京都に来て2年半になりました。それまでは大学病院での勤務が大半だったので、洛和会音羽病院のような忙しい病院で勤まるか不安でしたが何とか適応し、ほっとしています。さらに、忙しくなければ経験できないような症例を多数診ることができます。この本はバックグラウンドが異なる多数の呼吸器科医(内科、外科)によるカンファレンスの記録です。
私は呼吸器内科医ですが、呼吸生理に興味があり、それを臨床や画像の読影にも生かしたいと思っています。洛和会音羽病院には呼吸器外科の教科書や胸部X 線の読影に多数の著書もある畠中先生という大先輩が居られます。呼吸器外科では榎堀先生から一瀬先生、呼吸器内科では土谷先生が当院での診療をリードしてきました。臨床経験は豊富です。そこに全国から優秀な若い研修医が加わり、面白いカンファレンスが行われていました。
畠中先生の発案で、これを本にしよう、ということで、カンファレンスを録音し、興味深い症例を原稿に起こしました。当初は録音ということで皆、少し緊張していましたが、すぐに慣れて自由に討論できました。若干、よそ行きの気分も良い作用をしたと思います。畠中先生は豊富な臨床経験だけでなく、詳細な読影で胸部写真を読み切ります。私は詳細な読影は苦手で、肺機能や身体所見を合わせて画像の説明を考えます。榎堀先生、一瀬先生は常に肺病変を実際にみた経験から考えますし、土谷先生は急性期から慢性期まで、若い医師たちを長年指導した経験を蓄えています。そこにフレッシュな若い先生方の発想が加わり、さまざまなアプローチで診断、治療に挑んでいます。読者の先生方にも楽しみ、参考にしていただけるものと期待しています。
カンファレンス症例の適確な診断と、多くの美しい画像を提供いただいた洛和会音羽病院病理診断科の安井寛部長に心よりお礼申し上げます。カンファレンスの再現の前に肺音の解説を加えました。長年、肺音を研究してきたのですが、とくに近畿大学で共同研究してきた保田昇平先生、土生川千珠先生、国立病院機構福岡病院の下田照文先生と、ご指導いただいている工藤翔二先生に感謝します。肺音を聴こえるようにするには金芳堂の市井社長、黒澤様、浅井様にお世話になりました。
咳が続くご老人が外来受診。「熱が少しあるようだから、念のために胸部X線写真を撮りましょう」と勧める。X 線写真をみる。
「はて、これは一体何なのか、ここが変かな? これは正常?」
…… 3 章が参考になります。
うーん。まあとりあえず診察しようか。
「はい、お口の中をみましょう」
扁桃はどうもない。
「では、頚を触りますよ、ここは痛くないですか?」
痛くないと。鎖骨上窩も……異常はない。
「では、胸の音を聴きますよ」
何か音がする。なんだ、これは? この音は、何の意味があるのだろう?
…… 1 章が参考になります。
X 線写真もみたし、肺音も聴いたけど、どう考えたらよいのか。
血液検査なんかをして、カンファレンスに出してみるしかないか!
…… 2 章が参考になります。
最後にカンファレンスに参加して、発言して頂いた皆様の名前を掲げます。貴重な御意見や活発な討議を頂き、どうもありがとうございました。
(50 音別。敬称略)
日暮るるや 障子の外を 咳が行く