断ち、自分で生きてゆくわけです。これには想像を絶する、「適応」のための試練が待っています。多くの赤ちゃんは、それを難なく乗り越えていくことが可能ですが、中には、手助けを必要とするお子さんもいます。本書には、その「適切な手助け」のための必須知識が詰まっています。
ぜひ、本書を読んで、実際の赤ちゃんに触れてみてください。
本書によって、皆さんの「赤ちゃんをみる目」が少し変わったら嬉しい限りです。
2020年8月
京都大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 病院教授
河井昌彦
目次
第1日(月曜日) 新生児の特殊性を学ぼう
1 子宮内生活から子宮外生活へ
1.呼吸・循環の変化
2.栄養・代謝の変化
3.環境の変化
2 低出生体重児、早産児の特徴を知ろう
1.早産児・低出生体重児の定義
2.呼吸器
3.循環器
4.出血傾向
5.易感染性
6.未熟児網膜症
7.栄養・消化器
8.腎機能
9.早産児の予後
第2日(火曜日) 新生児に独特な診察・検査方法
3 新生児の診察のしかたを知ろう
1.診察の流れ
4 新生児特有の採血方法
1.足底採血(毛細血管採血)
2.失敗しないためのポイント
5 頭部超音波検査
1.大泉門からのアプローチ
第3日(水曜日) 仮死の蘇生
6 新生児仮死の病態
1.1度仮死
2.2度仮死
7 アプガースコア
8 蘇生の実際
1.蘇生の基本
2.気道確保のポイント
3.マスク・アンド・バッグのポイント
9 新生児蘇生法
第4日(木曜日) 新生児期に見られる代表的な疾患
10 新生児期に呼吸不全を呈する疾患
1.呼吸窮迫症状
2.呼吸窮迫症候群
3.胎便吸引症候群
4.新生児の呼吸管理
11 低血糖
1.低血糖とは
2.血糖維持(エネルギー産生)のメカニズムと低血糖を起こす病態
3.高インスリン血症について
12 黄疸
1.新生児期に黄疸が発生しやすい理由
2.新生児期の黄疸治療の原則
13 新生児期の細菌感染症
1.早発型敗血症
2.遅発型敗血症
3.治療のポイント
第5日(金曜日) 他科との連携を要する病態
14 基礎疾患を有する母親から出生した児
1.糖尿病母体児(IDM)
2.母体甲状腺機能亢進症
15 子宮内感染症
1.TORCH症候群
16 外科疾患
1.食道閉鎖症
2.先天性十二指腸閉鎖症
3.先天性小腸閉鎖症
4.腸軸捻転
まとめ(週末) 1週間の研修を終えて
17 新生児を救急外来で診察するときに絶対に見落としてはならない病態
1.見た目の印象を大切に!
2.細菌感染症を見落とさないこと!
3.新生児~乳児の風邪症状には要注意!
4.急性腹症を見落とさないこと!
5.新生児~乳児の突然死について
18 医師として、ひととして…
最後に
略語一覧
索引