こういうときはこうする! 腫瘍糖尿病学Q&A がん患者さんの糖尿病診療マニュアル
第2版

  • 未刊
定価 6,930円(本体 6,300円+税10%)
編著大橋健
国立がん研究センター中央病院総合内科(糖尿病腫瘍科)総合内科長
北澤公
がん研有明病院糖尿病・代謝・内分泌内科副部長
A5判・352頁
ISBN978-4-7653-2053-5
2025年05月 刊行
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未刊
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★2025年5月下旬 発売予定!★

がんと糖尿病を併発している患者さんを受けもつすべての医療従事者に読んでほしい! 初版からボリュームアップした“腫瘍糖尿病学”のリニューアル版が登場

内容紹介

第68回日本糖尿病学会年次学術集会(5月29~31日・岡山市)にて先行発売予定!

発症者数が多く、また糖尿病はがんの発症リスク因子であることから、合併することが多い「癌+糖尿病」患者の診療マニュアルである『こういうときにはこうする! 腫瘍糖尿病Q&A がん患者さんの糖尿病診療マニュアル』(2020年7月刊行)のリニューアル版が完成しました。

第2版では、最新のエビデンスを反映して第1版のアップデートを図るとともに、各執筆者の豊富な臨床経験をもとにした、より実践的な内容が売りとなっています。使用頻度の増加しているSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬については、新たにQ&Aを設けて解説しました。

最新知識やエビデンスを可能な限り踏まえつつ、実地臨床でどのようにすればよいのか、第一線で活躍する医師のエキスパート・オピニオンを通して、がん治療中の糖尿病管理に関するベスト・プラクティスをQ&A形式で一冊に集約しました。若手医師はもちろん、糖尿病専門医のいないがん専門施設で糖尿病管理に奮闘されているがん専門医の先生方にとっても「今日から使える」内容となっています。

序文

本書を手に取ってくださり、ありがとうございます。「腫瘍糖尿病学」という言葉を初めてタイトルに掲げて5年前に刊行した第1版は、多くの読者にご活用いただき、少なからぬ反響がありました。

この間にも、糖尿病とがんの双方を抱える患者さんを取り巻く状況は大きく変化しています。糖尿病を持つ人の死因は、米国では依然として心血管疾患が主ですが、英国やデンマーク、香港では、がんによる死亡が心血管疾患を上回るようになりました。日本が先行していた「糖尿病を持つ人ががんで亡くなる時代」が、世界的に到来しているのです。また、糖尿病治療薬の進歩により、がん治療中の糖尿病管理の選択肢も広がっています。一方、免疫関連有害事象として1型糖尿病を発症しうる免疫チェックポイント阻害薬は、より多くのがんに対して使用されるようになりました。さらに、がん悪液質治療薬のアナモレリンや、乳がんに用いられるAKT阻害薬のカピバセルチブなど、高血糖や糖尿病を引き起こす可能性のある新たな薬剤も登場しています。こうした動向を踏まえ、日本糖尿病学会では日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本がんサポーティブケア学会と合同で、がん治療中の糖尿病管理に関するコンセンサス・ステートメントの作成を進めているところです。

「腫瘍糖尿病学」の重要性はますます高まっています。本書の第2版では、最新のエビデンスを反映して内容のアップデートを図るとともに、各執筆者の豊富な臨床経験をもとに、より実践的な内容となるよう努めました。特に、使用頻度の増加しているSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬については、新たにQを設けました。また、糖尿病と同様にがんと密接に関連する肥満についても、詳しく取り上げています。

がん患者さんの糖尿病診療では、がん治療全体の流れを把握し、各局面に応じた柔軟な対応が求められます。がん治療中の糖尿病管理は、単なる併存疾患の管理にとどまらず、がん治療の質や患者さんの予後にも大きく関わる重要なサポーティブケアの一環です。本書を通じて、がんと糖尿病、それぞれの治療に携わる医療者の間でそうした理解が深まり、相互の連携が促進されることで、診療の質のさらなる向上につながれば幸いです。

本書をより良いものにするため、ぜひ忌憚のないご意見をお寄せください。皆さんとともに積み重ねる取り組みが、今後の「腫瘍糖尿病学」のさらなる発展につながると信じています。

2025年5月
大橋健
北澤公

目次

Ⅰ がんと糖尿病の基礎知識
第1章 がんと糖尿病の関係
Q 糖尿病患者さんはがんになりやすいのか?
Q 糖尿病患者さんのがんを早期発見するにはどのようなことに注意したらよいか?
Q 糖尿病を合併していることでがんの予後に影響はあるのか?
Q 膵がんと糖尿病の関係は?
Q NASHからの肝がん発症と糖尿病の関係は?

第2章 糖尿病治療薬
Q がんのリスクを増やす糖尿病治療薬はあるのか?
Q “がん治療に併用する”という観点では、各種糖尿病治療薬の特徴をどのようにとらえたらよいか?

第3章 がん患者さん特有の問題
Q 糖尿病患者さんで特に注意すべき感染症はどのようなものがあるのか?
Q がん患者さんに特有の心理とは?
Q がん患者さんの栄養管理をどのように行うのか?

第4章 糖尿病専門医へのコンサルテーション
Q がん患者さんに未治療糖尿病が発見された場合、糖尿病専門医への紹介は全例行うべきか? 紹介する場合、事前にやっておくべきことは何か?

第5章 食事療法
Q 食事療法として糖質制限食を行ってもよいか?(がん患者さんが自己判断で糖質を減らしてしまうこともしばしばあるが、どうか?)
Q がん患者さんについては糖尿病の食事療法を緩和すべきか?

第6章 薬物療法
Q 糖尿病が非専門であるがん治療医でも比較的安全に使える糖尿病治療薬はどのようなものがあるか?
Q がん治療で用いられる薬剤で、副作用として血糖値を上昇させるものには何があるか?
Q 強化インスリン療法とはどのような治療か?
Q いわゆるスライディングスケールはどのような場面で使ってよいのか?
Q 中心静脈栄養を行う際に、インスリンはどのような経路で投与するべきか?
Q がん患者さんへのGLP-1受容体作動薬はどのように使うべきか?[周術期]
Q がん患者さんへのGLP-1受容体作動薬はどのように使うべきか?[化学療法時]
Q がん患者さんへのSGLT2阻害薬はどのように使うべきか?[周術期]
Q がん患者さんへのSGLT2阻害薬はどのように使うべきか?[化学療法時]

第7章 検査
Q ビグアナイド内服中の症例で、緊急な場合は造影CTを施行してもよいか?
Q FDG-PETを行う際の血糖管理や使用する糖尿病治療薬の注意点は?

Ⅱ 周術期の血糖管理
第8章 手術前の血糖管理
Q 手術可能なHbA1c、血糖値の目安はどのくらいか?
Q 手術の前に行っておくべき糖尿病合併症検査は?
Q 手術を行う症例に対してどのようにインスリン治療を行うか?
Q 血糖コントロールが悪い場合、手術可能なレベルに持っていくまでどれくらいの期間が必要か?
Q 経口糖尿病薬のみで血糖コントロールが良好な場合、どの薬剤を内服していてもすぐに手術可能か?
それとも必ずインスリン導入をしないといけないのか?
Q 尿糖陽性は術前血糖コントロールの指標としてどう判断するか?(SGLT2阻害薬使用例も今後さらに増えることが予想されるため)
Q 緊急手術が必要な症例が血糖コントロール不良だった場合、そのまま手術を施行してよいのか?
Q 糖尿病の重症度と周術期リスクに関連はあるのか?

第9章 手術後の血糖管理
Q 胃・食道切除後の血糖コントロールはどのように行うのか?
Q 膵切除後の血糖管理はどのように行うのか?
Q 糖尿病患者さんに経腸栄養を使用する際、糖質制限経腸栄養製品(グルセルナ®など)を使用することがあるが、尿ケトン体の上昇はどれくらいまで許容できるか?
Q 胃瘻や腸瘻を使用する際にインスリンはどのように使うのか? また経口糖尿病薬は使えないのか?
Q 術後早期から厳格な血糖コントロールを目指すべきか? 術後早期に使う薬剤として、インスリン以外に経口薬を使用してもよいか?
Q ICU管理が必要な重症患者において、Harris-Benedictの式ではストレス度が高い場合エネルギー必要量が増えるが、どのようにエネルギー量の設定を行うか?

Ⅲ がん化学療法中の血糖管理
第10章 ステロイド投与時の血糖管理
Q ステロイド投与による高血糖に対してどのようにインスリン治療を行うか?
Q がん化学療法中の血糖コントロールを厳密にしたほうがよいというエビデンスはあるか?
Q ステロイドを含むレジメンを短期間だけ行うときでも、必ずインスリン注射による厳格な管理が必要か?

第11章 消化器症状が出たときの対応
Q 糖尿病症例にオランザピン(制吐剤)を使用してよいか?
Q 抗がん剤治療後に食欲がなくなったときの血糖管理はどのように行うか?
Q 外来化学療法を行っている糖尿病患者さんにシックデイ対応としてどのような指導を行うか?

第12章 その他の副作用関連
Q 糖尿病をもつ症例に、末梢神経障害の副作用を起こし得る抗がん剤を使用してよいか?
Q 血管新生阻害薬で、心血管イベントなど糖尿病内科医が注意すべきことはあるか?
Q インスリン自己注射や、自己血糖測定が抗がん剤の副作用である皮膚障害と関連することはあるか?

第13章 免疫チェックポイント阻害薬と(劇症)1型糖尿病
Q 免疫チェックポイント阻害薬を投与する症例では、どのような検査を行うことで1型糖尿病(劇症1型を含む)の早期発見につながるか? また患者さんに注意してもらう自覚症状などはあるか?
Q 元来2型糖尿病のある症例に免疫チェックポイント阻害薬を投与することで、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病のような病態をさらに発症することはあるのか?
Q 1型糖尿病以外の内分泌異常にはどのようなものがあるか?

Ⅳ がんと肥満の関係
第14章 高度肥満患者への対応
Q がんと肥満は関係があるのか?
Q 肥満の減量手術はがんのリスクを減らすか?
Q 肥満を合併したがん患者さんの治療中(周術期・化学療法時)の留意点は?

Ⅴ がん終末期(エンドオブライフ)
第15章 終末期
Q 終末期では血糖値の目標をどこにおくのか?
Q 終末期では食事療法をどこまで行うべきか? 血糖上昇を緩やかにできる食事内容は?
Q 終末期でも安全に使える糖尿病治療薬は?
Q 食事が食べられなくなった場合の血糖降下薬の減量、中止の判断は?
Q インスリン治療を行っていた症例はどのように管理するか?

Ⅵ がんサバイバー
第16章 がんサバイバー
Q がんが一旦治癒、寛解した症例では、どのくらいの目標値で血糖を管理するべきか? 使用してよい糖尿病治療薬は?
Q 乳がん、前立腺がんなど比較的長期間のがん治療を行う場合の血糖コントロールの目標は?

Column
調整困難な交絡因子
がん検診の功罪
脂肪肝に対する新しい用語:steatotic liver diseaseについて
血管合併症の評価はどこまで必要か?
カピバセルチブ(トルカプ®)による高血糖・糖尿病ケトアシドーシス
糖尿病がある症例ではステロイドを減量もしくは抜いたレジメンにした方が良いか?
日本人のためのがん予防
GLP-1受容体作動薬のがんリスク低下に関する有用性
スピリチュアルケアとしての血糖コントロール

執筆者一覧

■編著
大橋健   国立がん研究センター中央病院総合内科(糖尿病腫瘍科)総合内科長
北澤公   がん研有明病院糖尿病・代謝・内分泌内科副部長

■執筆者一覧(執筆順)
能登洋   聖路加国際病院内分泌代謝科部長
後藤温   横浜市立大学医学部公衆衛生学教室主任教授
正宗淳   東北大学大学院医学系研究科医学部消化器病態学教授
菊田和宏  東北大学大学院医学系研究科医学部消化器病態学非常勤講師
建石良介  東京大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授
吉岡成人  NTT東日本札幌病院院長
倉井華子  静岡県立静岡がんセンター感染症内科部長
平山貴敏  こころサポートクリニック心療内科・精神科・腫瘍精神科院長
桑原節子  千葉スマイル歯科&矯正歯科理事
須永将広  国立がん研究センター東病院栄養管理室長
鈴木亮   東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学分野主任教授
山田悟   北里大学北里研究所病院糖尿病センター長
岩岡秀明  鎗田病院糖尿病・内分泌内科部長
細井雅之  大阪市立総合医療センター糖尿病・内分泌内科部長
野見山崇  順天堂大学医学部附属静岡病院糖尿病・内分泌内科教授
山﨑知行  大阪国際がんセンター内分泌代謝内科主任部長
五十川陽洋 三井記念病院糖尿病代謝内科部長
寺内康夫  横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教室教授・診療科部長
堀井三儀  沖縄県立宮古病院総合診療科
室橋祐子  神奈川県立がんセンター糖尿病・内分泌内科医長
大杉満   国立国際医療センター糖尿病情報センター長
三浦順之助 東京女子医科大学医学部糖尿病・代謝内科学准教授
保科早里  東京女子医科大学病院糖尿病・代謝内科助教
森保道   虎の門病院内分泌代謝科部長
吉嵜友之  三宿病院内分泌代謝科医長
新山道大  三宿病院内分泌代謝科医員
鈴木優矢  虎の門病院内分泌代謝科医員
久保朋子  東北労災病院糖尿病・内分泌・高血圧内科
佐藤源記  東邦大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野院内講師
弘世貴久  東邦大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌学分野教授
西村理明  東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授
山城健二  東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科講師
河合俊英  東京都済生会中央病院糖尿病・内分泌内科部長
渥美義大  株式会社Linc’well
島田朗   埼玉医科大学内分泌内科・糖尿病内科教授
及川洋一  埼玉医科大学内分泌内科・糖尿病内科教授
杉原仁   日本医科大学名誉教授
安藤久恵  東京臨海病院内分泌代謝・糖尿病内科医長

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