NICUスタッフのための新生児透析スターターポケットブック
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★2025年2月下旬 発売予定!★
サラッと読めて、実臨床に役に立つ 新生児透析のポケットブック
内容紹介
本書は、NICUに従事する医師、看護師、臨床工学技士の方々を主な対象とした、NICUにおける血液浄化療法の実践的なポケットブックです。新生児の急性血液浄化は特殊で、現場では、大人の透析に慣れた医師・看護師・臨床工学技士でも、不安に思うことが多いです。
その中、筆者らは、過去の実践経験をもとに、独自に「血液浄化療法マニュアル」を作成されました。今回、それを踏まえ、NICUで血液浄化療法を行う際に知っておくべき必要最低限のエッセンスを簡潔にまとめました。初心者でも使いやすく、基本や気を付けるポイントがわかります。
新生児の急性血液浄化は基本を押さえれば、NICUの治療選択肢を広げる救命手段の一つです。本書より、NICUの血液浄化療法が「ニッチで、マニアックで、一部の専門家だけが行うことができる特殊な治療である」といった固定概念を打破できればと考えます。NICUに所属する医師・医療者にとって、安全な血液浄化療法の提供を助ける一冊となるでしょう。
序文
本書を手にとって読んで下さる皆さまは、きっと新生児医療に従事している医師、看護師、またはNICUのある医療機関にお勤めの臨床工学技士の方々が大部分ではないかと想像しています。そのような皆さまに「NICUで血液浄化療法を行う際にサラッと読めて、実臨床に役に立つようなハンドブックを!」という想いから本書の制作が始まりました。筆者もかつてそうであったように、新生児に対して血液浄化療法を行う場面では、治療効果を期待する半面、安全に行うことができるのかといった不安も大きいものです。そういった意味では、NICUで本療法を行うこと自体がなかなかハードルの高いことなのかもしれません。
実際はNICUで血液浄化療法が必要になる患者さんの数は、そんなに多くないと思います。しかし、そのような患者さんがいた場合は恐らく最重症であり、可及的速やかに最善の治療を必要とすることでしょう。特に新生児期の急性腎障害、敗血症性ショック、先天代謝異常症、肝不全など、生命予後や神経学的予後に直結する疾患群に対しては、本療法がまさにピンチを打開するための「切り札」になる重要な治療手段となります。
一方で、ゼロから血液浄化の原理を理解し、手技を確立するのは大変骨が折れます。筆者も若い頃、本書の共著者である平野大志先生と共に透析回路の組み立てからプライミング、そして導入から治療終了まで、たくさんの血液浄化療法を要する症例を経験しました。しかし当時は、小児(特に新生児)の血液浄化療法に特化した書籍はほとんどなかったため、一つ一つの症例を振り返りながら二人で勉強し、独自に「俺らの血液浄化療法マニュアル」を作成していたのを思い出します。あれから20年が経ち、血液浄化療法の酸いも甘いも経験した私たちの経験則は、本書の所々に反映されているかと思います。
本書では、一定の客観性とエビデンスは示しつつも、筆者らの経験を元にNICUで血液浄化療法を行うにあたって知っておくべき必要最低限のエッセンスを述べるにとどめました。そのため、あえて「重箱の隅」のような詳細な情報は割愛しています。
もし本書だけでは物足りない読者の皆さまがいらっしゃいましたら、専門的な教科書や成書、各種ガイドラインなどもあわせてご参照いただければと思います。
本書によって、新生児に対する血液浄化療法は「ニッチで、マニアックで、一部の専門家だけが行うことができる特殊な治療である」という、これまでの固定概念を打破したいと思っています。医師・看護師・臨床工学技士を中心とした多職種の皆さまに楽しみながら活用していただき、必要な患者さんに対して効果的で安全な血液浄化療法を提供していただけるのであれば、大変嬉しく思います。
最後に、本書を一緒に執筆してくださった20年来の尊敬する戦友である東京慈恵会医科大学小児科学講座・平野大志先生、企画から出版まで多大なるご尽力頂きました株式会社・金芳堂の西堀智子さま、河原生典さま、およびすべての関係する皆さまに末筆をお借りして深謝申し上げます。
令和7年1月吉日
めずらしく静寂に包まれたNICUの医師控室にて
順天堂大学医学部附属浦安病院小児科
NICU/GCU病棟医長
西﨑直人
目次
用語・略語一覧
第1章 血液浄化療法の基礎知識
1 透析の原理 ~拡散とは? 濾過/対流とは? 吸着とは?~
はじめに
拡散(diffusion)
濾過/対流(convection)
吸着(adsorption)
まとめ
2 血液浄化療法の種類
持続的血液透析(continuous hemodialysis:CHD)
はじめに
CHDの特徴
「除水を行わないCHD」と「除水を行うCHD」の違い
除水を行うCHDの注意点
まとめ
3 血液浄化療法の種類
持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)
はじめに
CHFの特徴
CHFの注意点
まとめ
4 血液浄化療法の種類
持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)
はじめに
CHDFの特徴
CHD、CHF、CHDFをどう選択するのか?
まとめ
5 血液浄化療法の種類
血漿交換(plasma exchange:PE)
はじめに
血漿交換(plasma exchange:PE)とは
単純PEの回路
PEの適応疾患
補液(置換液)の選択
補液(置換液)量の設定
PEを新生児に行う際の注意点
Plasma hemodiafiltration(PHDF)
まとめ
6 血液浄化療法の種類
腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)
はじめに
PDの適応
PDの導入に際し気をつけるべき疾患と病態
PDの導入準備 ~カテーテルの選択と留置方法~
PDの導入準備 ~回路~
PDの導入準備 ~透析液~
PDの処方例
PDの合併症
まとめ
7 血液浄化療法を要する病態
はじめに
renal indication
non-renal indication
まとめ
8 血液浄化療法に必要な準備 ~道具・薬剤編~
はじめに
必要な準備物品
抗凝固薬
まとめ
9 血液浄化療法に必要な準備 ~カテーテル・合成血液編~
はじめに
物品の準備
透析用カテーテルの種類、管理のコツ
回路内充填(プライミング)・合成血液の作り方
まとめ
10 体外循環を用いる血液浄化療法の2大合併症
はじめに
開始時低血圧(イニシャルドロップ:initial drop)
体温管理
まとめ
11 血液浄化療法施行中の注意点
はじめに
血液浄化装置(コンソール)の回路内圧を理解しよう
よくあるアラームへの対応
透析中の薬物動態
血液浄化療法中の薬物投与に影響を与える因子
まとめ
12 血液浄化療法施行中の抗凝固薬の使い方
はじめに
抗凝固薬の種類
凝固能の評価
まとめ
13 血液浄化療法終了時
はじめに
まとめ
第2章 症例から考える透析の実際
1 急性腎障害(acute kidney injury:AKI)
症例
診断
透析導入基準
透析の実際
ポイント
注意点
まとめ
2 先天代謝異常症(特に高アンモニア血症)
症例
診断
透析導入基準
透析の実際
ポイント
注意点
まとめ
3 敗血症/敗血症性ショック(sepsis/septic shock)
症例
診断
透析導入基準
透析の実際
ポイント
注意点
まとめ
4 急性肝不全(acute liver failure:ALF)
症例
診断、透析導入基準
透析の実際
ポイントと注意点
まとめ
5 心臓外科周術期における血液浄化療法
症例
心臓外科周術期におけるAKI発症のメカニズム
透析導入基準
透析の実際
ポイントと注意点
まとめ
資料集
新生児に対し血液浄化療法を要する病態
新生児AKIの原因・病態
代表的な新生児急性腎障害(AKI)の診断基準・分類
小児・新生児のSIRSの基準
血液浄化療法で除去できる主な溶質の分子量
体外循環による血液浄化療法で用いられる主な抗凝固薬
主な抗凝固薬の投与量の目安
Non-renal indication 症例に対する血液濾過用補充液の電解質補正の例
コンソールの主な圧力の解釈と異常時(アラーム発生時)の対応
各種病態の透析導入基準・条件設定のまとめ
COLUMN 1 保護者への説明のポイント
COLUMN 2 透析中に持続投与している薬剤は増やしたほうが良いのか?
COLUMN 3 ヒトのネフロン数と腎予後
COLUMN 4 なぜ新生児黄疸の治療に透析を行わず、交換輸血をするのか?
COLUMN 5 重症新生児仮死に伴う急性腎障害(AKI)
COLUMN 6 急性腎障害(AKI)に罹患した児の予後
COLUMN 7 極・超低出生体重児に対するバスキュラーアクセスの工夫
索引
著者プロフィール