間質性肺炎 典型的ファインと治療経過

患者:70歳台 男性

症例

若い頃には板金業で、アスベスト使用もたまにあったそうですが、定年後はマンションの管理をしています。近医で高血圧や高尿酸血症で治療を受けていました。治療薬の変更はなかったそうです。1年ほど前に、倦怠感や食欲低下、体重減少、空咳、38℃ほどの発熱があり、膠原病合併の間質性肺炎と診断されました。吸気時にファイン・クラックルを聴取されていましたが、ばち指やレイノー症状は認なかったそうです。抗Jo-1抗体高値で、画像、肺機能などと併せて、肺病変先行型PM/DM(polymyositis/dermatomyositis:多発性筋炎/皮膚筋炎)と診断され、ステロイドパルス治療を受けました。その後、経口ステロイドとシクロスポリンで病状は安定していました。前の月にステロイドを7mg/日まで減量して悪化し、15mgに増量したのですが、労作時の息切れと低酸素血症が悪化して再入院です。

聴診部位

肺音リスト

  1. 治療前

    最下段の換気曲線(黄色)は上向きが吸気、下向きが呼気を示す。吸気時に見られる1000Hzを中心とした明るいバンド(2番目の吸気の赤○で囲んだ部分)は高音域に強いパワーを持つクラックル(ファイン・クラックル)を示します。左右とも同じようなファイン・クラックルがあることが分かります。注意深く見ると、左側の方が少し輝度が高く、肺音も強いことが分かります。

  2. 治療後

    最下段の換気曲線(黄色)は上向きが吸気、下向きが呼気を示します。 吸気時にはやはり1000Hzを中心としたやや明るいバンド(ファイン・クラックル)が見らますが、パルス前よりも輝度は低下し、音のパワーがずっと小さくなったことがわかります。聴診ではファイン・クラックルの音が小さく、ソフトになったと感じます。肺音からは明らかに改善しています。しかし、クラックルは残存していますし、呼気の部分をよく見ると下段の左側で、1200Hzに近い部分に帯状に輝度の高い部分があり、気管支音化が右側よりも著しいことが分かります。