症例5:喘息によるポリフォニック・ウィーズ

患者:38歳 女性

小児喘息がありましたが、16歳くらいでほとんど症状はなくなり、アウトグロー(outgrow)しました。24歳くらいから風邪をひくと少し咳が長引くようになりました。30歳くらいからは、やはり風邪をひいたあとなどに喘鳴を伴う呼吸困難も出現するようになり、近医で「ぜんそく」と言われました。今回も治療を受けたのですが、3日ほど前から夜間もときどき目が覚めるような喘鳴と息切れが出てきて紹介受診されました。

朝起きてしまえば、さほど強い呼吸困難はないそうです。聴診では吸気にモノフォニック、呼気にポリフォニック・ウィーズを聴取します。肺音図 を示します。診察時の呼吸困難はさほど強くはなかったのですが、前の晩に眠れなかった、ということでステロイドの点滴とβ2刺激薬の吸入を行いました。処置後は「胸が軽くなった」と言います。聴診でも喘鳴はほぼ消失しましたが、喀痰貯留音(ランブル)が少し聴かれました。

聴診部位

右前胸部(聴診部位③)

横軸は13秒ほどの時間経過です。下段、黄色い曲線が緑の横線よりも下向きが呼気、上向きが吸気を示します。呼気は3回記録されていますが、上の段の肺音は右端に示すように最上部が1250Hz、青色で示す肺音の下端が0Hzです。3回記録されている呼気のいずれにも5~6本もの明るい青緑の曲線で示されるウィーズが、ばらばらに折り重なるように記録されています。それぞれのウィーズは3回とも同じ周波数で、似たような波形で、5~6か所の同じ音源から出ていると考えられます。呼気ウィーズの一つは200Hz以下の低い周波数帯に記録されています(↑)。この場合はウィーズ+ロンカイとは呼びません。ポリフォニック・ウィーズと呼べば、この周波数域のウィーズも含まれます。