独習! フローチャート式デジタル脳波判読法
著 | 古谷博和 |
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古賀病院21脳神経内科 | |
飛松省三 | |
福岡国際医療福祉大学・医療学部・視能訓練学科 |
- 【 冊子在庫 】
★2025年1月下旬 発売予定!★
わかりにくい脳波判読をフローチャート式で、わかりやすくレクチャー!
内容紹介
著者らは「脳波は脳の心電図。気軽に臨床を知っている医師が判読するようにしよう」をモットーに、フローチャートに沿って脳波を捉えることにより、ステップバイステップで脳波を判読できる指導法を行っています。
本書は、脳波判読の「総論編」、「各論編」、「応用編」、「Q&A」の4章から構成されており、「背景活動」、「非突発性異常脳波」、「突発性異常・鋭波、棘徐波複合などの判定」などのフローチャートを参考にしながら初学者が脳波判読できる仕組みになっています。
特に、第3章「応用(実際の脳波の判読)」では、「正常脳波」「軽度異常脳波」「中等度異常脳波」「高度異常脳波」の症例を8本の動画から確認できたり、第4章「良い爺〔いいじい(EEG)〕さんのQ&A」では、学生や研修医の先生方からのよくある質問~回答が紹介されていたり、脳波判読の苦手意識を少しでも払拭できる工夫がされています。
脳波判読のエキスパートの実際の脳波の読み解き方、ポイントをフローチャート式で捉えることで、初学者や脳波を読み解くことに苦手意識をもつ方も、独学で脳波を勉強でき、脳波判読への理解も深まり、実臨床に活かせるようになります。
序文
脳波と心電図を比較すると、多くの方にとっては心電図の方が馴染み深いものでしょう。脳も心臓もそれぞれの器官が機能を果たす上で電気的な興奮が重要な役割を果たしており、同じような機能障害が疾患を引き起こすことがあります。例えば心臓に起こる不整脈は、脳にとってのてんかん発作のようなものといえます。もちろんそれによって生じる臨床症状は全く異なりますが、「異常な電気的興奮が種々の臨床症状を起こす」という点では類似点が多いといえます。循環器科の先生には種々の専門分野があって、心電図を読むのが得意な先生、心臓の超音波検査が得意な先生、カテーテル検査や治療が得意な先生など様々な専門の方々がおられます。しかし、循環器系の臨床医で心電図が読めないという方はまずおられないでしょう。
それと同じように、少なくとも中枢神経系を扱う脳神経内科医、脳神経外科医、精神科医、意識障害を扱う救急医などが脳波を読めないということはありえないはずです。しかしながら、脳波に対して苦手意識を持っておられる脳神経系の医師はかなり存在します。中には「脳波は読んだこともないし読みたくもない」「専門家に任せておけば読む必要はない」などという方もおられます。脳波判読に対して苦手意識のある方に、そういった意識を払拭してもらいたいと思い、「脳波は脳の心電図」というキャッチコピーをつけてみました。長年臨床医をやっていますと本当に脳波は脳の心電図という気がしますし、もっと気軽に検査をして、オーダーした人が人任せでなく自分でも読むようになることが、人間にとって重要な器官である中枢神経系の診療のために必要不可欠だと思います。ただ、心電図は初心者でも独学で習得することは可能ですが、脳波はなかなか独学での習得は難しく、できれば脳波判読に慣れている人が実際に判読している様子を見学することがスキルアップのためには重要です。このため初心者にとって脳波判読に足を踏み入れるには高いハードルがあることも事実です。そこで本書では、そういった苦手意識を少しでも払拭するために、いくつかの試みを導入してみました。フローチャートによるステップバイステップの判読がその一つです。
脳波をただの波形分析として捉えると複雑で判読できません。脳機能のダイナミックスを知るには、最小限度のことを頭に入れておくと楽しく脳波を読めるようになります。あまり細かいことにとらわれず、「脳波は脳の心電図」と思って、脳波判読のポイントをフローチャート式にしてみたのが、本書の狙いです。波形を見て、少しでもステップバイステップで脳波を読み解けるように解説しました。このために脳波のモンタージュは主として基準電極導出法と、縦の双極導出法、横の双極導出法の三つに限定しています。本書で特にモンタージュの図が出ていない場合は、この順番で提示されています。
さらに脳波の判読会で学生さんや研修医の先生方から提示された質問を、「良い爺(EEG)さんのQ&A」として最後に記載しました。なかなか質問しにくい素朴な質問を中心に載せていますので、参考にしていただけましたら幸いです。
本書を読んで、脳波判読を自分でやってみようという医療従事者が少しでも増えてくれることを願っています。
2024年12月
古谷博和
飛松省三
目次
はじめに
略語一覧
第1章 総論
脳波と画像の関係
脳波の基本的知識
Ⅰ.脳波の発生機序
Ⅱ.正常脳波
脳波の導出法
Ⅰ.電極の配置
Ⅱ.電位の検出
Ⅲ.導出法と電位分布
Ⅳ.脳波判読でよく使われる用語
Ⅴ.脳波判読を始める前に
Ⅵ.具体的なマッピングのやり方
脳波の賦活法
Ⅰ.種々の賦活法
Ⅱ.過呼吸(hyperventilation)
Ⅲ.光刺激(photic stimulation)
Ⅳ.音刺激
Ⅴ.痛み刺激
Ⅵ.睡眠賦活(sleep activation)
睡眠脳波
Ⅰ.成人の睡眠脳波
Ⅱ.第1期(入眠期、N1)
Ⅲ.第2期(軽睡眠期、N2)
Ⅳ.第3期、第4期(深睡眠期、N3)
Ⅴ.レム(REM)睡眠
第2章 各論
背景活動の判読
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.意識障害や覚醒度低下の判定
Ⅲ.アーチファクトの判別
Ⅳ.背景活動の判定
非突発性異常
Ⅰ.非突発性異常の大雑把な判読
Ⅱ.徐波の判読
Ⅲ.代表的な徐波の判読(間欠的律動的徐波)
突発性異常
Ⅰ.てんかん発作と脳波
Ⅱ.てんかん焦点の決定
Ⅲ.正常亜型(normal variants)の判定
Ⅳ.てんかんの発作型と脳波の関係〔てんかん新分類(2017)〕
Ⅴ.てんかん焦点の決定
第3章 応用(実際の脳波の判読)/動画付
正常脳波
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
軽度異常脳波
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
中等度異常脳波(その1)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
中等度異常脳波(その2)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床所見との相関
中等度異常脳波(その3)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
中等度異常脳波(その4)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.過呼吸賦活
Ⅲ.睡眠脳波
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
高度異常脳波(その1)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.音刺激
Ⅲ.痛み刺激
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
高度異常脳波(その2)
Ⅰ.背景活動の判読
Ⅱ.音刺激
Ⅲ.痛み刺激
Ⅳ.光刺激
Ⅴ.総合判定
Ⅵ.臨床との相関
第4章 良い爺〔いいじい(EEG)〕さんのQ&A
Q1:なぜ、判定に時間とテクニックが必要な双極導出法で判読しなければならないのですか?
Q2:それでは、双極導出法だけで脳波を判読すれば、基準電極導出法は不要ということになり
ませんか?
Q3:脳波の判読技術をスキルアップするためには、どうすれば良いでしょうか?
Q4:脳波を丁寧に見ていると、結構突発性異常のような波をたくさん見つけてしまい、全部の脳波が異常に見えてきてしまいます。どのように判定すればいいのでしょうか?
Q5:「健常者でもてんかん型の異常が出る」といわれると、ますますわからなくなってきました。いったいどこまでが正常で、どこまでが病的なのでしょうか?
Q6:てんかん発作の診断で、脳波所見と臨床所見の二つを兼ね合わせて考えるというのは、どういう意味でしょうか?
Q7:「てんかん発作を起こした人すべてに脳波異常が見られるわけではない」とのことですが、これは、どういう病態を意味しているのですか?
Q8:それではFIASはどのような症状を呈する症例で疑い、どのように検査を行って確定診断すれば良いのですか?
Q9:高齢初発のFIASは認知症と間違われやすいとのことですが、どのような臨床所見や脳波所見に注意して診察していけば良いのでしょうか?
Q10:意識レベルが低下している患者さんの診察を頼まれることが多いのですが、ベッドサイドで刺激を与えて反応を見ても、この患者さんが「意識障害」なのか、「傾眠状態」なのか、「正常の睡眠で深睡眠の状態」なのか迷うことがよくあります。どうやって鑑別すれば良いのでしょうか?
Q11:実際に意識障害の患者さんを診ていて困ることは、「この患者さんは今後良くなるのか、悪くなるのか。良くなった場合でも脳の機能に後遺症が残らないのか」などといった質問を、主治医や患者さんの家族から浴びせられることです。脳波検査も含めてどのように対処すれば良いのでしょうか?
Q12:認知症や軽微な意識障害の鑑別に脳波が有用とのことですが、それでは高次脳機能障害
の鑑別に脳波は有用でしょうか?
Q13:End of chain現象という言葉がよく出てきますが、これについてもう少し詳しく説明してください。
Q14:「耳朶の活性化」という言葉がよく出てきますが、これはどういうことですか?
参考文献
索引
おわりに
著者プロフィール