肺がん診療のリアル
-この1冊で肺がん診療がまるごとわかる-
著 | 野口哲男(呼吸器ドクターN) |
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市立長浜病院呼吸器内科 |
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この1冊で、肺がん診療の現在(リアル)がわかる! 肺がん診療が面白くなる!!
内容紹介
肺がんは国内における罹患数が多い疾患の一つですが、早期発見が難しく、転移しやすいため死亡率も高くなっています。医療の進歩に伴い、次々に新薬も登場し、肺がんの治療成績は向上していますが、肺がんの治療は全体を把握することが難しい領域の一つです。
そこで、呼吸器専門医・がん治療認定医である経験豊富な著者自身が実際に肺がん患者さんに対して行っている診療を簡潔に記述し、1冊の書籍にまとめました。また本書は、著者が発信している肺がん患者さん向けのYouTube『呼吸器ドクターNの肺がんチャンネル』と連動しており、QRコードで関連動画に簡単にアクセスできます。本書とあわせて動画をご視聴いただくと、肺がん診療についてさらに理解を深めていただくことができるはずです。
本書を通じて肺がん診療のリアルを感じてください。肺がん診療をきちんと行うことができれば一人前の呼吸器科医です。
本書の著者・野口哲男先生のYouTubeチャンネルはこちら
序文
私は平成元年(1989年)に京都大学医学部を卒業し、医師免許を取得しました。その頃は現在のような研修制度はなく、医学部を卒業するまでに何科に入局するかを決めておくことが普通でした。漠然と内科系に行こうと思っていましたが、入局説明会にいくつか参加して呼吸器内科にしようと決めました。
医局の雰囲気が良かったこと、バイト先も豊富にあることなど(笑)、適当な理由だったのかもしれませんが、その後一貫して呼吸器内科をやってきて後悔したことは一度もありません。
呼吸器内科は、肺がんのような悪性疾患、COPD・喘息のような気道閉塞性疾患、間質性肺炎のような炎症・線維化を伴う疾患、肺炎・結核・非結核性抗酸菌症のような感染症など多くの分野を含んでおり、老年医学にも通じる部分もあり、患者さんの全身を診ることのできる魅力的な科だと思います。
当時、肺がんは非常に予後が悪く、Ⅳ期だと予後半年ということもざらでした。マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン(MVP療法)が主体でしたが、患者さんの吐き気・嘔吐がひどく、メトクロプラミドを30アンプルも投与せざるを得なかったことを思い出します。
肺がん患者さんは医学の進歩の恩恵をかなり受けています。2002年にゲフィチニブ(イレッサⓇ)が分子標的薬として初めて承認され、その後も多くの分子標的薬が発売されました。また、2015年には免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(オプジーボⓇ)が非小細胞肺がんに対して承認され、その後も多くの免疫チェックポイント阻害薬が発売されました。
さらにグラニセトロン・アプレピタントといった制吐薬の発売により、抗がん薬による嘔吐がかなり軽減されるようになりました。また、オピオイドもモルヒネ以外にオキシコドン・フェンタニル・ヒドロモルフォンなどが使えるようになり、緩和ケアの分野も発展を遂げています。
肺がんの治療成績の向上は、多くの呼吸器内科医の興味を引くところとなり、呼吸器外科医がメインだった肺がん診療は、呼吸器内科医と協同で行われることが多くなってきています。
この本を手にとった先生方は、研修医や呼吸器内科・呼吸器外科を志望することに決めた後期研修医が多いと思います。前述したように、肺がんは医学の進歩の恩恵を受けやすいがん種であり、次々に新薬が登場しているので全体を把握するのが大変な領域でもあります。そこでこの本では、呼吸器専門医・がん治療認定医である私が実際に肺がん患者さんに対して行っている診療を簡潔に記述することにしました。最後まで読んでいただくと、まさしく「肺がん診療のリアル」を感じていただけるものと期待しています。現状の肺がん診療はこの本で要約されているものと思います。
肺がん診療をきちんとできれば一人前の呼吸器科医だと思います。抗がん薬・放射線治療・手術などの治療は、持病・合併症・臓器機能・患者さんや家族の希望・経済状況など様々な因子を考慮して決定します。メディカルスタッフ(看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーなど)や他科の医師・開業医とのコミュニケーション、また患者さん・家族とのコミュニケーションは、患者さんが納得する治療ができるかの重要なポイントです。また、緩和ケアは肺がんと診断した時点から開始するものです。
私は『呼吸器ドクターNの肺がんチャンネル』というYouTubeチャンネルで肺がん患者さん向けの動画を投稿しております。この本の各項目では該当する動画にQRコードからアクセスできるようにしていますので、あわせてご視聴いただくと理解が深まると思います。
この本を読まれる皆さんが肺がん診療のリアルを感じていただき、肺がん診療に興味を持っていただければ幸甚です。肺がんは一生をかけて取り組むのに値する疾患です。
最後に、この本の出版を提案していただきました金芳堂の西堀さん、編集でお世話になった一堂さん、そしていつも支えてくれている家族に感謝します。
2024年6月
市立長浜病院呼吸器内科
野口哲男(呼吸器ドクターN)
目次
略語一覧
抗がん薬略語一覧
第1章 肺がん診断のリアル
1.健康診断で胸部X線の異常が見つかったら
2.肺がん疑いの症状で自己受診、あるいは紹介受診
3.健診オプションで腫瘍マーカー高値のため受診
4.胸部CT(造影剤のメリット、デメリット)
5.気管支鏡(bronchofiberscopy;BFS)
6.CTガイド下肺生検
7.胸水検査
8.PET検査
9.マルチ遺伝子検査
第2章 肺がん治療のリアル
1.肺がんの組織型
2.肺がんのTNM分類(ステージ分類)
3.ドライバー遺伝子変異
4.PD-L1発現
5.患者側の因子
6.治療方針の決定
7.手術療法のリアル
8.放射線治療のリアル
9.緩和ケアのリアル
第3章 肺がん化学療法のリアル
1.臨床試験とは
2.シスプラチン ・カルボプラチン
3.タキサン系抗がん薬
4.ペメトレキセド・S-1・トラスツズマブ デルクステカン
5.小細胞肺がんの抗がん薬
6.ニボルマブ(オプジーボ®)
7.ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
8.アテゾリズマブ(テセントリク®)
9.デュルバルマブ(イミフィンジ®)
10.イピリムマブ(ヤーボイ®)
11.トレメリムマブ(イジュド®)
12.ゲフィチニブ(イレッサ®)
13.エルロチニブ(タルセバ®)
14.アファチニブ(ジオトリフ®)
15.オシメルチニブ(タグリッソ®)
16.ALK阻害薬
17.希少遺伝子変異阻害薬
18.ベバシズマブ(アバスチン®、ベバシズマブBS)
19.ラムシルマブ(サイラムザ®)
第4章 肺がん診療のTips
1.抗がん薬の効果判定
2.抗がん薬による骨髄抑制への対処
3.抗がん薬による吐き気・嘔吐への対処
4.抗がん薬による間質性肺炎への対処
5.抗がん薬による腎障害への対処
6.抗がん薬による口内炎・皮膚障害への対処
7.irAEへの対処(3つの柱)
8.肺がんの骨転移への対処
9.肺がんの脳転移への対処
10.肺がんの胸水への対処
11.肺がんの悪液質への対処
12.間質性肺炎合併の肺がんへの対処
付録 肺がんで使うICI併用レジメン
コラム
1.ステロイドの使用場面
2.ステロイドの副作用
3.肺がんで使用する漢方薬
4.irAEは効果の裏返し?
5.新薬の恩恵
6.抗がん薬が効きすぎるのも問題!?
7.beyond PD
8.活用しよう「患者総合支援センター」
9.オピオイド・スイッチング