アナフィラキシーに出会ったら? シーン別ベスト・プラクティス

    定価 3,960円(本体 3,600円+税10%)
    監修岡田正人
    聖路加国際病院リウマチ膠原病センター部長・リウマチ膠原病センター長
    小澤廣記
    聖路加国際病院リウマチ膠原病センター医員
    A5判・172頁
    ISBN978-4-7653-1952-2
    2023年04月 刊行
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    アナフィラキシーに出会ったら? すべての医療従事者へ向けたケースファイル!

    内容紹介

    アナフィラキシーは外来や救急のみならず、ワクチン接種会場、CT検査室、病棟や学校などありとあらゆる医療現場で遭遇する可能性があるアレルギー反応です。対応としては比較的シンプルな病態ではありますが、シンプルな病態だからといって、必ずしも適切な初期診療や再発予防が行われているとはいえません。過去には学校でアナフィラキシーを原因とした死亡事故が発生しており、普段から様々な場面を想定したアナフィラキシー診療の知識を身につけておく必要があります。

    本書ではアナフィラキシーが問題となる様々なシチュエーションを設定し、関連する職種に必要とされる知識を対応含め解説しています。それぞれのシチュエーションを疑似体験し、アナフィラキシーの適切な初期診療や再発対策を行いましょう!

    序文

    監修の辞

    診療所を手伝っている時に20代のアナフィラキシーの患者が来院した。ピーナッツの誤食で同僚に抱えられて来院し、蕁麻疹、息苦しさ、血圧低下、喘鳴と典型的な症例であった。患者の意識を確認しながら下肢を挙上し、アドレナリンを大腿前外側に筋注、酸素投与、点滴ラインをとって生理食塩水を始めて、5分後にもう一度アドレナリンを筋注したところで、呼吸症状が改善し血圧も安定、皮膚のかゆみも消失した。

    その時に驚いたのは、一緒に対応してくれた看護師さん3人が口を揃えてとても褒めてくれたことだ。東京中心部のオフィス街という立地のため、これまでもアナフィラキシーの患者さんが急に来院したことはあったが、こんなにスムーズに治療できたのははじめてで、さすがアレルギーの専門医ですねと感心された。これは大きな問題である。アナフィラキシーはどの専門の医師でも遭遇しうる問題で、少なからず薬剤性などの医原性のこともある。このような状況では、即座の適切な処置が患者側から当然期待されるが、やはりすべての医師が常に臨床的な用意ができているわけではないのが現状である。

    実は、これまでもアナフィラキシーでのトラブルの相談は何度も受けたことがある。アドレナリンの投与が早急に行われずにICUに入室になった、アドレナリンを静注した、ステロイドだけ投与して返したら他院にすぐ搬送になったなどなどである。今回の小澤先生の著書は、若い先生には一度しっかり通読していただき、まず知識を確認することをお勧めする。新しいガイドラインにも準拠しており、また問題もついていることから理解の確認ができる。症例を通して実際に経験する機会が乏しい場合でも、疑似体験ができるようになっている、また、外来の点滴室、病棟などに常備しておくことで、すぐに必要なアルゴリズムなども参照することができ、また通常の治療でよくならない場合、何かおかしいと思った場合にも参考になる情報が網羅されている。総合診療医でもあり、また聖路加国際病院のImmuno-Rheumatology Centerでアレルギー疾患患者への対応の中心を担っている小澤先生の臨床的な秘伝の詰まった良書である。

    岡田正人


    はじめに

    アナフィラキシーは重症かつ全身性のアレルギー反応である。皮膚症状やバイタルサインの異常を含めた全身臓器の症状から疑い、アドレナリン筋注を含めた初期治療をすみやかに行う。再発予防のためには原因となったアレルゲンの特定と回避を行う。またアドレナリン自己注射器(エピペン®)を処方して、再発時には患者自身が早期治療できるようにして再発に備えることが重要である。

    本書は以上に要約でき、アナフィラキシーは対応も含めてシンプルな病態に思えるかもしれない。しかし実際の医療現場では適切な初期診療や再発予防が必ずしも行われていない。

    過去には食物アレルギーによるアナフィラキシーでの死亡事故が小学校で発生し、本書の執筆中には新型コロナウイルスワクチンに対するアナフィラキシーが注目されている。アナフィラキシーが疑わしい症例でもアドレナリン筋注を含めた初期対応がうまくいかない例をニュースで目にすると残念に思う。アナフィラキシー診療への誤解やアドレナリン筋注の使用経験の不足が背景にあるのかもしれない。それを埋めるのが本書の大きな目的である。

    アナフィラキシーはすべての医療現場で発生する可能性があり、読者のみなさんも含め、居合わせたスタッフの誰もが職種を問わず対応に迫られる。また、再発予防やエピペンの適切な使用についてはアレルギー専門医だけでなく、様々な立場の医師や多職種の連携が重要となる。

    本書ではアナフィラキシーが問題となる様々なシチュエーションを用意した。関連する職種に必要とされる対応を含め、解説を加えている。それぞれのシチュエーションを擬似体験してもらい、必要とされる知識を確認していただけると幸いである。本書を通じて、アナフィラキシーの適切な初期診療や再発対策につなげていただけることを願っている。

    本書の読み進め方としては最初から通読してもらってもよいし、序章(Scene 00)を読んであとに、ご自身の職種が関連するシーンを確認していただいてもよい。各章には復習のためのクイズを作成したので、そちらも合わせて確認いただけるとよい。

    またアレルギー診療への入り口として、理解を深めるためのステップアップガイドをコラムとして執筆したので参考にしていただきたい。

    小澤廣記

    目次

    監修の辞
    はじめに

    Scene 00 アナフィラキシー Basics & Updates
    関連職種> アナフィラキシーに関わるすべての職種

    Scene 01 ワクチン接種後のアナフィラキシー
    @新型コロナウイルスワクチンの接種会場
    関連職種> 事務員、看護師、医師(内科医、総合診療医など)

    Scene 02 抗菌薬投与後のアナフィラキシー
    @内科病棟
    関連職種> 看護師、医師(研修医、病院勤務医)

    Scene 03 造影CT検査後のアナフィラキシー
    @放射線検査室
    関連職種> 放射線技師、看護師、医師

    Scene 04 アナフィラキシーの入院を受け持ったら
    @病棟
    関連職種> 医師(研修医、内科医、救急医)、薬剤師

    Scene 05 食物アレルギーによるアナフィラキシー
    @学校
    関連職種> 教職員、養護教諭、救急救命士、学校医

    Scene 06 ハチ刺されによるアナフィラキシー
    @救急外来
    関連職種> 看護師、医師(研修医、救急医)

    Scene 07 その患者さん、帰しても大丈夫?
    @救急外来
    関連職種> 医師(研修医、救急医、内科医)、救急看護師

    Scene 08 アドレナリン筋注の効かないアナフィラキシー
    @ER、ICU
    関連職種> 医師(研修医、救急医、集中治療医)、看護師(ER、ICU)

    Scene 09 アナフィラキシーmimicker
    @ER
    関連職種> 医師(研修医、救急医)

    Scene 10 アナフィラキシーの原因がわかりません
    @内科外来
    関連職種> 医師(内科医、総合診療医)

    Scene 11 分娩後の血圧低下
    @産科病棟
    関連職種> 看護師(産科病棟)、産婦人科医、麻酔科医

    復習クイズ回答
    おわりに
    索引

    ステップアップガイド
    - ワクチンによるアナフィラキシーのブライトン分類
    - そのペニシリンアレルギーは本物ですか?
    - 造影剤使用に関連する問診事項 ~アナフィラキシー以外にも注意~
    - 造影剤アレルギーの既往がある場合に前投薬での検査は可能か
    - パンケーキ症候群 ~口腔ダニ・アナフィラキシー(oral mite anaphylaxis)~
    - アレルゲン免疫療法 ~そのアレルギー、治してみませんか?~
    - 患者や家族の理解度を上げる工夫 ~ヘルスリテラシーを考える~
    - アスピリン喘息(Aspirin-exacerbated respiratory disease,AERD)
    - アドレナリン受容体と循環作動薬
    - アニサキスのリスクと処理方法
    - 患者の話す「アレルギー歴」は本当か
    - アレルゲンに対する特異的IgE抗体の測定 ~アレルゲンコンポーネントとは?~
    - 原因不明のアナフィラキシー ~いつか出会うかもしれない肥満細胞症~
    - 周術期のアナフィラキシー
    - 皮膚テスト・血中特異的IgE 抗体検査による原因アレルゲンの特定
    - アナフィラキシーのバイオマーカー ~トリプターゼ~

    執筆者一覧

    ■監修
    岡田正人 聖路加国際病院リウマチ膠原病センター部長・リウマチ膠原病センター長

    ■著
    小澤廣記 聖路加国際病院リウマチ膠原病センター医員

    トピックス