敗血症診療トレーニング
著 | 近藤豊 |
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順天堂大学大学院医学研究科救急災害医学講座 先任准教授/順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科 |
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敗血症についてこれだけは知っておいて欲しい、トレーニング形式の最強指南書!
内容紹介
本書は救急医、初期研修医、内科・外科後期研修医向けに、敗血症診療についてまとめた一冊となっています。
第1章「敗血症診療のポイント」は、敗血症の疫学と予後、敗血症診療の流れ、敗血症診療ガイドラインなどの解説、第2章「救急外来における敗血症診療」は、敗血症診療の経験値が高められるよう、実際の患者さんをイメージした症例をクイズ形式でまとめています。
また、症例クイズは★☆☆☆☆~★★★★★の5段階の難易度別になっていて、いろいろな診療過程の疑似体験もできるようになっています。
ほとんどが日常的に遭遇するケースなので、解説部分から読んでも、知識を深めることができ、現場で、適切な対応が行えるようになります。
序文
はじめに
皆さん、こんにちは! 順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科の近藤豊と申します。おそらく面識がなくて、はじめてお会いする方がほとんどだと思います。私は医師になってからずっと敗血症診療に取り組んできたこともあり、今回、大変ありがたいことに本書の出版の機会をいただきました。
思えば私が医師になったばかりのときは、医師の仕事に対する期待と不安の両方の気持ちが入り混じった複雑な気持ちだったと思います。当時、救急対応は研修医である私たちの主な仕事でしたが、循環作動薬の使い方もよくわからず、また十分に手技への自信がないなかで、自分の持っている少ない知識と患者さんの見た目から受ける印象という直感的な判断を駆使しながら、救急診療にあたっていたように思います。また当時は敗血症という言葉は知ってはいましたが、敗血症にフォーカスして勉強できるような機会や本なども身近にはなかった印象が残っています。
その時代から10年以上の月日が流れ、現在は初期研修医や後期研修医の先生と一緒に、救急・集中治療の診療に日々取り組んでいます。そのなかで敗血症について、これだけは知っておいてほしいなという項目を本書にまとめました。また本書を手にとっていただいた方は病院で日々敗血症診療に携わっている先生がほとんどだと思いますので、実際の患者さんをイメージしながら勉強出来るように、設問を設定したトレーニング形式としています。病院の患者さんを想像しながら、敗血症診療を実際に一人で完結出来るようになることが本書の目的です。またお忙しい先生におかれましては、解説の部分から読んでいただいても知識を深めることが出来ると思います。
本書の発刊にあたり、大変ご尽力いただいた株式会社金芳堂の皆様、西堀智子様、順天堂大学呼吸器内科の神後宏一先生、順天堂大学浦安病院でお世話になっている田中裕先生、岡本健先生、救急診療科の医師・看護師・臨床工学技士・作業療法士・救急救命士をはじめ、一緒のチームで敗血症研究をしてくれている三好ゆかり先生、吉原育実さん・成実さん、関係者の皆様に改めまして御礼申し上げます。
2023年12月
順天堂大学医学部附属浦安病院 救急診療科
近藤豊
推薦の序
敗血症は、「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される。感染症により生体反応が調節不能な状態となり、生命を脅かす臓器障害を引き起こす。敗血症はあらゆる年齢層が罹患する疾患であり、世界では数秒に一人が敗血症で命を落とすとされ、その社会的影響や経済的喪失は甚大である。特に超高齢社会にある本邦では、基礎疾患などで宿主免疫力の低下した高齢者が、軽症の局所感染を契機に重症の敗血症に陥る場合が多い。敗血症は進行が速いため早期診断治療が肝要となるが、初期症状は発熱、倦怠感、筋肉痛など非特異的であり、症状発現の個体差もあって診断の遅れが生じやすい。したがって、専門科に限らず、すべての臨床医は、病歴、身体所見、画像検査などから可及的速やかに敗血症の診断治療が出来るよう、日頃からトレーニングを積んでおくことが重要である。
本書の著者である近藤 豊先生は、新進気鋭の救急医であり、若くして敗血症研究の権威として国内外に高名な研究者であり、救急医学関連学会では、日本の救急医学の牽引役として将来を嘱望される医師である。例えば、その膨大な研究業績のうち英文原著だけ見ても、総インパクトファクターは43歳の時点で500を超える。そのうえ、敗血症診療を中心とした救急医学関連の著書を次々と執筆し、数多くの研究助成金を取得しながら、大学院生や若手研究者を熱心に指導している。しかし、著者の活動のメインフィールドは決して学会や研究室ではない。彼の本領が発揮される場は私が所属する都心近郊の救命救急センターであり、現場の最前線で敗血症を含む重症救急患者の病状変化に一喜一憂しながら、他の医療スタッフとともに日夜奮闘する臨床医、それこそが私が最も知る近藤先生の姿である。したがって、本書は、臨床現場で敗血症に立ち向かわなければならない研修医や専門外医師にとって、自分が一番知りたい内容が満載する最強の指南書になるだろう。本書でのトレーニングとして提示される症例はすべて実際の臨床現場で日常的に遭遇するケースであり、クイズ形式で用意された設問に解答することで、敗血症患者の診療過程を近藤先生の指導を受けながら疑似体験できる。症例ごとに臨床上役立つポイントやノウハウ、必ず押さえておくべきエビデンスとそれを踏まえた知識がわかりやすく解説されているため、その学習効果は抜群である。
以上より、本書は現場で活躍されている臨床医必読の書である。
順天堂大学医学部附属浦安病院 高度救命救急センター長
順天堂大学大学院医学研究科救急災害医学 教授
岡本健
目次
推薦の序
はじめに
欧文略語一覧
第1章 敗血症診療のポイント
敗血症とは
敗血症の疫学と予後
敗血症診療の流れ
敗血症診療ガイドライン
第2章 救急外来における敗血症診療
症例1
敗血症の初期診療・診断【敗血症の疑い方】
難易度:★★☆☆☆
症例2
敗血症の初期診療・診断【敗血症の確定診断】
難易度:★★★☆☆
症例3
敗血症の初期診療・診断【敗血症の初期輸液】
難易度:★☆☆☆☆
症例4
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の循環作動薬】
難易度:★★☆☆☆
症例5
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期蘇生の評価方法】
難易度:★★★★☆
症例6
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与】
難易度:★★★★☆
症例7
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★☆☆☆
症例8
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★★☆☆
症例9
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★★★★
症例10
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★★★☆
症例11
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★★★☆
症例12
敗血症の初期診療・診断【敗血症初期診療の抗菌薬投与:各論】
難易度:★★★★☆
症例13
敗血症の初期診療・診断【気管挿管】
難易度:★★★☆☆
第3章 ICU/ICU退出後における敗血症診療
症例14
敗血症の集中治療【人工呼吸器管理】
難易度:★★★★☆
症例15
敗血症の集中治療【敗血症の水分管理】
難易度:★★★★☆
症例16
敗血症の集中治療管理【循環作動薬】
難易度:★★★☆☆
症例17
敗血症の集中治療管理【抗菌薬の投与時間の延長、デ・エスカレーション】
難易度:★★★☆☆
症例18
敗血症の集中治療管理【抗ウイルス薬・抗真菌薬】
難易度:★★☆☆☆
症例19
敗血症の集中治療管理【鎮痛・鎮静薬】
難易度:★☆☆☆☆
症例20
敗血症の集中治療管理【DIC治療】
難易度:★★★★☆
症例21
敗血症の集中治療管理【輸血】
難易度:★★☆☆☆
症例22
敗血症の集中治療管理【血液浄化法】
難易度:★★★☆☆
症例23
敗血症の集中治療管理【抗潰瘍薬】
難易度:★☆☆☆☆
症例24
敗血症の集中治療管理【経腸栄養】
難易度:★★☆☆☆
症例25
敗血症の集中治療管理【ステロイド投与】
難易度:★★☆☆☆
症例26
敗血症の集中治療管理【血糖・体温管理】
難易度:★★★☆☆
症例27
敗血症の集中治療管理【早期リハビリテーション】
難易度:★★☆☆☆
症例28
敗血症の集中治療後に関して【回復過程と社会復帰】
難易度:★★★★★
おわりに
プロフィール
memo
自然耐性とは?
尿から黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が検出された場合
髄膜炎の新しい診断方
セフトリアキソンの意外な合併症
敗血症と筋弛緩薬
フロートラックセンサーをどう活かすか
アシドーシスと循環作動薬の反応性
第〇世代セフェムって言葉は間違い
カンジダによる尿路感染症
プロポフォール注入症候群(Propofol infusion syndrome:PRIS)とは?
抗菌薬投与による凝固障害
輸血の投与量の目安と投与方法
敗血症におけるAKI発症のリスク因子
H2受容体拮抗薬投与によるせん妄と認知機能障害
経腸栄養の種類
CIRCIとは?
高血糖とICU-AW
退院後のリハビリテーションプログラム