ステップアップ 思春期の診かた
苦手な思春期の診療が得意になる! 思春期の子供たちが抱く多様な悩み・問題に寄りそうことができる、思春期医療の指針書の決定版がついに完成。児玉和彦先生(小児科)・岡田唯男先生(総合診療科)・柴田綾子先生(産婦人科)、推薦!!
内容紹介
子どもの「病気」には詳しいけれど、思春期の「悩み」は苦手。そんなあなたに最適な「思春期医療の航海図」できました!迷わず読めば、自信がつく!
児玉和彦先生
思春期を家庭医・総合診療医が診られなくて、誰が診るのか? プライマリ・ケア医向け思春期医学の包括的書籍の決定版がついに完成! 苦手意識克服のための必読書!
岡田唯男先生
大人へと成長する子ども達が出会うトラブルに対し、身体的・精神的・社会的側面から支援するための知識と情報が詰まった1冊です
柴田綾子先生
思春期は心と体が大きく変化する時期で、様々な要因が複雑に絡み合い、多様な問題が生じます。その問題の解決のためには、子どもたちから上手く困りごとを引き出すコミュニケーション能力が必要であり、子どもたちを取り巻く家族や社会背景が刻々と変わっていく中で、子どもたちに向き合わなければいけません。
本書では、多様化する思春期の悩みに寄り添えることができるよう、診療科の垣根を超えて様々な職種の方に執筆いただき、子どもたちを取り巻く最新の事情をふまえた、思春期診療のスタンダードな内容を盛り込みました。典型的な疾患への対応といった臨床的内容から、発達障害などの精神面・社会的な問題まで、幅広い領域をカバーしています。思春期診療の書籍は長らく発刊されていませんでしたが、待望の決定版書籍が完成しました。医学教育では教わることがない、思春期の子どもたちの診方がわかる1冊です。
序文
はじめに
日本で思春期の子どもたちは誰が診るのか?
これは、行き場のない思春期の子どもたちを見て、私が初期研修医時代に思ったことです。医学部教育のなかで思春期医療について教わったことはなく、取り組んでみる価値があると感じたのを覚えています。
思春期は心と体が大きく変化する時期で、様々な要因が複雑に絡み合って、多様な問題が生じます。トラブル解決のためには、子どもたちから上手く困りごとを引き出すコミュニケーション能力が必要であり、子どもたちを取り巻く家族や社会背景も刻々と変わっていく中で、日々、自分を試されている気がしています。
「思春期の悩みは多様化していて、診療科の垣根を超え、それぞれがカバーしあっていかなければ、今の子どもたちの悩みに向き合えないのではないか。そのためにも日本の実情に合わせた、少しでも診療の指針となる本を作成したい。」
その思いから本書を制作することとなりました。本書に書かれていることをすべて身につけて診療している医療者は、日本ではほとんどいないのではないかと思います。
本書には小児科医、総合診療医、産婦人科医、児童精神科医、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、様々な職種の方にご執筆いただきました。それぞれの項に「思春期の悩みに寄り添える医療者が1人でも増えて欲しい」と願いを込めて書いていただいております。
本書を通じて、Z世代・α世代の思春期の子どもたちの健康が少しでも守られることを願っております。
2023年2月
中山明子
推薦
臨床で思春期の荒波に揺られる子どもたちの悩みを聞くと、その感性に触れてムズムズする。大人になってしまった私たちの人間の本質が揺れているのだ。その声は、大きかったり、小さかったりするし、無音のこともある。彼らの心に耳をあてて聞いてみたくなる。なんとかして、この子のことをわかりたい。
しかし、現実は情熱と想いだけで診療できるほど甘くない。子どもの悩みは、家族や友人、パートナーの問題を映す鏡で、いくら覗き込んでも屈折した景色しか見えないときもある。本書は、思春期の子どもの心身に関する俯瞰的な理論的記述が各所にあり、診療を反省するところが多い。特に子どもの権利条約については一読していただきたい内容である。
次に特筆すべきは、プライマリケア外来でよく出会う月経やスポーツ障害など、小児科医であっても得意ではないトピックへの具体的な対応が学べる。産婦人科医やスポーツ医の立場から、プライマリケア医が何をしてよいか、どのような時には専門医に紹介すべきかが書かれているのが素晴らしい。
思春期医療の最大の難関は、心理的な問題であることに疑いはない。摂食障害や自傷行為をする子どもたちを目の前に私たちができることは何だろうか。性に関係する問題や不登校などへの対処は医師だけでは不可能だが、地域にどのような専門職や協力者がいるかご存じだろうか。教育や福祉と医師がどのように協働していくべきかについて様々な立場の執筆者から詳しく書かれているのも本書の大きな長所である。
人生を海にたとえると、思春期の子どもたちは母船(親船)から離れようとしている小舟の船長である。医師の仕事の一つは、ドックにたどり着いた舟の修理である(親船の修理が一緒に必要なこともある)。故障を見つけて直すことについては、医師は一流の修繕師でなければならない。そして、ときに自分より上手く修理できる人を紹介することも必要である。しかし、小舟は目に見える大きな故障がなくても、傍目には危険な航海をしているように見えるときもある。そのとき医療者ができることは、本書の言葉を借りると「丘の上から船が航海するのを眺め、そっと応援する」こと(p.120)である。
それぞれの目的地に向かう若き船長を応援する私たちに一番必要なもの、それは思春期医療という大海の航海図、つまり本書である。
2023年2月
児玉和彦
目次
第1章 総論
思春期の診療の特徴とコツ
思春期の発達のデータ・疫学
思春期のヘルスメンテナンス
子どもの権利条約と日本の現状
第2章 思春期のフィジカルヘルス
慢性の頭痛
慢性の腹痛
背が伸びない
- コラム:ニキビ
思春期とスポーツ障害
- コラム:成人科移行を見据えて
月経の問題
避妊・緊急避妊法
- コラム:月経移動・お受験ピル
性感染症
- コラム:性暴力被害への対応
- コラム:HPVワクチン
第3章 思春期のメンタルヘルス
発達障害と思春期
起立性調節障害
摂食障害
うつ病
自殺企図・自傷行為
- コラム:子どものストレスとその対処
第4章 思春期の問題 ~子ども自身編~
思春期とネットリテラシー・ゲーム依存
LGBTの思春期
若年妊娠
第5章 思春期の問題 ~家庭編~
子ども虐待
- コラム:デートDV
難しい家庭環境(SDHを踏まえて)
- コラム:ヤングケアラー
第6章 思春期の問題 ~学校編~
学校性教育の現状と未来
- コラム:家庭でできる性教育
不登校
隠れ不登校の特徴と家族の理解
いじめ
スクールソーシャルワーカーから見る学校・医療・福祉の連携のコツ
執筆者一覧
■編著
中山明子 大津ファミリークリニック
小橋孝介 鴨川市立国保病院
■執筆者一覧(五十音順)
池田裕美枝 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野博士課程
大畑好司 滋賀県教育委員会スクールカウンセラー
河野悠介 亀田総合病院小児科
坂井雄貴 ほっちのロッヂの診療所/一般社団法人 にじいろドクターズ
髙橋幸子 埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科
龍田直子 大津市子ども発達相談センター
中島かおり 特定非営利活動法人 ピッコラーレ
長嶺由衣子 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
成瀬裕紀 松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科
濱井彩乃 安房地域医療センター総合診療科
山口有紗 子どもの虐待防止センター/こども家庭庁設立準備室/国立成育医療研究センター
幸重忠孝 特定非営利活動法人 こどもソーシャルワークセンター
トピックス
■2023-02-17
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