第3章 関節リウマチ以外の膠原病の薬物療法
アメリカリウマチ学会(ACR)でANCA関連血管炎(多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎)、結節性多発動脈炎、巨細胞性動脈炎・高安動脈炎のガイドラインが改定されました。 下記にそれぞれ改訂内容をまとめておりますので、最新情報をご参考ください。
多発血管炎性肉芽腫症/顕微鏡的多発血管炎
2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis
Table GPA、MPA、EGPAにおける推奨およびungraded position statementsに用いられる用語の定義
用語 | 定義 |
---|---|
病状 | |
活動性疾患(active disease) | 以前の臓器病変とは別のGPA、MPA、EGPAによる臨床徴候 and/or 症状(新規・持続・増悪) |
重症(severe disease) | 生命または臓器を脅かす血管炎徴候(例:肺胞出血、糸球体腎炎、中枢神経系血管炎、多発性単神経炎、心病変、腸間膜虚血、四肢・手指虚血) |
非重症(non-severe disease) | 生命や臓器を脅かす症状を伴わない血管炎徴候(例:副鼻腔炎、喘息、軽度の全身症状、合併症のない皮膚病変、軽度の炎症性関節炎) |
寛解(remission) | 免疫抑制療法の有無にかかわらず、GPA、MPA、EGPAに起因する臨床的徴候または症状がない |
難治性疾患(refractory disease) | 適切な免疫抑制剤の投与にもかかわらず、活動性疾患が持続 |
再発(relapse) | 寛解後に活動性疾患が再発 |
用語 | 定義 |
---|---|
治療 | |
グルココルトコイド(GCs)静注パルス療法 | メチルプレドニゾロン500~1,000 mg/日(成人)または30 mg/kg/日(小児:最大1,000 mg/日)または同等量を3~5日間静注 |
高用量経口GCs療法 | 成人:プレドニゾロン換算1 mg/kg/日(80 mg/日まで) 小児:1~2 mg/kg/日(60 mg/日まで) |
寛解導入療法 | |
メトトレキサート(MTX)(注) | 25mg/週まで(経口、皮下注) |
アザチオプリン(AZP) | 2 mg/kg/日まで |
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)(注) | 1回1,500mgを1日2回まで(経口) |
シクロフォスファミド | 最大2mg/kg/日(経口)を3~6か月間投与または15mg/kg(静注)を2週間に1回、3回間欠投与した後、15mg/kg(静注)を3週間に1回、少なくとも3回間欠投与(成人) |
リツキシマブ | 成人:375mg/m2(点滴)を毎週4回、または1日目と15日目に1,000mgを投与 小児:375mg/m2(点滴)を毎週4回、または体表面積が1.5m2以下の患者には575mg/m2、体表面積が1.5m2を超える患者には750mg/m2を投与し、1回あたりの最大量は1g(いずれも1日目と15日目の2回投与) |
メポリズマブ(注) | 成人:4週間ごとに300mg皮下注 |
寛解維持療法 | |
MTX(注)、AZP、MMF(注) | 寛解導入療法と同量 |
リツキシマブ | 成人:500mg(点滴)を6か月ごと、または1g(点滴)を4か月ごと、 小児:250mg/m2(点滴)を6か月ごと |
メポリズマブ(注) | 4週間ごとに300mg皮下注 |
オマリズマブ(注) | 2~4週ごとに300~600mg皮下注 |
(注)MTX、MMF、メポリズマブ、オマリズマブはGPA/MPAには本邦未承認
Table GPA/MPAのRecommendations(推奨)/statements(声明)(寛解導入)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
活動性のある(active disease)重症例(severe)における寛解導入 | |
活動性のある重症GPA/MPA患者では、寛解導入のためにシクロホスファミドよりもリツキシマブの投与を条件付きで推奨する。 | Very low to moderate |
活動性糸球体腎炎を伴うGPA/MPA患者では、寛解導入療法においてルーチンとして血漿交換を*追加しない*ことを条件付きで推奨する。 | Low to high |
肺胞出血を伴う活動性の重症GPA/MPA患者では、寛解導入療法において血漿交換を*追加しない*ことを条件付きで推奨する。 | Low to high |
活動性の重症GPA/MPA患者では、GC静注パルス療法または高用量経口GCいずれも初期治療の一部として処方することができる。(Ungraded position statement) | Very low to moderate |
活動性の重症GPA/MPA患者では、standard-dose GCレジメンよりも、reduced-dose GCレジメンを条件付きで推奨する(別掲)。 | Very low to moderate |
活動性のある(active disease)非重症例(non-severe)における寛解導入 | |
活動性の非重症GPA患者では、シクロホスファミドやリツキシマブよりもMTXによる治療を開始することを条件付きで推奨する。 | Very low to moderate |
活動性の非重症GPA患者では、GC単独よりもMTXとGCによる治療を開始することを条件付きで推奨する。 | Low |
活動性の非重症GPA患者では、AZPとGC、またはMMFとGCよりも、MTXとGCで治療を開始することを条件付きで推奨する。 | Low |
活動性の非重症GPA患者では、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(ST合剤)とGCよりもMTXとGCで治療を開始することを条件付きで推奨する。 | Low |
GCレジメン(Standard-dose vs Reduced dose)
Standard dose (mg1) | Reduced dose (mg1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
Week | <50 kg | 50~75 kg | >75 kg | <50 kg | 50~75 kg | >75 kg |
0 | pulse | pulse | pulse | pulse | pulse | pulse |
1 | 50 | 60 | 75 | 50 | 60 | 75 |
2 | 50 | 60 | 75 | 25 | 30 | 40 |
3~4 | 40 | 50 | 60 | 20 | 25 | 30 |
5~6 | 30 | 40 | 50 | 15 | 20 | 25 |
7~8 | 25 | 30 | 40 | 12.5 | 15 | 20 |
9~10 | 20 | 25 | 30 | 10 | 12.5 | 15 |
11~12 | 15 | 20 | 25 | 7.5 | 10 | 12.5 |
13~14 | 12.5 | 15 | 20 | 6 | 7.5 | 10 |
15~16 | 10 | 10 | 15 | 5 | 5 | 7.5 |
17~18 | 10 | 10 | 15 | 5 | 5 | 7.5 |
19~20 | 7.5 | 7.5 | 10 | 5 | 5 | 5 |
21~22 | 7.5 | 7.5 | 7.5 | 5 | 5 | 5 |
23-52 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
>52 | Investigator’s local practice | Investigator’s local practice |
1 mg of prednisone or prednisolone, according to local practice
(Modified from N Engl J Med 2020;382:622-31.)
Table GPA/MPAのRecommendations(推奨)/statements(声明)(寛解維持療法)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
寛解維持療法 | |
シクロホスファミドまたはリツキシマブによる治療後に寛解に至った重症GPA/MPA患者には、寛解維持のためにMTXまたはAZPよりもリツキシマブによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low to moderate |
GPA/MPA患者が寛解維持のためにリツキシマブを投与されている場合、再投与の目安としてANCA力価やCD19陽性B細胞数を用いるのではなく、定期的な再投与を条件付きで推奨する。 | Very low to low |
シクロホスファミドまたはリツキシマブによる治療後に寛解した重症GPA/MPA患者には、寛解維持のためにMMFよりもMTXまたはAZPによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low to moderate |
シクロホスファミドまたはリツキシマブによる治療後に寛解した重症GPA/MPA患者には、寛解維持のためにレフルノミドよりもMTXまたはAZPによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low to low |
寛解に至ったGPA患者には、寛解維持のためにST合剤よりもMTXまたはAZPによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low to low |
寛解に至ったGPA患者には、寛解維持を目的とした他の治療法(リツキシマブ、AZP、MTXなど)にST合剤を追加することを条件付きで推奨する。 | Low to moderate |
リツキシマブによる寛解維持療法を受けているGPA/MPA患者で、低ガンマグロブリン血症(IgG 300 mg/dL未満)と重症感染症の再発が見られる場合、免疫グロブリンの補充を条件付きで推奨する。 | Very low |
GPA/MPAにおけるGC休薬後の寛解維持療法の期間は、患者の臨床状態や価値観に応じて決定すべき。(Ungraded position statement) | Low to moderate |
GPA/MPAにおけるGC療法の期間は、患者さんの臨床状態や価値観に応じて決定すべき。(Ungraded position statement) | Low to moderate |
Table GPA/MPAのRecommendations(推奨)/statements(声明)(再発・難治例)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
再発例の治療 | |
重症例の再発で、寛解維持のためのリツキシマブの投与を受けていないGPA/MPA患者には、寛解再導入のためにシクロホスファミドよりもリツキシマブによる治療を条件付きで推奨する。 | Low |
寛解維持のためのリツキシマブ投与中に重篤な疾患症状を伴う再発を経験したGPA/MPA患者に対しては、寛解再導入のためのリツキシマブの追加投与よりも、リツキシマブからシクロホスファミドへの切り替えを条件付きで推奨します。 | Very low |
難治例の治療 | |
寛解導入のためのリツキシマブまたはシクロホスファミドによる治療に抵抗性を示す重症GPA/MPA患者には、2つの治療法を併用するよりも、もう一方の治療法に切り替えることを条件付きで推奨する。 | Very low |
寛解導入療法に抵抗性を示すGPA/MPA患者には、現在の治療にIVIGを追加することを条件付きで推奨する。 | Low to moderate |
Table GPA/MPAのRecommendations(推奨)/statements(声明)(副鼻腔、上気道、腫瘤性病変の治療)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
副鼻腔病変があるGPA患者には、鼻腔洗浄や鼻腔内の局所療法(抗生物質、潤滑剤、GC)が有効かもしれない。(Ungraded position statement) | Very low to low |
寛解期のGPA患者で、鼻中隔欠損および/または鼻梁崩壊がある場合、希望があれば、条件付きで再建手術を推奨する。 | Low |
GPA患者で、声門下 and/or 気管支内の組織に炎症により狭窄がある場合は、GC注射のみの外科的拡張よりも、免疫抑制薬を用いた治療を条件付きで推奨する。 | Low |
GPAと腫瘤病変(眼窩偽腫瘍や耳下腺、脳、肺の腫瘤など)を有する患者には、免疫抑制療法による腫瘤病変の外科的切除よりも、免疫抑制療法による治療を条件付きで推奨しています。 | Low |
GPAと腫瘤病変(眼窩偽腫瘍や耳下腺、脳、肺の腫瘤など)を有する患者には、免疫抑制療法併用下で腫瘤病変の外科的切除よりも、免疫抑制療法による治療を条件付きで推奨する。 | Very low to low |
Table GPA/MPAのRecommendations(推奨)/statements(声明)(その他)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
GPA/MPA患者では、ANCA力価の結果のみに基づいて免疫抑制薬を*投与しない*ことを条件付きで推奨する。 | Very low |
リツキシマブまたはシクロホスファミドの投与を受けているGPA患者には、Pneumocystis jirovecii肺炎の予防を行うことを条件付きで推奨する。 | Low |
GPA/MPAが寛解に至った、ステージ5の慢性腎臓病の患者には、腎移植に向けての評価を行うことを条件付きで推奨する。 | Low |
他の免疫調整療法を受けられない活動性GPA/MPA患者には、IVIGの投与を条件付きで推奨する。 | Low |
静脈血栓症を発症したGPA/MPA患者にとって、最適な抗凝固療法の期間は不明である。(Ungraded position statement) | Very low |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis(EGPA)
Table EGPAのRecommendations/Statements(寛解導入、寛解維持)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
活動性のある(active disease)重症例(severe)における寛解導入 | |
活動性があり重症のEGPA患者には、初期治療としてGCパルス療法または高用量経口GC療法のいずれかが処方出来るかもしれない。(Ungraded position statement) | Very low |
活動性があり重症のEGPA患者には、寛解導入療法としてシクロフォスファミドまたはリツキシマブのいずれかが処方出来るかもしれない。(Ungraded position statement) | Very low |
活動性があり重症のEGPA患者には、寛解導入療法として、メポリズマブよりもシクロフォスファミドまたはリツキシマブを条件付きで推奨する。 | Low |
活動性のある(active disease)非重症例(non-severe)における寛解導入 | |
活動性の非重症のEGPA患者には、GCとの併用薬として、MTX、AZP、またはMMFとGCとの併用よりも、メポリズマブとGCとの併用で開始することを条件付きで推奨する。 | Very low to low |
活動性の非重症のEGPA患者には、GC単独よりも、MTX、AZP、またはMMFとGCを併用した治療を条件付きで開始することを推奨する。 | Low |
活動性の非重症のEGPA患者には、GCとの併用薬として、シクロホスファミドやリツキシマブとGCよりも、MTX、AZP、またはMMFとGCによる治療を開始することを条件付きで推奨する。 | Very low to low |
寛解維持療法 | |
シクロホスファミド療法で寛解した重症EGPA患者には、寛解維持として、リツキシマブよりもMTX、AZP、またはMMFによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low |
寛解期に至った重症EGPA患者には、寛解維持として、メポリズマブよりもMTX、AZP、またはMMFによる治療を条件付きで推奨します。 | Very low |
EGPAにおけるGC療法の期間は、患者さんの臨床状態や価値観に応じて決定すべき。(Ungraded position statement) | Very low to low |
用語 | 定義 |
---|---|
治療 | |
グルココルトコイド(GCs)静注パルス療法 | メチルプレドニゾロン500~1,000 mg/日(成人)または30 mg/kg/日(小児:最大1,000 mg/日)または同等量を3~5日間静注 |
高用量経口GCs療法 | 成人:プレドニゾロン換算1 mg/kg/日(80 mg/日まで) 小児:1~2 mg/kg/日(60 mg/日まで) |
寛解導入療法 | |
メトトレキサート(MTX)(注) | 25mg/週まで(経口、皮下注) |
アザチオプリン(AZP) | 2 mg/kg/日まで |
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)(注) | 1回1,500mgを1日2回まで(経口) |
シクロフォスファミド | 最大2mg/kg/日(経口)を3~6か月間投与または15mg/kg(静注)を2週間に1回、3回間欠投与した後、15mg/kg(静注)を3週間に1回、少なくとも3回間欠投与(成人) |
リツキシマブ(注) | 成人:375mg/m2(点滴)を毎週4回、または1日目と15日目に1,000mgを投与 小児:375mg/m2(点滴)を毎週4回、または体表面積が1.5m2以下の患者には575mg/m2、体表面積が1.5m2を超える患者には750mg/m2を投与し、1回あたりの最大量は1g(いずれも1日目と15日目の2回投与) |
メポリズマブ | 成人:4週間ごとに300mg皮下注 |
寛解維持療法 | |
MTX(注)、AZP、MMF(注) | 寛解導入療法と同量 |
リツキシマブ(注) | 成人:500mg(点滴)を6か月ごと、または1g(点滴)を4か月ごと、 小児:250mg/m2(点滴)を6か月ごと |
メポリズマブ | 4週間ごとに300mg皮下注 |
オマリズマブ(注) | 2~4週ごとに300~600mg皮下注 |
(注)MTX、MMF、リツキシマブ、オマリズマブはEGPAには本邦未承認
Table EGPAのRecommendations/Statements(再発例、その他)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
再発例の治療 | |
シクロホスファミドにより寛解導入が成功した後、再発により重症病態を呈したEGPA患者には、寛解再導入のためにシクロホスファミドよりもリツキシマブによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low |
リツキシマブにより寛解導入が成功した後、再発により重症病態を呈したEGPA患者には、寛解再導入のためにシクロホスファミドよりもリツキシマブによる治療を条件付きで推奨する。 | Very low |
MTX、AZP、またはMMFの投与を受けながら、再発により非重症病態(喘息 and/or 副鼻腔疾患)を経験したEGPA患者には、他の薬剤への切り替えよりもメポリズマブの追加を条件付きで推奨する。 | Very low |
低用量GCの投与を受け、他の治療を受けていないにもかかわらず、再発により非重症病態(喘息 and/or 副鼻腔疾患)を経験したEGPA患者には、MTX、AZP、またはMMFの追加よりも、メポリズマブの追加を条件付きで推奨する。 | Very low |
血清IgE値が高く、MTX、AZP、またはMMFの投与中に再発により非重症病態(喘息 and/or 副鼻腔疾患)を経験したEGPA患者には、オマリズマブの追加よりもメポリズマブの追加を条件付きで推奨しています。 | Very low |
その他 | |
ロイコトリエン阻害剤を投与されている患者が新たにEGPAと診断された際には、ロイコトリエン阻害剤を中止するよりも継続することを条件付きで推奨する。 | Very low |
活動性の喘息 and/or 副鼻腔疾患を有するEGPA患者には、ロイコトリエン阻害剤の使用は禁忌ではない。(Ungraded position statement) | Very low |
EGPAの患者さんには、診断時に心エコー検査を行うことを条件付きで推奨する。 | Very low |
EGPA患者には、治療の指針としてFive-Factor Scoreの使用を条件付きで推奨しています。 | Very low |
副鼻腔病変があるEGPA患者には、鼻腔洗浄や鼻腔内の局所療法(抗生物質、潤滑剤、GC)が有効かもしれない。(Ungraded position statement) | Very low |
リツキシマブまたはシクロホスファミドの投与を受けているEGPA患者には、Pneumocystis jirovecii肺炎の予防を行うことを条件付きで推奨する。 | Low |
Five-Factor Score
65歳以上 |
---|
心不全(肺水腫などの症候性) |
腎不全(Cr >1.7 mg/dL) |
重度の胃腸病変(腸管穿孔、出血、膵炎) |
耳、鼻、咽頭症状なし |
(Guillevin L, et al, Medicine (Baltimore). 2011; 90 :19-27.より改変)
結節性多発動脈炎
2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Polyarteritis Nodosa
Table PANにおける推奨に用いられる用語の定義
用語 | 定義 |
---|---|
病状 | |
疑い例(suspected disease) | PANを示唆する臨床徴候、および他の疾患では説明できない症状 |
活動性疾患(active disease) | 以前の臓器病変とは別のPANによる臨床徴候 and/or 症状(新規・持続・増悪) |
重症(severe disease) | 生命または臓器を脅かす血管炎徴候(例:腎疾患、多発単神経炎、筋疾患、腸間膜虚血、冠動脈疾患、四肢・手指虚血) |
非重症(non-severe disease) | 生命や臓器を脅かす症状を伴わない血管炎徴候(例:軽度の全身症状、無症候性皮膚疾患、軽度の関節炎) |
寛解(remission) | 免疫抑制療法の有無にかかわらず、PANに起因する臨床的徴候または症状がない |
難治性疾患(refractory disease) | 適切な免疫抑制剤の投与にもかかわらず、活動性疾患が持続 |
再発(relapse) | 寛解後に活動性疾患が再発 |
用語 | 定義 |
---|---|
治療 | |
グルココルトコイド(GCs)静注パルス療法 | メチルプレドニゾロン500~1,000 mg/日(成人)または30 mg/kg/日(小児:最大1,000 mg/日)または同等量を3~5日間静注 |
高用量経口GCs療法 | 成人:プレドニゾロン換算1 mg/kg/日(80 mg/日まで) 小児:プレドニゾロン換算1~2 mg/kg/日(60mg/日まで) |
中用量経口GCs療法 | 成人:プレドニゾロン換算0.25~0.5 mg/kg/日(一般的には10~40 mg/日) 小児:プレドニゾロン換算0.5 mg/kg/日未満(一般的には10~30 mg/日) |
低用量経口GCs療法 | 成人:プレドニゾロン換算10 mg/日以下 小児:プレドニゾロン換算0.2 mg/kg/日以下(最大10mg/日) |
非GC系免疫抑制薬 | アザチオプリン(AZP)、シクロフォスファミド、メトトレキサート(MTX)(注)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)(注) |
(注)MTX、MMFはPANには本邦未承認
Table PANのマネージメントのRecommendations(推奨)/statements(声明)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
---|---|
Vascular imaging, tissue biopsy, and diagnostic testing | |
PANが疑われる患者に対しては、確定診断と病変の進行を同定するために、腹部血管撮影を条件付きで推奨する。 | Very low |
腹部病変を伴う重度のPANの既往歴があり、臨床的に無症状となった患者に対しては、腹部血管撮影のフォローアップを条件付きで推奨する。 | Very low |
PANの皮膚病変が疑われる患者に対しては、診断確定のために、表面の皮膚パンチ生検よりも深部皮膚生検(真皮の中型血管に達する生検)を行うことを条件付きで推奨する。 | Very low |
PANが疑われ、末梢神経障害(運動性 and/or 感覚性)がある患者に対しては、診断確定のために、神経生検だけではなく、神経と筋肉両者の生検を行うことを条件付きで推奨する。 | Very low |
PANによる二次的な末梢運動神経障害の既往がある患者に対しては、疾患活動性をモニターするために、筋電図/神経伝導検査を繰り返す(例:6か月ごと)代わりに、定期的な神経学的診察を行うことを条件付きで推奨する。 | Very low |
Treatment of active disease | |
新たに活動性の重症PANと診断された患者に対しては、高用量の経口GCよりも、GC静注パルス療法で治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
新たに活動性の重症PANと診断された患者に対しては、高用量GCのみの治療よりも、シクロホスファミドと高用量GCを併用した治療で開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
新たに活動性の重症PANと診断された患者に対しては、リツキシマブとGCよりも、シクロホスファミドとGCで治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
新たに活動性の重症PANと診断され、シクロホスファミドが使用出来ない患者に対しては、GC単独よりも、他の非GC系免疫抑制剤とGCによる治療を、条件付きで推奨する。 | Very low |
新たに活動性の非重症PANと診断された患者に対しては、GC単独よりも、非GC系免疫抑制剤とGCによる治療を、条件付きで推奨する。 | Very low |
新たに活動性の重症PANと診断された患者に対しては、シクロホスファミドとGCに*血漿交換は併用せず*、シクロホスファミドとGCのみの併用よりも条件付きで推奨する。 | Low |
非GC系免疫抑制薬が投与されている寛解期のPAN患者に対しては、18か月後に非GC系免疫抑制剤を中止することを、継続(無期限)投与よりも、条件付きで推奨する。 | Very low |
PANに対する最適なGC療法の期間(6か月までに漸減するか、6か月以上継続するかなど)は十分に確立されていないため、治療期間は患者の臨床状態、価値観、嗜好を考慮して決定すべきである。(Ungraded position statement) | Very low |
Treatment of refractory disease | |
GCとシクロホスファミド以外の非GC系免疫抑制薬による治療に抵抗性を示す重症のPAN患者に対しては、GCのみを増量するよりも、非GC系免疫抑制薬をシクロホスファミドに変更することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
Remission maintenance | |
新たにPANと診断された患者で、シクロホスファミドで寛解が得られた場合、シクロホスファミドの継続よりも、他の非GC系免疫抑制薬への変更を、条件付きで推奨する。 | Very low |
Other considerations | |
神経や筋肉に病変のあるPAN患者には、理学療法を条件付きで推奨する。 | Very low |
ADA2欠損症の臨床症状を有する患者には、GC単独ではなく、TNF阻害薬の併用を、強く推奨する。 | Low |
巨細胞性動脈炎
2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Giant Cell Arteritis and Takayasu Arteritis
Table GCA/TAKにおける推奨およびungraded position statementsに用いられる用語の定義
用語 | 定義 |
---|---|
病状 | |
疑い例(suspected disease) | GCA/TAKを示唆する臨床症状、および他の疾患では説明できない症状 |
活動性疾患(active disease) | 以前の臓器病変とは別のGCA/TAKによる臨床徴候 and/or 症状(新規・持続・増悪) |
重症(severe disease) | 生命または臓器を脅かす血管炎徴候(例:視力低下、脳血管虚血、心筋虚血、四肢虚血) |
非重症(non-severe disease) | 生命や臓器を脅かす症状を伴わない血管炎徴候(例:体質的な症状、頭痛、顎跛行、リウマチ性多発筋痛の症状) |
寛解(remission) | 免疫抑制療法の有無にかかわらず、GCA/TAKに起因する臨床的徴候または症状がない |
難治性疾患(refractory disease) | 適切な免疫抑制剤の投与にもかかわらず、活動性疾患が持続 |
再発(relapse) | 寛解後に活動性疾患が再発 |
脳虚血(cranial ischemia) | 一過性黒内障、視力低下、脳卒中を含む視覚および神経学的病変 |
用語 | 定義 |
---|---|
治療 | |
グルココルトコイド(GCs)静注パルス療法 | メチルプレドニゾロン500-1000 mg/日(成人)または30 mg/kg/日(小児:最大1000 mg/日)または同等量を3-5日間静注 |
高用量経口GCs療法 | プレドニゾロン換算1 mg/kg/日(80 mg/日まで) |
中用量経口GCs療法 | プレドニゾロン換算0.5 mg/kg/日(一般的に成人では10-40 mg/日) |
低用量経口GCs療法 | プレドニゾロン換算10 mg/日以下 |
非GC, 非生物学的製剤, 免疫抑制療法 | アザチオプリン(AZP), レフルノミド(LEF), ミコフェノール酸モフェチル(MMF), シクロフォスファミド |
生物学的製剤 | アバタセプト, TNF阻害薬, トシリズマブ(TCZ) |
疾患評価 | |
臨床モニタリング | 活動性疾患の臨床症状を評価し、四肢の血圧、炎症マーカーの値を含む臨床検査結果を測定 |
炎症マーカー | 赤沈、CRP |
非侵襲的画像検査 | CTアンギオグラフィー、MRA、PET、血管エコー、側頭動脈・頭皮動脈のMRI |
侵襲的画像検査 | カテーテルによる血管造影 |
Table GCAの診断のRecommendations(推奨)
Recommendations | エビデンスレベル |
---|---|
GCAが疑われる患者に対しては、初回の側頭動脈生検は両側よりも片側で条件付きで推奨する。 | Low |
GCAが疑われる患者に対しては、短区間の側頭動脈生検(1cm未満)よりも長区間の側頭動脈生検(1cm以上)を条件付きで推奨する。 | Low |
GCAが疑われる患者に対しては、GCの経口投与開始後、2週間以上待って生検を行うよりも、2週間以内に側頭動脈生検を行うことを、条件付きで推奨する。 | Low |
GCAが疑われる患者に対しては、GCAの診断を確定するために、側頭動脈超音波検査よりも側頭動脈生検を、条件付きで推奨する。 | Low |
GCAが疑われる患者に対しては、GCAの診断を確定するために、頭蓋動脈のMRIよりも側頭動脈生検を、条件付きで推奨する。 | Low |
GCAが疑われ、側頭動脈生検の結果が陰性の患者に対しては、診断のために、臨床評価のみの場合よりも大血管の非侵襲的血管画像検査を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
新たにGCAと診断された患者に対しては、大血管の病変を評価するために、非侵襲的血管画像検査を行うことを条件付きで推奨する。 | Very low |
Table GCAの治療と臨床モニタリングRecommendations(推奨)/statements(声明)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
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Medical management | |
新たにGCAと診断された患者で、脳虚血症状がない場合は、パルスGCの静注よりも、高用量の経口GCで治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
新たにGCAと診断された患者で、視力低下の恐れがある患者に対しては、高用量の経口GCよりも、GC静注パルス療法で治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
新たにGCAと診断された患者に対しては、経口GCを隔日投与よりも連日投与を、条件付きで推奨する。 | Low |
新たにGCAと診断された患者に対しては、中用量の経口GCよりも高用量の経口GCで治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
新たにGCAと診断された患者に対しては、経口GC単剤よりも、経口GCとTCZの併用を、条件付きで推奨する。 | Low to high |
頭蓋外の大血管に活動性の病変があるGCA患者に対しては、経口GC単剤よりも、経口GCと非GC免疫抑制薬を併用した治療を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
GCAに対するGCの最適な治療期間は十分に確立されていないため、患者の価値観や好みに応じて決定する。(Ungraded position statement) | Low to moderate |
新たにGCAと診断された患者に対しては、GCAの治療としての意味でHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)を*使用しない*ことを、条件付きで推奨する。 | Very low |
椎骨動脈や頸動脈に重篤な病変や血流障害のあるGCA患者に対しては、アスピリンの追加を、条件付きで推奨する。 | Very low to moderate |
中用量から高用量のGC投与中に疾患が再発したGCA患者に対しては、非GC免疫抑制薬の追加を、条件付きで推奨する。 | 注1 |
脳虚血症状を伴う疾患の再発を経験したGCA患者に対しては、GC単独の増量よりも、非GC免疫抑制薬の追加とGCの増量を、条件付きで推奨する。 | 注1 |
GC投与中に脳虚血症状を伴う再発を経験したGCA患者に対しては、MTXの追加とGCの増量よりも、TCZの追加とGCの増量を、条件付きで推奨する。 | 注1 |
注1 本ガイドラインのために文献的レビューは行われず、推奨は入手可能なエビデンスとエキスパートオピニオンによる
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
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外科的治療 | |
GCAに対して外科的血管介入が必要な患者に対しては、血管外科医とリウマチ専門医が協力して、介入の種類と時期を決定する必要がある。(Ungraded position statement) | 未評価 |
重度のGCAで四肢・臓器虚血の徴候が悪化し、免疫抑制療法を受けている患者に対しては、免疫抑制療法の増量に外科的介入を追加するよりも、免疫抑制療法の増量のみを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
血管外科手術を受けるGCA患者に対しては、活動性疾患がある場合には、周術期に高用量のGCを使用することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
臨床モニタリング | |
明らかな臨床的寛解状態にあるGCA患者に対しても、臨床的モニタリングを行わないよりも、長期的な臨床的モニタリングを行うことを、強く推奨します。 | Very low to low |
炎症マーカーのみが上昇しているGCA患者に対しては、免疫抑制療法を追加せずに、臨床徴候の観察とモニタリングを行うことを、条件付きで推奨する。 | Very low |
高安動脈炎
2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Giant Cell Arteritis and Takayasu Arteritis
Table 高安動脈炎(TAK)の治療(薬物療法/外科的治療)のRecommendations(推奨)/statements(声明)
Recommendations/statements | エビデンスレベル |
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Medical management | |
免疫抑制療法を受けていない活動性の高い重症のTAK患者に対しては、パルスGCを静注してから高用量の経口GCを投与することよりも、高用量の経口GCを投与してから治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
活動性の高い重症の新規TAK患者に対しては、低用量GCよりも、高用量GCで治療を開始することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
6~12か月以上GCを投与している間に寛解となったTAK患者に対しては、寛解維持のために低用量GCを長期投与するよりも、GCを漸減することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
活動性の高いTAK患者に対しては、GC単独よりも、非GC系免疫抑制剤とGCの併用を、条件付きで推奨する。 | Low |
活動性の高いTAK患者に対しては、初期治療として、トシリズマブよりも、他の非GC系免疫抑制剤の使用を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
GC単独療法に抵抗性を示すTAK患者に対しては、トシリズマブの追加よりも、TNF阻害薬の追加を、条件付きで推奨する。 | Very low |
TAKの患者で、炎症所見は認められないが、画像検査で認められた血管病変が無症候性に進行していた場合、免疫抑制剤の増量・変更よりも、現在の治療を継続することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
活動性のTAK患者で、頭蓋内や椎骨脳底部に重篤な病変がある場合には、アスピリンまたは他の抗血小板療法を追加することを、条件付きで推奨する。 | Low |
Surgical intervention | |
外科的インターベンションを必要とする患者に対しては、血管外科医とリウマチ専門医が協力して、インターベンションの種類と時期を決定すべきである。(Ungraded position statement) | 注1 |
TAK患者で、活動性病変の進行は認められないが、四肢の跛行が持続している場合には、外科的インターベンションを*行わない*ことを推奨する。 | Very low to low |
TAK患者で、免疫抑制療法を受けている間に四肢・臓器虚血の症状が悪化した場合、免疫抑制療法の増量に外科的インターベンションを加えてよりも、免疫抑制療法の増量を、条件付きで推奨する。 | Very low |
TAK患者で血管性高血圧と腎動脈狭窄を有する場合、外科的インターベンションよりも内科的治療を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
TAK患者で頭蓋・頸部血管の狭窄があり、臨床症状がない場合、外科的インターベンションよりも内科的治療を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
TAK患者で四肢・臓器の虚血症状が悪化している場合、疾患活動性が存在する状態で外科的介入を行うよりも、疾患が落ち着くまで外科的インターベンションを遅らせることを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
外科的インターベンションを受けるTAK患者に対しては、活動性疾患がある場合には、手術前後の期間に高用量のGCを使用することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
Clinical/laboratory monitoring | |
TAK患者に対しては、疾患活動性評価ツールとして、臨床モニタリングに炎症マーカーを追加することを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
臨床的に明らかな寛解状態にあるTAKの患者に対しては、臨床的モニタリングを行わないよりも、長期的な臨床的モニタリングを行うことを強く推奨します。 | Very low |
明らかに臨床的には寛解しているが、炎症マーカーが増加しているTAK患者に対しては、免疫抑制療法を増やさずに臨床的に経過観察することを、条件付きで推奨する。 | Very low |
Vascular imaging | |
TAK患者に対しては、疾患活動性評価ツールとして、カテーテルによる血管造影よりも、非侵襲的な画像診断の使用を、条件付きで推奨する。 | Low |
TAK患者に対しては、日常の臨床評価に加えて、定期的に非侵襲的な画像診断を行うことを、条件付きで推奨する。 | Very low to low |
臨床的には寛解しているが、血管画像上で新たな血管領域に炎症の徴候(例:新たな狭窄や血管壁の肥厚)が見られるTAK患者に対しては、免疫抑制剤による治療を、条件付きで推奨する。 | Very low to low |